帰国子女の英語力と日本語力の表れ方 ②

帰国子女の英語力と日本語力の表れ方 ① から続き。

娘:
6年生での渡独だったので、もう日本語の漢字や語彙、「算数」レベルの数学、を親が海外で必死で教えなくてはならない、ということはなかったが、逆に、親や本人が思っていた以上に、「ESL=英語が母国語ではない生徒のためのクラス、英語力がついたと見なされれば普通クラスに入れる」を脱出するのに時間がかかった。実は、娘は小学校1年生の時から公文の英語をやっていて、その公文の英語だけで、小学校4年生の時には英検3級に合格していたが、はっきり言って、
公文の英語は何の役にもたたなかった、
ということは、
英検3級も役立たず、
であった。
今ここで「公文論」を繰り広げるつもりはないが、結局のところ、公文って、繰り返しやっているうちは惰性で何となくできてしまうが、一旦離れたり、全然別の角度からアプローチする時には、役にたたない、何故なら、「自分で考えて理解していない」から。というわけで、娘は英検3級を持っていても、文法を体系的には理解していない、というか殆ど文法知識ゼロ、の状態で、ESLに入ったのだった。
結果的にはESLを出るまでに1年4ヶ月かかった。それだけ時間がかかったのには3つ理由があると思う。
①幼稚園や小学校レベルの内容ではなく、6年生という年齢それなりの内容を、「母国語とは違う言語」で理解することができるようになるのは、学年が進めば進むほど難しく時間がかかってしまうから。
英語圏ならばもっと英語の上達が早いかもしれなかったが、何しろ学校を一歩でたらそこはドイツ語圏。お店で買い物するのもドイツ語、テレビをつけても子ども番組はドイツ語、本屋にも子ども用の英語の本は殆どない環境。しかも、学校の方針で、現地の言葉であるドイツ語の授業も週に3回以上受けなければならなかったから、娘は事実上、英語とドイツ語とを一度に始めたようなものだったから。
③そしてやはり、「8歳までに耳ができる」説、だろうか(参照 拙ブログ  帰国子女の英語力と日本語力の表れ方 ①)。ESLの先生(ヒスパニックのアメリカ人)はなかなかESLから普通クラスに移動するのを許してくれなかった。1年経った時、娘は友達とそこそこ英語でのコミュニケーションをとれるようになっていたので、一日も早くESLを出たがったのだけれども、それから4ヶ月、彼女がずっとその先生から課題とされたことは、「たくさん英語のテープやCD、DVDを見て英語を聞きなさい。」というものだった。親からしてみれば、外人の友達から電話がかかってきても英語で普通に話しているし、娘の発音のどこに問題があったかは、わからなかったのだが(「8歳」どころか遥かに上の年齢だったため?)、やはり「耳で聞いて再現する」能力が小さい子どもに比べて劣っていたのだかもしれない。
で、娘の英語力だが、一見流暢に喋ることはできる。8年生の時には生徒会長に立候補してスピーチもしたし、学内のミュージカルのオーディションに受かって役を貰って演じたこともあるけれども、はっきり言って帰国した時には、体系的英文法知識はゼロに近かったと思う。何故って、インターナショナルスクールでは、ESLでも普通クラスの「English」の授業でも、文法らしきことは全く習わないから。その代わり、授業や宿題で、膨大な量の英語を読まされ且つ書かされて、それによって彼女の「英語力」は培われたと思う。
多読多書、というべきか。文法的なことは、書いて提出した宿題の中でその都度直されるだけで、とにかく力任せに英語を使わせる、という教え方だった。日本で普通に英語を学んだ私にしてみると驚きの連続で、しかし「これもありかな?」とも思わされた。ただ問題なのはボキャブラリー。これは年齢的なものが大きい。彼女が身につけた英語は畢竟8年生の終わりまでのレベルのボキャブラリーなのである。後述する息子のように「大学受験レベル」の英語ではない。その辺が彼女の英語力の壁になっている。あ、喫緊の課題として今彼女は大学受験を目の前にして文法知識も同じく壁(それも高い高い壁)になっている。帰国直前に受けたTOEFLは98(iBT)。ところが、英検準一級は難なく受かったのになかなか一級が受からないのである。同じように中学3年間アメリカやイギリスの現地校に行っていた生徒は、大抵帰国後英検一級は軽々合格している。やはりこの辺がドイツ語圏のインターナショナルスクールの限界かも?
日本語に関しては前述のように、小学校6年生の春まで日本にいたので、日本語の読み書き計算は問題なかった。日本に帰国後も漢字も大丈夫だったし、国語は得意科目になったし、文章を書くのも得意な方ではないかと思う。問題があるとしたら、漢字四字熟語、ことわざ、歴史上の人物の名前、がかなり怪しいこと。また英語の紙辞書を使う前に渡独して、すぐに電子辞書を使い始めたので、結果日本語も電子辞書で引くので、彼女は漢和辞典が引けない。読めない漢字は勘を頼ってひたすらiPhoneで変換させている始末である。


まとめると、小学校6年生〜中学校3年生の英語環境(ドイツ語圏における)だと、日本語は殆ど問題ない。日本語を忘れることは殆どないし、読み書きも衰えない。そしてやはり考える時は迷うことなく日本語、である。英語に関しては、習得にはそれなりの時間と努力(親の努力も)は必要である。幼児のように現地で英語が「自然に身に付く」というものではない。また、中学校レベルの英語なので、帰国して高校入試は何とかなっても、大学入試では本人の努力なしには(抜けてる文法分野を自分で勉強するとか)覚束ない。ただ、膨大な量の文章を読んでいるので、長文読解は苦労しない。英作文は、「受験英語的に何が要求されているか」がわからないので、意外にこける。英文和訳は、文法の知識が追いつけば本人の日本語力次第。
といったところか。


娘のことで長くなってしまったので、息子に関しては別稿 ( 帰国生の英語力と日本語力の表れ方 ③ ) にて。