大義なき総選挙が終わって、何事もなかったかのような師走の日々です。


安倍首相が、「アベノミクスを問う選挙」と言って解散した師走の総選挙が終わって、一週間が経ちました。

何事もなかったかのような、選挙などなかったような師走の日々が流れております。


2009年夏の政権交代の選挙の後は、「政治が変わる」という期待と空気に満ち満ちでいました。
自民党に投票した私ですら、その変化の兆しは日々感じたものです。
2年前の2012年、自民党が政権を取り戻し、安倍氏が二度目の総理大臣に返り咲いた選挙でも、選挙後は、「不景気が何とかなるかも」という期待が溢れていました。
思えば、やはり解散権を行使したことで批判された小泉首相の「郵政選挙」の後も、それなりに「これから政治は変わる」という期待感はありました。


それなのに、今回の選挙が終わって、この「何事もなかったかのような」日本の師走です。
期待もなければ、希望もない、選挙前の日常に戻っただけ。
これでは、選挙に行っても棄権しても同じだと若者が錯覚しても仕方ないでしょうね。


解散直後には、野党・マスコミから「選挙の大義について疑問が呈されましたが、選挙戦が進むにつれそれも立ち消えになり、皮肉なことに、選挙が終わってから、「この選挙に何か意味があったのか?」という現実が立ち現れてきています。


選挙をしてもしていなくても、来年の増税は延期、だったんです。
それによって、子育てや医療など社会保障を拡充する目的の施策は繰り延べになることは、決まっていました。
「来年再増税してもいいから、予定通り施策を実行してほしい」と切望している人にとって、投票先の選択肢はありませんでした、正確に言うと、誇大妄想的な公約をうたう共産党以外にはありませんでした。
また、「そもそも景気が完全に回復していない今年の春に3%の増税をするべきではなかった」と考える人にとっても、投票先の選択肢はありませんでした、安倍首相は、その部分への批判は巧みに選挙の争点からは外していましたし、対案を示すべき野党である民主党こそが、消費税の増税を決めた政権であるのですから他の選択肢たりえませんでした。


安倍首相は、昨年の初秋、集中点検会合というものを開いて、各界の有識者に、2014年春の3%増税について意見を聞きました。
消費増税の集中点検会合、有識者の7割が増税賛成〜誰が賛成?(参加者の賛否一覧) ハフィントンポスト
正確に言うと、委員の73%(60人中44人)が増税に賛成だった一方、浜田宏一イェール大学名誉教授、本田悦朗内閣官房参与、岩田一政日本経済研究センター理事長をはじめとして、「2014年4月3%増税」に反対する委員は17%(60名中10名)いたのですが、安倍首相は予定通りの増税に踏み切りました。


つい先月、同じく来年の消費税増税に関して行われた集中点検会合では、今度は委員の67%(45人中30人)が増税に賛成という意見を表明したのですが、その最終日午前中に第5回目の会合が開かれた午後、安倍首相は記者会見を開いて、さっさと増税延期を決めてしまいました。午前中の会議の議事要旨が内閣府のサイトにアップされたのは一週間後ですが、安倍首相は最終日の委員の意見など目を通すつもりもなく、増税延期を決めていたのでしょう。去年の秋と同じく、浜田宏一イェール大学名誉教授、本田悦朗内閣官房参与、 片岡剛士三菱UFJリサーチ&コンサルティング主任研究員、等22%(45名中10名)の方々は反対意見でした。



去年の集中点検会合では、アベノミクスのブレーンとも言われた浜田宏一イェール大学名誉教授らの「増税は延期すべき」という反対意見は聞かずに増税を決行し、
今年の集中点検会合では、(「どのツラ下げて」と私などは思いますが)、同じ浜田名誉教授らの唱える反対意見を取り入れて増税を延期した、
のですね、安倍首相は。
去年の集中点検会合は、既に増税は決まっていて、パフォーマンス、またはセレモニー的なものであったようですが、今回の集中点検会合も同様で、前述のように、5回開かれたこの会合の最終日、午前中に「経済・産業」をテーマにした会合が開かれたその午後、安倍首相は会見して、さっさと「消費増税延期・衆議院解散」を発表しました、午前中の会議の議事録さえまだアップされていないタイミングでしたから、今年の集中点検会合もまた、単なるセレモニーだったのでしょう。練りに練った資料を提出して持論を述べられた皆様には、本当にご苦労なことでした、特に増税に賛成された多数派である67%の方々にとっては、無力感だけが残ったのではないでしょうか。


本当に、「この道しかない」であったのか?
選挙の大義はあったのか?


そして、不可思議なのは、11月の集中点検会合で、来年の再増税に賛成した大多数の有識者の委員の方々です。
増税に賛成した方々の論拠は、「増税をして、社会保障の不安をなくすことが最優先」であったと思います。
それを安倍首相は否定したわけです、彼らの意見を採り入れなかった。
であるならば、有識者の方々は、自民党を応援したり、自民党に投票したはずはないですよね???
しかし、結果は自民党圧勝。しかもおまけに、今更「軽減税率の導入」を掲げる公明党も躍進、という悪夢。
本来ならば民主党は、有識者の大部分が賛成した「今痛みを伴っても増税し、先ずは社会保障を安定させる」という軸で選挙を戦うべきであったのに、曖昧な戦い方をしたのですから、勝利が望めるはずもありません。
唯一、これまた悪夢のように共産党が大躍進しました、「消費税を今すぐ廃止」という政党に投票する層があれほどいるとは!!!共産党が政権を担うことなどありえないどころか、野党第一党になる可能性さえないこの時代にこの政党に投票するということは、議席は獲得しても、結局は投票した一票は死に票になるということなのに。



結局のところ選挙が終わって、立ち見えてきたのは、実は「アベノミクス」「消費税再増税延期」などは今回の選挙の争点ではなかった、ということではないでしょうか。
今回の選挙は、紛れもなく「大義なき選挙」であり、勝つことがわかっている選挙で勝利に酔うためだけのものであったのです、安倍首相が。
それだけではなく、皮肉なことに、この選挙を経て「信任を得たもの」として行われることは、選挙に関係なく決まっていた「再増税延期」ではなく、実は安倍首相が巧みに争点から逸らした憲法改正であったり、靖国神社への再参拝、TPP締結、集団的自衛権行使の法制化、教育改革になることでしょう、少子高齢化対策やら年金問題やらは再増税が延期になったことで後回しにされて。


一週間前の投票日、昼過ぎに行った投票所で、投票に来ている方々のあまりの高齢者率におののいた私ですが、勇気を振り絞って書いた「かいえだ」という一票は(東京1区です)、見事に死に票となりました\(^o^)/
投票率は戦後最低の52,66%。
どんな言を弄しても、今回の選挙は大義なき選挙であり、それを許したのは、安倍首相におもねて「この道」以外の選択肢を提案さえしない自民党の政治家及び国民に選択肢を示すことができない野党の責任であるだけでなく、何を恐れるのかこの選挙の本当の争点に切り込まなかったマスコミ、多数意見であるのに無視された増税賛成の有識者の方々の振る舞いにも責任があり、年金も医療費もエネルギー問題も全て「逃げ切りの世代」の方々の投票行動、同時に選挙を棄権した若い世代の責任、つまり国民全体の責任です。

いつか「この道」が間違っていることが明らかになって、もう引き返すことも出来ず奈落の底に転がり落ちるだけの日々が来ても、「国民は騙されていた」とだけは決して言えない、今回の選挙結果だと思いました。