子育て中の若い母親に対して非寛容な社会は誰が作っているのか?

定期的に喚起されるこの手のトピックを、この暑さの中(←関係ない)目にしました。


産経新聞の金曜討論:西舘好子氏vs日菜あこ
「ベビーカーでの乗車」って・・・子守唄協会理事長vsママサークル総代表 (削除されている場合は、 この方のブログへ。全文掲載してあります。)


昨日の猛暑の中、用事があって出かけたのですが、ベビーカーでバスに乗っているママ、ベビーカーで電車(山手線)に乗っているママを見かけました。が、彼女たちがベビーカーで乗り降りするのを手助けしている人は見かけませんでした、除く私。私は手助けしますし持ちますよ、ベビーカー。都バスは低床車両ですが、それでもベビーカーを一人で持ち上げるのは大変ですから、停留所で私の後ろに並んでいたベビーカーの乗車は当然手助けしました、私は彼女より先の停留所で降りたので、降りる時に誰か手助けしたかどうかはわかりません。降りる時の方が一人で持ち上げるのは大変で危ないのですけどね。私は、正義の味方ではありませんし、職業的にベビーカーの持ち上げ持ち下ろしをやっている訳でもないですし、隣の車両や隣のドアまで遠征してベビーカーを手助けしている訳でもない、ただの小心者の小市民のオバサンですが、ただ乗り合わせた時はどんな時でも一緒にベビーカーの上げ下ろしを手伝うことに決めています。この少子化の時代、折角すくすく育っている赤ちゃんと子育て中の母親を、せめてこれくらいのことで手助けできれば、と思っているから、です。ちなみに私は日菜あこ氏のようなぴっちぴちの「子育て中の若い母親」の方々よりは遥かに年上であり、一方西舘好子氏は私の母親の世代で、つまりは中間管理職的位置というか、子供二人が共に大学生である「子育てが終わりつつある母親」というポジションでございます。

この討論の中では、「子守唄協会理事長」、という謎の肩書きよりも、直木賞作家にして日本を代表する劇作家故井上ひさし氏の前妻、(若い子は、井上ひさし氏のことも知らないかも)というタイトルが一番わかりやすい西舘好子氏が、今までの子育て論議の中でもう何度も何度も繰り返されていい加減聞き飽きた、良識ある経験者のご発言をされています、曰く、
「おんぶ推奨」
「子育て中はお洒落を控えたらどうか」
「昔の母親は苦労した、今の母親はラクをしている」
ほっっっっっんと、この手のステレオタイプオバサマ発言は、どうして無くならないのでしょうね。これまた定期的に新聞の投書欄にもこの手の投書(「最近の母親は何故おんぶをしないのでしょう、便利なのに」「携帯をいじって子供のことは上の空」「少々手間がかかっても愛情溢れる布おむつ」)が掲載されるのも季節の風物詩になっておりますが、それらの投書が何ら若い母親たちの琴線に触れないことを読み取れていないが如くの、「作家の元妻」西舘氏ですが、この際不肖わたくしがはっきり申し上げておきましょう、今の時代、
普通の感覚を持った若い母親は、おんぶはイヤなんです、誰が何と言おうと!私が子育てした頃ですら、例えば幼稚園のお迎えに子供を「おんぶ」している母親はとうにいませんでしたよ。そもそも「おんぶ」って後進国、訂正、発展途上国っぽい(どちらにしても不適当な例えであることはお詫びします)じゃないですか?西舘氏が子育てされていた頃と思われる日本が確かに発展途上国であった高度成長期にはそれでもよかったでしょうが、グローバル化が進んだ現代、COOL JAPANに住む、「世界一お洒落」と言われている今の日本の若い女性が(最近では韓国に押されてはいるものの)、10キロ先の井戸まで水を汲みに行くわけでもないのに、「おんぶ」はないですよね。そして夫であるところの若き父親達もまた、妻に胸バッテンおんぶで歩いてなんかほしくないのですよ。そしてこの季節、赤ちゃんをおんぶして30分でも外出しようものならば、ママの背中と赤ちゃんの顔や胸やお腹はたちまち汗疹だらけになりましょう。それでも、おんぶを推奨するのならば、西舘氏を信奉する子守唄協会の若き会員で子育て中のママを30人くらい集めて、銀座や表参道で、胸バッテンのおんぶひもで子供を背負って「おんぶ推奨デモ」でもやって頂きたい(←私は30人なんて集まらないと思いますけどね)。
「子育て中の若い母親はお洒落を控えるべきである」ってご意見も、なかなかに問題発言だと思うのですけどね。子供の父親である若きパパたちもトーゼン子育て期間一緒にお洒落を控えてくれるんですか?何故そこまでストイックに子育てしなくてはならないのでしょう?「子育て」って修行なんですか?一方「お洒落」って特別なものじゃなくて、生活そのものなんですけどね。携帯電話だってそうです。私は「子供の前で携帯いじる」のが良いこととは決して思いませんが、でも仕方ないと思います、だって、世の中全体でこういう世の中にしちゃったんですから。世に「携帯電話」というものが生まれてこの方、テレクラやアダルトサイトやゲーム依存や由々しき問題はゴマンとあれども、携帯電話普及の波は一度たりとも後退することなく今に至っているわけです。で、今「携帯をいじる」と言っても別に電話しているわけではなくて、やはり拡大の一途をたどってきたSNSやゲームをやっているわけで、もうSNSとそれに接続するツールである携帯がない世界には戻れないのです、そういう世の中にしてしまったのです、世の中全員で。今や小学生から高齢者までが携帯を持っているそんな世の中で、「子育て中の母親」だけが強い意志と理性と責任感を持って、「携帯の使用を控える」ことなんてできないんじゃないでしょうか?「母親ならすべきである」というのならば、では彼女達の夫であるところの「子育て中の父親」全員にも「子育て期間は携帯の使用を制限する」ことを同じく強要しなければならないでしょう、そんなことはできないのですから、母親だけにそれを求めることも出来ないんじゃないでしょうか。子育て中の母親と父親の携帯からはSNSに接続できないようにしますか?もう無理なんです、元に戻すことはできないのです。携帯もSNSも今の日本人、とりわけ若い世代の人にとっては、もうそれらがあることが世界の前提なのですから、その前提を踏まえて話をしないと、建設的議論にならないかと思います。
「昔の母親の方が大変、今はラク」という考え方は逆に全く以て間違っていると思いますね。昔の方がラクですよ、とにかくしゃにむに子育てしてれば良かったんですから。今は、子供を産む前から、不妊治療、妊娠中の仕事・産休の段取り(←男性には必要ないのに)、産んでからは仕事と育児の両立、保育園や幼稚園にまつわる色々だけでも大変なのに、子供の口に入る食品の放射能汚染も気にしなければならない破目になっているし、昔みたいに「野っ原行って遊んできなさい〜」と日が暮れるまで子供を放牧できるようなのどかな環境ではなく幼女好きの変質者がうようよいる社会だし、学校教育はガタガタでその補完のためにお金出して塾や習い事に行かせるのもその送り迎えも親の責任だし・・・etc。若いママたちは、「こんな世の中に誰がした?」などとは一言も言わずに、この子育てがしにくい時代に、黙々と自分たちの子育てしてるんですから、偉いですよ。妊娠してから子育てが完了するまでは、ジェットコースターのように無我夢中、というのが21世紀平成ニッポンの子育てなんですけどね。それと百歩譲って(一歩も譲りたくありませんが)今の子育てが、紙オムツや市販ベビーフードなどでほ〜んの少しだけラクになっているとして、それが悪いことなんですかね?子育てがラクになっているのは人類にとって喜ばしいことではありませんか?同性として、子育ての先輩として、喜びこそすれ「もっと苦労しろ!」的な発言が西舘氏の世代の女性に多いのは如何なる理由によるものなのでしょうか?若く、溌剌として、髪も爪も綺麗にして、お化粧もして、子育てしながら、積極的に外出をする若いママたちに対する嫉妬、という訳ではないでしょうね、まさか。

加えて、本当?と疑ってみたくなる煽りのような発言も西舘氏はしています。

若いお母さんから、赤ちゃんのヨダレが汚いから『止める薬はないか?』と聞かれたり、泣き声がうるさいので『睡眠薬を飲ませた』と真顔で言う母親もいる。

私はかなり懐疑的です、本当にそんな母親がいるんでしょうか?そりゃ、広い世の中そういう人もいるかもしれません。でも、それは子育てしている母親のごくごく一部であり、変な人はどの世代にもいます。そして若い母親が「ヨダレが汚い」赤ちゃんに困っているのならば(我が息子は「牛」の涎ほどに涎を出す赤ん坊でした)、「泣き声がうるさい」赤ちゃんがいるのならば(我が娘は、二、三軒先からも泣き声が聞こえる赤ん坊でした)、それを、薬や睡眠薬ではなしにどうやって解決すればよいのかを若い母親に教える役目は、近所の小児科のお医者様や保健婦さんやら先輩ママやら、そして西舘氏世代の「おばあちゃんの知恵」じゃあないんでしょうか?「近頃の若い子は、年寄りの言うことなんて聞かない」ですって?聞いてもらえるような努力はしたのでしょうか?もし、若い母親たちが、年配の子育て経験者の女性のアドバイスを聞かないのならば、それには相応の理由があるかもしれませんね。批判ばかりされ、時代遅れの提案をされ、電車の中や街中では、子育て経験者だからこそ困っている子連れの若い母親を一番助けられるはずなのに、「マナーがなっていない」「私たちの頃は子育て中は外出は控えた」とか言われて、手助け一つして貰えないのならば、アドバイスだけ聞く気になるでしょうか?つまり西舘氏のように、若い母親を非難・批判するばかりで理解しようとしない年長者の女性の態度こそが、ひいては社会全体の非寛容に繋がっているのではないか、と私には感じられます。子育てで頑張っている若い母親を無条件で応援してあげる、という心持ちにどうしてなれないのかわかりません。



さて、この子守唄協議会会長西舘好子氏、という大物相手に論戦を受けて立っているのが、日菜あこですが、申し訳ないことに、彼女は私の守備範囲の芸能人ではなく、ブログも一部拝見しましたが、まあ共感できる訳もないので(でも、熱心にコメントを付けている読者が大勢いる、ということに感動しました)。大体ママモデルランキング/Ameba芸能人・有名人ブログを見ても、誰が誰だか区別がつかない私なのですが、それでも胸が熱くなりますよ、これだけの若い女の子(と言ってもいい年齢)たちが、一生懸命子育てしてるんですから。日本の少子化を少しでもくい止めている健気な彼女たちのことが気に食わなくて、何に付けても批判ばかりする年配の女性って、何なんでしょうね。




子供二人が大学生と言う時点で、もう子育てに関しては終了のお知らせが点滅しているので、私は現在進行形の当事者ではありません。でもだからこそ、街で出会う不特定多数の子連れの若いママたちを、微力ながらも助けてあげなくてはならないのでは?と思います。

今までに、妊婦さんや、赤ちゃん連れ・子連れの母親に対する世間の冷たさに対して書いたエントリーに言いたいことは殆ど書き尽くしてしまったので、よろしければそれも見て頂いて、ギャルママであろうが、髪振り乱しておんぶひもで子供をおんぶしたおっ母さん(←いるんですかね?西舘好子氏が推奨するこんな「若い母」が。)であろうが、今の日本で子育てしている若い母親たちを応援しよう、という気持ちになって下されば幸いです。


「情けは他人の為ならず」←くれぐれも正しい意味で。
妊娠・出産・子育てのジェットコースターライフに愛を!
「赤ちゃん連れの母親」を手助けすることに関して、雑感