なでしこジャパンがエコノミークラスでオリンピックに向かったのは良かったのかもしれないと思うことなど

W杯チャンピオンでありながら、オリンピックへ向けて日本からヨーロッパまでエコノミークラスで移動したなでしこジャパン」こと女子サッカー日本代表が、様々なプレッシャーにも負けずに初戦のカナダ戦に勝利しました。


ヨーロッパまでは約12時間のフライトです。長いなんてものではありません。機内で出るお食事は3回でしたっけ?食べて、眠って、映画観て、食べて、眠って、映画観て、も、まだ延々とシベリア上空を飛んでいたりするのです。一般人ですら、相当消耗するフライトですが、世界チャンピオンである彼女たちが、国民が勝手に彼女たちに背負わせている「メダル」というプレッシャーを感じつつ、エコノミークラスで移動していたとは!!!今朝未明の川澄選手と宮間選手のシュートが決まった瞬間、中継を見ていた私は不覚にも涙してしまったのですが、それと同じくらいの涙が出てきます、勿論全く逆方向のベクトルで。「エコノミークラス症候群」という言葉が知られてから既に久しいというのに、何故、世界チャンピオンであるアスリートの彼女たちが、しかもオリンピックへの門出に、わざわざ体調や筋肉の状態に悪そうな「エコノミークラスで12時間」かけて移動させられる、ってこれイジメですか???しかも世界ランキング20位で1968年のメキシコオリンピックの銅メダル以来40年以上メダルとは縁遠い男子チームビジネスクラスに乗る同じ飛行機で!!!


と、「去年のW杯準々決勝ドイツ戦からなでしこを応援するようになった」俄かファンの私です、*1私個人でなでしこ全員をビジネスクラスにアップグレードする費用を寄付できれば何のストレスもないのでしょうが(←一度でいいからこんなお金の使い方をしてみたい)、頭から湯気を出し(←35度を超えんとする気温のせいではなく)、色々と考えてみました。サッカー協会とやらはお金がないのならば何故寄付を募らないのか、「なでしこをビジネスクラスに乗せる基金」と言えば、ビジネスどころかファーストクラスにも乗れる寄付が集まること間違いなしなのに、マネジメントをしている人は何やってるんだか、協会がやらないのならば誰かボランティアで基金を募ればよいのに、かの「Studygift」なんか作っているくらいだったら、「なでしこgift」とか作ればいいのに・・・と考えていたのですが。


ちょっと冷静になって、鼻息は荒いまま調べてみたら、JOC日本オリンピック委員会)がそもそも選手の移動については、

柔道代表といった体が大きい選手を除き、日本代表の移動手段をエコノミーと定めている
*2


のだそうで、では何故世界ランキング20位の男子サッカー代表がビジネスクラスで移動したかと言えば、それは

日本サッカー協会JFA)の援助でビジネスに格上げした*3


から、だそうです。つまり、
「オリンピックに出場する選手は、どんなに有名・有力な選手であれ、基本エコノミークラスでの移動」
なのであり、だから「なでしこジャパンがエコノミークラス」ということだけ取り上げれば、それは「順当である」ところなのですが(「世界チャンピオンに対して相応しい待遇であるか?」は別問題として)、ですから今回海外メディアにも報道された「男女間の不当な差」は、日本サッカー協会JFA)のさじ加減一つで決まった、ということだったようです。ということは、私の義憤(?)の矛先は「世界チャンピオンの女子代表ではなく、世界ランキングが格下の男子にビジネスクラスを与えた、日本サッカー協会」に向かいますが、「日本サッカー協会」が「男女差をつけた」理由も、もう一つはっきりしません、曰く、

日本協会は、男女アベック出場が決まった96年アトランタ五輪前の幹部会で「最終予選までは男女ともエコノミー席。本大会は男子がビジネス席、女子はエコノミー席」と決めた。その後、女子に関する議論がないまま16年間、同規則が適用されてきた。今回は、昨年のW杯優勝で女子が世間から注目されるようになり、初めてワンランク上がり、プレミアムエコノミーになったが男子に並ぶことはなかった。
同会長は「ロンドン五輪で女子が金メダルを取ったら、さらに女子サッカーは盛り上がるわけだし、当然次からはビジネス席で、という話になるでしょう」と話す。*4


どうやら、「男女共にビジネスクラスにするには予算がなかった」ということではなく「規則」を適用しているだけで、というか、「世界チャンピオンに対して臨機応変に対応する」という普通の気配りができなかっただけ、いやいやもしかしたら、エコノミークラスからプレミアムエコノミークラスに「格上げしてやった」と思っているのではないか疑惑。
この、脳天気で仕事が遅い会長はどんな人物かとGoogleさまに聞いてみると、あらびっくり、私の高校の先輩じゃあありませんか(と言っても、卒業年次は約二十年古いのですけどw)。戦前のナンバースクールと第一高女が戦後に合併してできた高校にありがちだと思うのですが、会長が卒業した約20年後に私が通った時代でさえ至る所に「男尊女卑」の空気が充満していましたから、会長が「男子は無条件に(どんなにショボい成績でも)ビジネスクラス、女子は基本エコノミークラスで努力して結果を出したらビジネスに格上げ」と何の疑問もなく思っていたことは、想像に難くありませんwww 彼に「その考え方自体が『男尊女卑』である」と言っても何のことかわからないくらいでしょう。村上春樹も輩出したあの校風は、今はどうなっていることやら。但しその「男尊女卑」の高校で唯一今思い返しても感心することがありました、それは「出席番号が男女関係なく五十音順」であったことです。逆に娘が通った超自由で超リベラルな高校でさえ、21世紀の今も「出席番号は先に男子が五十音順、次に女子が五十音順」でしたから(「事務処理上便利だから」とのことですが、それなら何故女子を先にしないのか?)、それを考えるとその点だけは無駄にリベラルな高校でした。
で、結論は、「日本サッカー協会」及びその会長に文句を言おうにも、そもそも「無条件で、男子→ビジネス、女子→エコノミー」が「規則」であった訳だし、会長という人物にしても昨年のW杯優勝から1年も時間があったのにも拘らずその規則の見直しを考えもしなかった方であり、嘗て「男尊女卑」の高校でしみついた意識を今更変えようもない方、というところに行き着いてしまったのですが・・・。


でも。
オリンピックに向かう同じ飛行機で、ビジネスクラスに乗る男子を尻目にエコノミークラスに搭乗したなでしこジャパンを想像して涙していた私ですが、逆の見方をすれば、つまり真に女子サッカーのオリンピックでの活躍を願うのならば、これで(男子がビジネスクラス、女子がエコノミークラス)よかったのかも。
世の中を流れて行く様々な事象を見るにつけ、個人であれ、受験であれ、スポーツの試合であれ、企業の戦略であれ、

挑戦する側、追いかける側、の方が実はメンタル的に有利で、その結果、頂点に立てる/望むものを手に入れられる

のではないでしょうか?最近でも年初の恒例箱根駅伝やら男子マラソンのオリンピック代表選考レースなどで、実力もあり下馬評も高い選手が予想通りトップを走りそのままゴールするかと思いきや、遥か後方から追いかけてきたあまり有名でない選手の挑戦的走りに、抜かれてしまう、という場面を見ましたし、それこそ昨年女子サッカーW杯の決勝で、アメリカは後半得点した時と、延長戦で得点した時と、二度までも勝利を確信したであろうのに、挑戦し追いかけてくる日本に追いつかれ、最後はPK戦で負けたのを私たちは見てきたのではなかったでしょうか?とすると、なでしこ達に活躍してもらうためには、「挑戦する、追いかける」形、ハングリーな状態こそがベストであり理想なのではないか、と。そうなんです、なでしこジャパンが、前人未到の「W杯&オリンピック ダブル優勝」を成し遂げるためには、「ビジネスでゆったりと移動」なんてしていてはいけないのです、あくまでも挑戦者として、オリンピックへは、12時間の長旅には快適とは言えないエコノミークラスでこそ寧ろ旅立たねばならなかったのでした。同じ飛行機のビジネスクラスにに、世界ランキングでは遥かに劣る男子チームが乗っていることも逆にプラスになったのかも?つまりなでしこ達の闘争心となでしこチームの一体感を増すものとなったのかもしれません。
・・・とすると、我が先輩である会長は、そこまでを見越しての、「男子は実績がなくてもビジネスクラス、W杯優勝した女子はエコノミークラス」という采配だったのでしょうか?何と言う深淵な戦術でしょうか!!!・・・な、筈はないですけどね、多分。



まあ、それにしても男子チームも、いやしくも「サムライ」を名乗るのならば(確か男子のナショナル・チームはサムライ・ブルーじゃなかったか?)、日本男子があと何十年経っても到底到達できない「W杯MVP選手」に選ばれた澤穂希選手、めまいの症状から回復して今大会に出場する彼女には、「サムライ」の一人の誰かがビジネスクラスのシートを譲ってあげる、という武士道精神を発揮してほしかったですね。そしてそういう余裕こそが、翻って実際の試合にも反映されると思うのですけど。何故なら、世界ランキング20位の彼ら「サムライ・ブルー」はこれから世界ランキング1位のスペインと戦わなければならないのですから。本来ならば彼らこそが、挑戦者としてエコノミークラスで戦いの地に向かうべきだったのですが、会長はそれにもお気づきになれなかった、ということなんですね。対スペイン戦が始まったばかりの真夏の夜。


追記:その後の報道のことなど、書ききれなかったことを別エントリーで書きました。
なでしこジャパンがエコノミークラスでオリンピックに向かったことについて書いたエントリーに追記