さかもと未明氏による「再生JALの心意気」と、それに対する非難に関して時間をおいて考えてみること  ② さかもと未明氏のクレームの真っ当な部分


さかもと未明氏による「再生JALの心意気」と、それに対する非難に関して時間をおいて考えてみること  ① 赤ちゃん連れの母親の大変さが本当に理解されたのかどうか?


私は以前から書いているように*1赤ちゃん連れの母親は無条件で保護されるべきだと思っています、「周囲に配慮している」とか「気配りが感じられる」とか「マナーを守っている」とかの言い訳のような偽善めいた条件付きでなしに。

公共の場で泣いている赤ちゃんは、嘗てのあなたかもしれないし、ベビーカーでバスに乗ってきた母親は、嘗てのあなたの母親かもしれないし、将来母になった娘の姿かもしれないのです。
赤ちゃんや幼児連れの母親が、小さくなって申し訳なさそうにしていないと優しくしてもらえない社会、過剰なまでに気配りしないと理解してもらえない社会はおかしいのではないかと思っています。


しかし一方、仕事の準備を飛行機の中でやらなくてはならなかったり、飛行機の中で寝て時差調整をしようと思っているビジネスマン、体調が悪い中遠方へ移動しなくてはならない旅行者、そして勿論普通に旅を楽しみたくて飛行機に乗っている人々もいるわけで、こちらも自分や自分の家族であるかもしれないのですよね。


今回、さかもと氏のクレームに対してJALが優等生的に答えていることは結局は、
赤ちゃん連れの母親には『mama&baby』という(おざなりの)冊子を渡してマナー啓発をして(したことにして)、後は、他の乗客の理解(という名の我慢)に丸投げしている
と同然ではないでしょうか?これだけしておけば航空会社であるJAL側には責任はない、という態度が見え見えです。
JAL様がおっしゃるように飛行機の構造を変えることは不可能だとしても、出来ることはあるのではないでしょうか?本当に、赤ちゃんが機内で泣き出した時には他の乗客に我慢を強いるしか方法はなくて、航空会社には改善の余地は全くないのでしょうか?JALの説明で納得して終わり、ですか?

たとえば。
・どうしても機内で静かに過ごしたい、静かに眠りたい、という乗客には、座席後方の席を確保するとか(後方からの音の方がよく聞こえて気になると思うので静かさを求める乗客には後ろに座ってもらう)、
・「再生JAL」が、「再生SONY」か「再生パナソニック」とコラボで、外部の音を完全に遮断し且つ快適な姿勢を保てるヘッドフォンを開発して静かな環境を望む乗客に配るとか(「耳栓」みたいな原始的なものでなく)、
・座席数の効率を排してもバシネット以上に赤ちゃんが快適に眠れるようなスペースを作るとか、
航空法で個室は作れないとのことですが、トイレやキャビン並みの個室でよいので、授乳及び泣いた赤ちゃんをあやすための空間を作るとか、

ド素人の私でもこれくらいは考えつくのですから、専門家の方々が議論すればもっともっとアイディアが出てくると思います。要は、航空会社にヤル気があるかどうか?ということです。
航空会社が何か改善策を考えない限り、赤ちゃん連れのお母さんが、JALが配っている冊子「mama&baby」通りに完璧に行動しても、泣く赤ちゃんは泣くのですから、その場合、周囲の乗客はじっと我慢させられるという状況がこれからも未来永劫続いてしまうのです。
本当にそれでいいのでしょうか?

・・・察しのよい方は気付いていますか?何だか、言っていることがさかもと未明氏っぽくなってきている、ということを。
そうなんです、日をおいて冷静になってさかもと氏の主張を読んでみると、機内で泣く赤ちゃんに関するくだりには全く賛成できませんが(私個人は、機内で眠らせるために赤ちゃんに薬を飲ませることには絶対に反対)、赤ちゃんの母親と同じく正規料金を払って飛行機に乗っている乗客が機内で快適に過ごす権利を航空会社に主張することに関しては、全く正当なのではないか、ということに気付かされるのです。

今回の一件は、世論がさかもと氏が赤ちゃんの母親に吐いた暴言と、着陸間際の機内をシートベルトを外して暴走した行動を非難することに集中してしまい、「再生JAL」が以前と同じく官僚的な対応をしていることがかすんでしまいましたが、本当は航空会社が航空会社にしかできない改善策を出さないことに問題があるのではないでしょうか?だとしたら、乗客を代表して航空会社にクレームをつけてくれたことだけは、公平にさかもと氏を評価してもよいのでは?元々さかもと氏が寄稿した雑誌「Voice」を見てみると、錚々たる顔ぶれの執筆者が並んでいます*2。その中に、さかもと氏の文章を読んで、「再生JAL」とやらの対応が、未だに「親方日の丸意識」であることを気付いた方がいたはずだと思う/思いたいのですが。


航空会社だけではありません。新幹線だって、改善の余地はあるはずです。新幹線の中で集中して原稿を書きたい脳科学者の方、しっかり寝て次の仕事に備えたい芸能人、そういう人は大抵グリーン車に乗りますが、普通の特急券の倍の値段を払って乗ったグリーン車の車両が、赤ちゃんの泣き声や子供の騒ぐ声でうるさくても、いつも、そしていつまでも理解を示して我慢するのでしょうか?そして、JRにクレーム付けずに現状を我慢し続けること、それは本当に美徳でしょうか?
実は改善の余地はあります。ドイツの新幹線、ICEに乗った時に、座席にこういう記号がついているのを見ました。


見ればわかりますが、上の方は携帯通話禁止のみならず、着信音も禁止、イヤホンで大音量の音楽を聞くのも禁止(つまり音漏れも禁止ということでしょう)、その他の騒音も禁止の座席の印です。下は逆に座席での携帯通話がOKな印です*3。座席での携帯通話が許されているのはいかにもドイツらしく合理的なところですが(日本のビジネスマンは、新幹線の中で電話がかかってくる度にデッキに出なくてはならない不便さを、この先も甘受するのでしょうか?)ちなみにこの区分けは1等席、2等席両方ともにあります。これがベストの区分けとは思いませんが、この区分けで「Ruhebereich(静かにする区域)」にさかもと氏が座っていれば、一人の乗客として快適に旅ができるでしょう。このように新幹線だって改善の余地があることは確かですし、それならば飛行機だって、固定観念をもう一度取り払って、全ての乗客の快適な空の旅のためにできることはまだまだあるのでは?「再生JAL」の「できない」は本当に「できない」のか?
さかもと氏の「再生JALの心意気」の冒頭部分、

あなたとこれ以上、話しても埒が明きません。かたちだけ、『申し訳ございません、努力してまいります』とか頭を下げても、どうせ何もしないでしょ? 私は、頭を下げさせて溜飲を下げて終わり、なんてことでは納得しません。クレームをつける以上は、自分の名前を出して責任をもちます。だから結果を出してほしい

極めて真っ当な言い分ではないでしょうか?そうなんですよね、CAに「努力してまいります。」と慇懃無礼に頭下げられても、状況が何も変わらないのならば、直接航空会社にクレームつけて結果を出してもらうしかないのです。
・・・と考えてくると、飛行機や新幹線のヘビーユーザーである多くのビジネスマン、著名な脳科学者、影響力のある芸能人やマスコミや「Voice」に執筆なさるような方々に、
「今までは機内や車内で泣き喚く赤ちゃんと遭遇して、お仕事や睡眠の邪魔になってもじっと我慢して温かく見守っていてくださったのだとは思いますが、現状を変えるためには改善策を作るべく航空会社や鉄道会社に正当にクレームをつけてください!」
とお願いしたいですね。クレームをつけないと何も変わらないでしょう。是非世論も喚起して頂きたいものです。その先鞭をつけたのは、さかもと未明氏だったとしても・・・。


さかもと未明氏による「再生JALの心意気」と、それに対する非難に関して時間をおいて考えてみること  ③ 赤ちゃんは本来泣くものであること