原鉄道模型博物館開館のニュースから、ドイツの鉄道博物館の幾つかを思い出すこと

7月10日、横浜に原鉄道模型博物館が開館しました。




この貴重にして膨大な鉄道模型を寄贈した原信太郎氏については、今回の博物館開館に伴う報道でもお姿をお見かけしたり、ユニークな経歴を綴った記事も拝見しましたが、それだけでは原氏の凄さはわからないかもしれません。


もうかな〜り以前も以前に、「芦屋に文具メーカーの元役員さんで、物凄い鉄道模型マニアの人がいる。」と聞いたことがありました。そしてそれとは全く無関係に数年前この↓ 本を読みました。

21世紀の国富論

21世紀の国富論

この本を読んだ時に著者をちょっとググって、その「文具メーカーの元役員であり、凄い鉄道マニアの人」というのが、この本の著者である原丈人の父君、原信太郎氏ということがわかって、一気に点と点が繋がったのでした、この感動の一致もグーグルさんのお陰ですが。
原丈人氏の経歴もこれまたユニークですが、彼が「ほぼ日刊イトイ新聞」にて父君について語っているものをご覧あれ。
とんでもない鉄道模型とすごいテレビ電話の話(特に第3回の原信太郎氏についてのお話が面白いです。)
原鉄道模型博物館に足を運ぶ鉄道ファンの青少年には、模型だけではなく、原氏親子の生き方もまた知ってほしいですね。



この原鉄道模型博物館の報道を見ていて思い出したことがあります。ドイツはハンブルグ鉄道模型博物館(名称は「Miniatur Wunderland」)です。嘗ては我が家にも鉄道ファンの息子がいて、彼がいたからこそ、彼の趣味が鉄道だったからこそ、親として便乗して見られたものも沢山あった、と今にして思います。

その鉄道オタクの息子を連れてのドイツ駐在時、家族旅行では随分と鉄道を使いました。←これはなかなか珍しいことで、格安エアー各社がしのぎを削っているヨーロッパでは、キャンペーンなどを上手く使うと、飛行機の方が鉄道よりもずっと運賃が安くなったりするのです。経済性、所用時間の両方に関して、鉄道は非効率の場合が多いのですが、我が家ではドイツ国内を旅するのに、ベルリンにも、ハンブルグにも、ミュンヘンにも鉄道で行きましたし、イギリス中部をぐるっと回ったこともありますし*1、ローテンブルク・フッセン間も、ウィーン・ザルツブルグ間も、ミラノ・ベニス間も鉄道に乗りましたし、一度などは、Thalys(タリス)

に乗るために、格安航空のパリ往復チケットを買って、帰りのエアチケットを「捨てて」(普通のエアラインの片道切符よりも、キャンペーンをやっている格安航空会社の往復チケットの方が安かったから)、パリからケルンまで「タリス」に乗ったこともありました。行きのチケットを「捨てる」という選択肢もありながら何故帰りを鉄道にしたかと言うと、タリスの一等に乗るとお食事が、それも大変素晴らしい食事が付いてくるのですが、それがケルン(ドイツ)から積んだドイツ食と、パリから積んだフランス食とでは、「同じチケット代か!?」と呻いてしまうほど差がある、という風評(あくまでも)を耳にして、当然パリから積むフランス食を選んだ訳ですが、それはそんじょそこらの機内食のレベルを超えた美味しさと充実ぶりでしたし、鉄道ファンならずとも「タリスに乗る」というこの経験は、治安の悪いパリ北駅から乗らなければならないという、最大の欠点を補って余りあるものでした。


さて、話は元に戻って、その鉄道遍歴の中で、はるばるハンブルグに行った目的は、
ハンブルグは魚料理が美味しい」という噂を聞いたから(ドイツ内陸では、魚というと「Lachs(ラックス:鮭)」か「Matjes(マチェス:ニシンの酢漬け、但し油ぎとぎと)」の二択しかないので魚料理に飢えていた)、
大昔にトーマス・マンの愛読者であった私がどうしてもリューベックを見ておきたかったから(リューベックハンブルグの先にあります)
そして勿論前述のこれ↓ が最大の理由、
ドイツの鉄道模型オタクファンの聖地、「MINIATUR WUNDERLAND」鉄道模型博物館に行くため
だった訳ですが。
MINIATUR WUNDERLAND 「百聞は一見に如かず」先ずは動画をご覧ください。

ドイツ人のスケールの馬鹿デカさ、そして執拗さと空恐ろしさを感じることができると思います。
もし、何かの折にこの「MINIATUR WUNDERLAND」に行かれる折がありましたら、是非予約してから行っていただきたい!と思います、呑気な旅行者である我々は予約なしで行って何と2時間待ちました!ガイドブックだけ見て、ちゃんとネットで調べなかったのが敗因です。前記のサイトには、待ち時間が表示してあるページとネット予約ができるベージがありますから、今度行く時には(二度と行かないと思いますが)必ずや予約して行こうと思います。
で、この博物館は港に近い大きな古いビルを再開発したっぽいのですが(外観からはとても博物館とは思えません)、東洋人である我々親子4人はそこの階段で「鉄道ファン」ということでは同類であるドイツ人の親子連れと何故かオッサン同士のグループに埋もれて2時間待ったのですが、待っている我々に途中で飲み物の無料サービスがありました!そりゃ、短気なドイツ人を2時間も待たせるのですから、これくらいのサービスはしないと暴動が起こりかねません。列の前の方からトレイに乗せた紙コップに入った飲み物が沢山回ってきたのです。ちなみに私たちが行ったのは11月の半ば、北部ドイツのハンブルグでは日中でも寒暖計が0度付近の日だったのですが、回ってきたのは、冷たいOrangensaft(オレンジジュース)とApfelsaft(りんごジュース)と、そしてビール!!!名実共に、「お子様対象の博物館」ではなく、鉄道模型を愛する大きなお友達ならぬ、オジサン達も対象にしていると思われます。何せ「タダ」ですから、老若男女ことごとく紙コップに手が伸びて、室内でも分厚いダウンジャケットが脱げない気温の中、何杯も何杯もじゃんじゃん飲んでいるのです、日本ではこのような蛮行(子供もいる公共の場で午前中からタダ酒を飲む)はありえませんからビビる東洋人。大人は皆ビールです。も一つちなみに午前中です。常識ある東洋の日本人は、「午前中からアルコールを公共の場で飲んでよいのだろうか、子供もいるのに?」という倫理的(?)問題に加えて、「こんな寒い時にビールを流し込んだらトイレに近くなるから控えておこう」という生物的問題についても考えますが、前者の疑問はともかく後者についてはドイツ人は膀胱の容量が無限大であるか、もしくはビールが速攻で血液に変換される体質なのか、じゃんじゃん飲んでもドイツ人トイレに行かないのですよね、あれは人類七不思議です。そして、これは偏見ではなく独断で申し上げますが、我ら家族がその中にすっぽり埋まっている、入場待ちの集団は、お世辞にも紳士淑女ではない、というか、別の言い方をすると、明らかに労働者階級、というか、実際東洋の4人家族の我々がその中に混じっていて緊張を感じるくらいのジャーマンDQN集団でした。鉄道趣味の中でも、模型は、それこそ原信太郎氏のような方だからこそあそこまでのコレクションが可能であったように、とてもお金がかかる趣味です。なのに来館している人たちは、鉄道模型にお金を費やす前にお金を使わなければならない品目のリストが山ほどあるような人たちで、ここが何とも不思議でした、誰か私のこの疑問を解説してほしいです。
2時間待ちで入った博物館は、前掲の動画を見て頂ければわかるように、これでもかこれでもか、の巨大なジオラマの連続攻撃で、「鉄道オタク(であるところ)の母」ではなく、「鉄道オタク(の子供)の母」である私は、早々に「お腹いっぱい」(数杯飲んだビールのせいではありません!)になりましたが、鉄道オタク(そのもの)の息子でさえ、幾つかのジオラマを見た後は、かなり疲れて最初の興奮も湯冷め状態になっていましたね。しかし、またまた品揃えがハンパでないミュージーアムショップでは、再び鉄道オタクの血が騒いだのか、色々と買いあさっておりました(勿論、高額な模型群は買えないので、冊子とかDVDとかですが)。


鉄道模型博物館ではありませんが、ニュルンベルクにある「DB博物館」にも行ったことがあります、デュッセルドルフから鉄道(ICE)で5時間くらいかかった記憶が。普通なら飛行機で行きますよね。これもそれも息子が鉄道オタクだったから、親である我々も足を運んだのであり、そうでなければ、この地方都市に途中下車する理由がなかったでしょう。ちなみにDBというのは、「Deutsche Bahn」ドイツの国鉄です。
遠い東洋の日本で学んだ「世界史」の知識では、ニュルンベルクと言えば、1936年郊外の丘をまるで映画のようにハーケンクロイツで埋め尽くしたナチスの党大会と、

第二次世界大戦後の裁判の地(ニュルンベルグ裁判が開かれた裁判所)、

ということになりますが。こんなところにありました、DB博物館。今ネットで見ると、実はDB博物館はニュルンベルクだけではなく、コブレンツハレにもあるようですが。
勿論、ジオラマも展示してあった記憶がありますが、ハンブルグのあの壮大なジオラマ群を見た後では目が肥えてしまって少々物足りない気もしました。一方、バイエルン王ルートヴィッヒ2世が使った豪華な客車や、ビスマルクが使った実用的な書斎のような客車など、実際に使用されていた実物が展示してあり、大人にとってはそれらの方に歴史的興味をかき立てられたことでした。勿論、飲み物の無料サービスなどなかったので、見学の後は、街に出て、かの有名な「Nürnberger Bratwurst」こと、日本人の口にも合う「ニュルンベルグの焼きソーセージ」を食べました、この ↓ レストランで。
Nürnberger Bratwursthäusle

ちなみに息子は、このDB博物館のミュージーアムショップにて、DBのロゴが入ったリュックサックと、レプリカの金属製の標識(←何故こんなものに価値を見いだすのかわかりませんが、そこが鉄道ファンなのでしょうね)を買っていました。「大体、DBのロゴなんて、日本に帰ったら誰もわかる人いないでしょ?」と言った母(私)ですが、日本に帰国後彼が所属していた高校の鉄道研究会の面々は、皆ひと目見て理解してくれたそうです・・・。



夏休みが始まると、原鉄道模型博物館も、大人のファンだけではなく、鉄道ファンの子供たちとその親御さんで賑わうことでしょう(予約システムが、ハンブルグの博物館に比べて整備されていないのではないかという危惧がありますが)。我が家も、もしまだ息子が小学生ならば必ずや連れて行かされることだったでしょう。
しかし、横浜駅近辺を知っている私としては、ストリートビューにお世話になるまでもなく、この炎天下の中、あの道あの交差点を渡ってあの舗道を通って博物館に辿り着くのがリアルに想像できてしまい、今現在鉄道ファンの子供に付き添ってこの博物館にお出かけしている親御さんの姿を想像すると、頭が下がるばかりです・・・。
原鉄道模型博物館では、待ち時間が長い場合に、飲み物の無料サービスはあるのかしら?あってもまさかビールはありえないわよね?と、遠い目でドイツの鉄道模型博物館を思い出す、今年最初の猛暑日である今日この頃。