親が知っておくべき、帰国受験の大学入試 前編

親の海外転勤に同行し海外の高校を卒業して日本の大学に進学しようという日本人子弟、いわゆる「帰国入試で大学受験する」帰国子女たちが、5月〜6月に行われる現地の高校の卒業式を終えて日本に帰ってくるのは例年6月の末です。そして殆どは9月から始まり来年の3月まで続く帰国入試を受けて行くことになります(9月入学という例外もありますが)。それは毎年のことですが、今年は彼らが帰国した「祖国ニッポン」の現状を思う時、殊更彼らにエールを送りたくなります。「日本の大学を帰国入試で受験する」と決めたのは、震災よりもはるか以前だとしても、よくこの放射能飛び交う日本に帰ってきてくれたことだと思います。彼らの期待に応えられる祖国だとよいのですが。

(このエントリーでは便宜上、大学入試における帰国子女を「帰国子女」と呼び、高校入試、中学入試における帰国子女はまた別の機会に取り上げたいと思います。」


さて。
世の中では、「高校時代3年間海外の学校に行っていた」というと、「羨ましい」「英語ぺらぺらでしょ?」という反応が先ず帰ってきて、更に「帰国枠だと、大学入るの超ラクだよね?」と言われるそうです。元帰国生の母として、その見方が絶対的に間違っていることを一度は書いておきたいと思っていました。また「帰国生」という定義は色々とあるでしょうが、ここでは、本人が望んで海外の高校に行った「留学」ではなしに、本人が望むと望まざるにかかわらず親の仕事の都合で海外の高校に行った場合を取り上げます。


海外の高校を卒業して日本の大学を帰国生入試で受験する「帰国子女」に対する二つの大きな誤解を解きたいと思います。


先ず一つ目。

海外の高校はパラダイスなんかじゃない

ということを、先ず理解して頂きたいと思います。勿論親の転勤で海外に住むということは、日本にいたら経験できないことを経験できるというのも事実ですが、そんなことよりとにかく、子供の毎日の生活の場は学校です。

はっきり言って、高校時代を送るのならば日本が最高!でしょう。私たちの世代はその昔、服装や校則が自由なアメリカの高校(ソースはNHKの海外ドラマの知識)に憧れたものですが、時代は変わり、日本の高校も一部の時代錯誤的学校を除いて、ピアスOK(男女問わず)、ダサイ制服も着崩しお洒落に着こなし、コンビニ・ファミレスは高校生のためにあるようなもので、どこでも誰とでも連絡がとれる(しかも親に知られることなく)無敵の携帯があれば、恐いものなし!ですよ。都会ならば、親がお金を出して買っているSUICAPASMOの定期圏内に渋谷や新宿があればしめたもの。そうでなくても「塾」「予備校」が渋谷や新宿にあれば、毎日学校帰りに通うことだってできます。制服着ている女子高生が夜の11時過ぎに電車に乗っているのは世界広しといえども日本だけ!なのですが、首都圏ではちっとも珍しくありません。それほど日本は安全ということなのですが。
海外では先ず夜の11時にティーンエイジャーの女の子が一人で歩いていたり、電車に乗ったり、ということ自体がありえません、実際問題、それは危険そのものなのです。そうなると家にいるか(メールよりもチャットが盛んなのはそのせいか?)、親の送り迎え付きで遊ぶか、ということになります。そして、男女を問わず、黄色人種の日本人が、例えば白人が多数を占める社会に暮らしていると、とにかく目立つ。日本人の大人はそこまで目立たなくても、アジアの顔した高校生は目立ちます。海外の現地での狭い日本人社会で、すぐに「◯◯さんところの△△ちゃん、この間××通りを何時頃歩いていたんですって。」という噂が飛びかいますから。私は親として大人の立場で海外に3年暮らしましたが、現地の日本人高校生を見ていて、本当に気の毒、というか可哀想、というか、それが日本ならば、コンビニで立ち読みしようが、渋谷のファストフード店でデートしていようが、小学生じゃあるまいし、親の耳に入ってくることはまあありません。それが海外では、恐ろしいことに自分が帰宅する前に、親のネットワークで既に親に知られている、ということが起こりうるのです。そんな環境の海外での高校生活でも「親の転勤で海外の高校に行って羨ましい」と、思いますか?

そして日本の高校でもそうだと思いますが、15歳〜18歳という自我が強烈に芽生える時期、学校などの集団では、「自分とは違う多様な友達」よりも、「自分と同質で理解し合える友達」を求める時期だと思いますが、それは海外でも同じなので、その時期に海外で「ガイジン」として「マイノリティー」として暮らすこと自体が先ず周囲の中で「異質」なわけで。「同質/異質」というのには色々な切り口がありますが、人種とか、喋る言葉のボキャブラリーとか、親の学歴とかだったり、日本の高校では考えもつかない理由だったりもする訳です(日本の高校生活では、親の存在は希薄ですから)。ちなみに日本の大学を卒業しているのは「学歴」にはカウントされません、その学校で使われている言語を用いた教育機関において親の最終学歴がどうか、ということですよ。例えば母親が日本の名門お嬢様女子大学を卒業していても、現地語は当然ですが英語ですら喋れなければ、「学歴はゼロ」ということになります。英語でもドイツ語でもフランス語でも、両親が大学を卒業している子供は、小さい頃から家庭内で大学レベルのボキャブラリーを使用した会話を耳で聞いているので、それぞれの言語で行われる試験では圧倒的に有利だそうですよ。例えば両親がアメリカの名門大学を卒業しているということは当然SATに出てくるあのやたらとペダンティックボキャブラリーが頭に入っているということですから、そんな両親の会話やラテン語シェークスピアからの引用をちりばめたジョークを幼い頃から聞いて育ち、そのレベルの書物に囲まれて育った生徒はそれだけで有利だと聞いたことがあります。ですから、親が日本の名門大学を出ていようが、それは日本語圏でない場所では全く無価値ということになり、つまりはまだその国の言語ができない「移民」と同列に看做されてしまうこともある、ということです、本人にとっても親にとっても不本意でしょうが。
まあとにかく、いつもいつもという訳ではありませんが、海外の高校で学ぶ日本人高校生は、時としてマイノリティーの立場に置かれることがあるということです、日本の高校だったらありえない理由で。何と言ったって、海外は「アウェー」ですからね。将来振り返って、その「マイノリティーとしての経験」を「良い経験をした」と思えるようになり、その中で頑張った自分が自信になればよいのですが、皆が皆そうは思えないかもしれません。海外の高校に行って「楽しいことばかりだった」という学生はいないのではないでしょうか?寧ろ、彼/彼女が海外の高校でたとえ優等生であったとしても、何度かは「痛烈なアウェー感」を味わった経験があることでしょう。そして特筆すべきことは、彼らは自分の意志で、その国、その学校に行っているのではない、ということです。親の仕事の都合で、ということは取りも直さず、その国を選んだわけでもその言語を選んだわけでもないのに、「世界一楽しい日本の高校生活」を棒に振って、海外の高校へ通い、人生において一番楽しくあるべき時期に「アウェー感」を味わっている、ということなのです。

そして二つ目の誤解とも関連するのですが、上記のように、「アウェー」の環境でそれでも頑張れて結果卒業するところまでこぎつけられれば、まだ幸運です(「幸運」というのは、これは本人及び親の努力と関係なしに、入った高校の雰囲気、異質なものに対して受け入れる雰囲気があるかないか、によるので、「運」なのです)。親の海外赴任に際して、日本の楽しい高校生活よりも家族一緒に海外に行くことを選びそれなりに夢を持って海外の高校に行ったものの、勿論そこに立ちはだかる「英語」の壁。「英語は現地に行けば何とかなる」というのは、大間違いです。幼稚園レベルならば、確かにそうでしょう。けれども、教室での日常会話にしても、ましてや抽象的なボキャブラリーがばんばん飛び交う高校の授業の英語に、「現地に行けば何とかなる」レベルでは到底追いつけませんし、日本で英語が得意な子供でも、現地の高校に入れば「赤ん坊同然」(自分の意志を言語で伝えられない)です。おまけにこちらからどんなに積極的に飛び込んでいこうとしても、現地の高校生コミュニティに入っていけないという状況も多々あります。繰り返しになりますが、これは本人の努力ではなく運、です。たまさか多様性を受け入れる雰囲気の学校で、たまたま周囲の友達も「ガイジン」を受け入れるタイプの子ばかりだといいのですが、日本と同じではありませんが現地の高校に通う現地の生徒にも「大学受験」のストレスがある中、英語もろくろく喋れないアジア人がコミュニティに入っていくのは並大抵のことではない、というのは想像に難くないと思います。日本だって、高校の段階で、日本語も覚束ない外国人生徒が入ってきた時、フレンドリーに対応する社会ではありませんよね。幼稚園や小学校の段階だと、子供同士、遊んでいるうちに馴染めるものなのですが、高校生だと先ず英語が話せなければ埒があかないですし、それだけでなく、流行っているテレビ番組、雑誌、音楽、ファッション等々、関して共通の知識がなければ話の輪になんて入れません。その立ちはだかる壁を何とか超えようと努力し、孤独と挫折と屈辱を味わって、そして結局超えられなくて諦めてしまう生徒もいる、のです。「もう海外の高校は嫌だ、日本に帰りたい」と思っても、日本では高校は義務教育ではありませんから、高校途中で受け入れてくれる学校を探すことは簡単ではありません。親を心配させまいと、現地の学校に形だけ通ってとにかく卒業する、というケースもあります。海外での高校生活は、パラダイスどころか、過酷なものでもありうるのです。




そして二つ目の誤解。
「帰国枠の大学受験って超ラクじゃん。」という誤解。


子供を連れて海外に赴任している家族の場合、夫の帰国辞令とは関係なしに、帰国するタイミングはいくつかあります。っていうか、会社は「子供の進学のタイミング」なんて考慮してくれませんから。そもそも、「海外の高校に行く日本人子弟」は少なくなっています、その理由は、「高校入学以前に日本に帰国してしまう」からなのです。帰国するタイミングは二度あります。


①中学受験のタイミングに合わせて帰国(夫の任期に関係なく、母子でさっさと帰国)
ラッキーなことに現地に日本人向けの塾があれば(←これが結構あるんですよ!)、受験直前まで現地で勉強して帰国して中学受験。合格したら母子で帰国。現地に日本人向けの塾がなければ、例えば小学校5年生くらいまでは、塾の通信教育(←これがあるんですよ!)で頑張って、最後の一年とか半年は母子で帰国して日本で塾通いして受験に備えるパターンもあります。

②高校受験のタイミングに合わせて帰国
日本人学校がある国でも、日本人学校というのは義務教育の小学校と中学校だけですから(例外的に初めて上海に今年できたようですが*1 )、「中卒」で働くならともかく、日本の高校へ進学するためにこの年代でごそっと日本人の子供は帰国してしまいます。日本人駐在員の赴任期間が大体3〜5年ということは、ここで帰国しておかないと、高校の途中で日本に帰国することになり、義務教育である小学校や中学に編入するのと異なり、日本の高校に海外から編入するのは極めて難しいということもあります。

前にも書きましたが、私が2004年に当時中学3年生と小学6年生の子供たち(←この学年が意味することは既に「死亡フラグ」だったわけですが)を連れて海外赴任しようとした時、海外駐在の経験豊富な友人が、
「あなたのお子さんの年齢は、世界中どこにいても『夫を放り出して子供の進学のためにとっとと帰国する年齢』であり、『今から海外に出て行く年齢』じゃないわよ!」
と忠告してくれました。これは実際のところ紛うかたなき真実であるということは、無謀にもそのまま赴任してからわかったことでしたが。


そして、多くの日本人駐在員の任期がが大抵の場合3~5年であることを考えると、「海外で高校生活を送ることになる」ケースは以下の2つに限られます。

①例外から挙げるのもなんですが、父親が例外的に一カ所に長く赴任する仕事の場合。もしくは、駐在員の世界では、海外の赴任地から日本に帰任するのではなくまた別の海外の赴任地に赴くことを「横移動」アメリカ3年→ベルギー2年→ロンドン3年、とか)と言いますが、「横移動」で長く海外に住んでいて、結果高校も海外で、というケース。


②父親が海外転勤になったタイミングが中1〜中3で、日本に家族が残り父親が単身赴任という選択肢をとらず(中高一貫校に行っていたり、高校受験が近い場合は家族が日本に残ることも多いと聞きます)、子供も一緒に海外に行ったケース(義務教育の残りの数年を日本人学校で学んでからインターナショナルスクールに高校から入った場合と、最初から現地校もしくはインターナショナルスクールに通った場合とでは、かなり英語力に差が出ますが)。


つまり、海外の高校を卒業し日本の大学を「帰国受験」するということは、大雑把に言うと、


「長年海外にいるので英語*2はほぼネイティブ並であるが、殆ど日本で学校教育を受けたことがないまま、日本語で行われる日本の大学の帰国入試を受験する」(前述①のケース)

か、

「大学受験まで3〜5年くらいの間に、日本語ではない言語で大学受験のレベルまで学力を持っていかなくてはならない」(前述②のケース)


のどちらかになってしまうということなのです。これは簡単なことではありません。

①の場合は、海外滞在が10年を超えるケースも多々ありますから、はっきり言って頭の中は英語になっています。家庭内で親と話すのは日本語で、日本語でコミュニケーションとれますが、例えば兄弟姉妹では英語のコミュニケーションになっていたり、そもそも論理的に考える言語が英語になっていますから、帰国入試で課される日本語の「小論文」*3がものすごくハードルが高いものになっています。彼らは10年以上、日本語で教育を受けていない上に10年前は当然小学校低学年で、その段階から大学入試の「小論文」が書けるまでの漢字や言い回しや文章の組み立て方を自習する、というのが、仮に現地の学校の勉強が忙しい中頑張って自習したとしても、それがどれだけ大変かは、日本に普通に生活していると到底想像ができないと思います。24時間365日日本語に囲まれて日本の小中高で国語の時間に勉強しても漢字が読めない書けない人は沢山いますけど、ましてや一日の大半を日本語以外の言語環境で勉強していて、どれくらい家庭学習をすれば、日本の高校生並みに漢字が読めるようになるか、というと、はっきり言って殆ど無理です。約1000字の教育漢字と1900余字の常用漢字を読み書き、その他日本語のことわざ、慣用句、等々を会得していることを、小学校低学年の時に日本を出てずっと日本語以外の環境で暮らしている日本人子弟に求めるのは、はっきり言って無理だと思うのですが、日本の大学は(ごく僅かの例外を除いて)帰国入試でそれを求めます。それは実際に大学に入ってから日本語で行われる授業についていけるかどうか、を見るものだと思うのですが。インターナショナルスクールではなく、英語が話されている国の現地校の高校に行ったり、世界各地にあるアメリカンスクールやブリティッシュスクールに行った場合は、言語の問題だけではなく習った内容も全く日本の高校のものとは違ってきます。「歴史」といえば「アメリカ史」であり「イギリス史」である訳ですから、彼らの歴史観は当然日本人のものとは違います。そういう日本人子弟も受け入れて多様性に富んだ学生のコミュニティを作るために設けられた入試が「帰国受験」であり、その制度を持っている大学の姿勢は評価できますが、実際は、「帰国子女」として(留学生ではなく)英語だけの試験で入学できるところはごくごく限られており、彼ら「海外滞在10年超」の帰国子女が憧れの日本の大学に入学して卒業するのは、とても難しいのが現状です。彼らにとっては現地の高校の級友たちと同じく、現地アメリカなりイギリスの大学に進学する方がずっと容易なのです。それでも日本に帰国して日本の大学に行きたいのは何故か?ということに思いを致してほしいのです。本人は、海外で長く暮らしたからこそ、「日本」に対して強い憧れとアイデンティティを感じているのです。親の気持ちも複雑です。確かに親の都合で長年海外の学校に行かせて高校卒業まできて、英語は身に付き外人の友達とも普通に学校生活を送っているのは嬉しいことであるけれども、例えば「真珠湾攻撃」に関しては現地の高校の歴史の授業で習った通り「アメリカ側の考え方」が染み付いている我が子を前にして、「大学で日本に帰らなければ、もうこの子は日本人には戻れないかも」と思い、悩むのですよね、そのまま海外の大学に進学するか、日本に帰って「帰国受験」するかを。私としては、こういう帰国受験生が、日本語の壁(小論文等々)に阻まれることなく、日本に帰ってこられるような(こんな状態の日本ですが)帰国入試制度、履修制度(英語で行われる授業で卒業単位を満たすことができる)があってもいいと思うのですが。*4・・・後述しますが、同じ日本人が「受け入れ」を拒んでいるのです。





②の場合が、帰国入試での大学受験では一般的だとは思いますが、こちらも、最初に書いた「海外での高校生活はパラダイスではなく『アウェー感』に満ちたものである」という厳しい環境だけでなく、「時間との戦い」という面もあり、なかなかに難しいものになっています。「時間との戦い」という意味ですが、ちょっと考えてみてください。今日本にも、中国やベトナム、ブラジルから、親の仕事の都合で中学生くらいで日本に来る子供がかなりいるそうですが、日本の高校に行ったとして(←実際はこれ自体が難しいと思いますが)、来日後どれくらい日本にいれば、どれくらい必死で勉強すれば日本における大学入試であるセンター試験において、日本人に混じって平均点もしくは優秀な点数を取れるようになると思いますか?その難しさを考えれば、中学生で海外に出て大学受験で帰国するまでに現地の大学入学統一試験でかなりのレベルの点数をとることが大変であることは理解できると思います。でもそうしなければ、帰国入試において日本のトップレベルの大学の書類選考を突破することはできません。



私は子供二人(小六と中三!)を連れて(ということは死亡フラグがたったまま)ドイツに駐在した直後に、現地で知り合った日本人のお母様にアドバイスを受けました。彼女はドイツに来る前に、英語圏でない外国に2年半、やはり中一のお嬢さまを伴っての駐在の後、ドイツにいらした方だったのですが、前任地でお嬢さまをインターナショナルスクールに入れた経験から、「短期間でESL(英語が母国語でない子のためのクラス)を抜け出して、普通クラスに入るために親として何をすべきか」ということに関して色々とアドバイスをくれました。彼女の経験に基づく親身なアドバイスには、今でも感謝しています。それはどんなものだったかというと、

・日本人の友達とは極力遊ばせないようにした
・日本の友達とのチャットやメールも制限する
・放課後のアクティビティには、本人が望めば何でも参加させる、親も付き添いとか送り迎えが要求されて大変だけれども全ては「英語を喋る機会」と考える
・子供向けの英語音声の映画のビデオやDVDを手を尽くして買い与える
・暇があれば、英語のCDを流す
・親が英語に自信がなくても、定期的にESLの先生と話をして「ウチの娘の場合、何をやれば早くESLから出られるのか?何が足りないのか?ボキャブラリー不足なのか、文法なのか、積極性なのか?」をその都度先生から聞く
・子供に「英語頑張りなさい!」という以上、自分自身も例え英語に全く自信がなくても積極的に学校や他の母親と関わっていかなくては、示しがつかない

これを聞いて「そこまでしなくてはいけないの?」と思われるかもしれませんね、私も最初はそう思いました。けれども本当にこれは私とウチの子どものためを思ってくださったからこその貴重なアドバイスでした。そしてこのアドバイスは世界共通、というか、娘と同じESLのクラスにいた男の子の、教育熱心ということでは世界で韓国人とナンバーワンを競うフィンランドのママですが、このアドバイスとほぼ同じことを実践していました。彼女の場合は毎週末にESLの先生を捕まえては「ウチの子どもの英語力には何が足りないか」を質問し、そしてその甲斐あって(?)彼女の息子は、ウチの娘よりも早くにESLを脱出して普通クラスに旅だっていったのでしたが。
前述のケース②で帰国して大学受験をするつもりならば、こうやって子どもの英語力獲得に親が全力を上げることは必須です。それは何故かといえば、それが前述の「時間との戦い」になってくるからなのですが。

大雑把に言って、アメリカの教育制度やインターナショナルスクールでは、学年の数え方が小学校入学から通しで数えるので、中一は7年生、高一は10年生、そして12年生を終了して高校卒業になるのですが、11年生と12年生で学ぶ内容は、日本でいう大学の教養レベルの授業も含まれなかなかにハードなものなのですが、その11年生12年生で何の科目をとれるか、ということは10年生の時の成績で決まるのです。例えばインターナショナルバカロレア(IB)を取得したくて「この科目をとりたい」と言っても、「その科目をとるだけの学力がない」と担任の教師に撥ね付けられたらいくら本人と親が希望してもとることはできません。アメリカでもAP(アドバンスト・プレイスメント)という難易度の高い科目をいくつとれるかというということが大学入試で重要になってくるわけで*5、そのためには10年生で既にかなり優秀な成績が要求され、7年生8年生で初めて英語圏で勉強を始めた日本人の子供が、英語ネイティブの生徒たちに混じって現地で勉強するようになって2年かそこらで上位の成績を修めるようになるには、本人の努力もさることながら、親もその重要性がわかっていないとどんどん時間だけが過ぎていくことになります。ここでも「運」に左右されるのですが、9年生までに海外に出るのならまだ英語力をつける時間があるのですが、たまたま親が海外赴任になったのが高校1年生(=10年生)以降だとすると、いくら本人と親が頑張っても、「too late = 遅過ぎる」のです。そこのところを理解せずに海外に出て10年生でESLに入って(それも精神的にキツいと思いますが)、その学年の間に、現地の子たちの中に混じっていい成績をとって11年生12年生に備える、なんて不可能ですから。日本に帰国してそこそこの大学の帰国入試を受けるつもりならば、どんなに遅くとも9年生で海外に出ないと、間に合いません。もしくは、年齢的には10年生(高一)だけども、学年を1年下げて9年生に入れる方法もありますが、これは勉強に関してはいい方法ですが、帰国入試に際しては日本の同級生と比べて普通で1年遅れるので結局は2年遅れ、になってしまいますので、それを理解した上での決断になりますね(長い人生、2年くらい遅れてもいいじゃない、と私は思いますが)。




親の海外赴任によって、この住みやすいホームグラウンドでありパラダイスの高校生活がある日本を出て、海外の高校に行って卒業して、再び日本に帰国して、東大京大その他国立大学、早稲田慶応大学を受験して合格するには、否、グレずに心折れずに帰国してどこかの大学に合格するだけでも、どれだけ茨の道を歩まねばならないか、ということのほんの一部が理解して頂ければ幸いです。

後編では、帰国後の帰国入試そのものについて書いていこうと思います。

*1:上海日本人学校高等部、また私立で海外に高校を持っているところ、例えば、早稲田渋谷シンガポール校慶應義塾ニューヨーク学院、立教英国学院、帝京ロンドン学園、スイス公文学園高等部、ドイツ桐蔭学園、フランス甲南学園トゥレーヌ高等部の寮に入れる選択肢もあります。

*2:便宜的に英語にしておきますが、他の言語でもありえます

*3:京都大学経済学部平成23年度 東京大学文科�類平成23年度

*4:既に一部の大学の学部や大学院ではありましたが、7月の終わりにやっと東京大学も学部で初めて英語だけのコースを作ったと発表しました、日本人の帰国生が受けるには「受験資格」のハードルが高そうですが。http://peak.c.u-tokyo.ac.jp/

*5:http://aboutusa.japan.usembassy.gov/j/jusaj-pub-brief-education4.html