*終わりなき道程〜やっと中学受験が終わっても〜

息子が中学受験した8年前くらいには、確か存在しなかった、か若しくは、始まっていたのかもしれないのが、中学受験塾の新手の商売:

中学受験が終わったばかりの子を引き続き塾通いさせる阿漕な作戦

「今、ゲームやサッカーを我慢して頑張ってあの山の頂上まで行けば素晴らしい中高の生活が待っているんだよ」と言ってさんざん子供のお尻叩いて登らせておいて、やっと頂上まで来たら、「さあ明日からは引き続きあの高い山を目指そう、そこに登れば今度こそ、素晴らしい大学生活が待っているよ。」と煽っているのだ。数年来遊びやお稽古毎やスポーツを我慢して犠牲にして頑張ってきてやっと成果を出した子供と親に、間髪いれずに新たなプレッシャーをかけるのだ。人の弱みにつけ込む、このやり方は、やっぱり塾は「教育産業」なんて言いながら結局は「お商売」なのだと確信させるに足るものだ。そこに商機があるとみれば、お客につけ込み、同業他社がやっていれば事の是非を問わずにとにかく同じことをやる、というのは、商売も商売、ガリガリ亡者の商売ではないか。
例えば、

NEXUSから名前を変えたSAPIX「中高一貫コース」の謳い文句は、
「6年後の大学受験を視野にトップギアでスタート」
あざとくないですか?つい2週間前までは、難関中学合格が全てのゴールのような煽り方だったのに。それと大ニュース?!SAPIX中高部が代ゼミと提携した、ていうか正確には買収されたらしい、去年の9月に。初めて知った。


早稲田アカデミーもすごい*1!中高一貫校の新中一生は、春期講習(もうあるの!?)が「無料」ですって!今までさんざんお金をしぼりとっておいて、更にこれから向こう6年間しぼりとるつもりならば、春期講習を無料にするくらい何と言うこともないのだろう。それにいきなり「東大コース」と名前がついている講座がある!まだ中一なんですけど!さすが煽りの早稲アカ!


四谷大塚は、ちょっと違う。個人的には馴染みがある四谷大塚だけれども、私がドイツ滞在中に「予備校の東進」グループの傘下に入ってしまっていた。だから四谷大塚のトップページの右上にちゃんと東進ハイスクールが・・・。少し長くなるけれども、そこにクリックして出てくる「釣り」の酷いコピーを書いてみる。
「中学受験頑張りましたね。しかし、中学受験はゴールではありません。未来のリーダーに向けてのチャレンジは今からが新たなスタートです。ここで頑張りをやめてしまえばせっかくのここまでの努力も水の泡になってしまいます。ーー中略ーー 先ずは一学期の内容を、入学式までに終わらせませんか。 ーー後略ーー」
これはエゴイスティックな親心を見事なまでに代弁している。そして更にクリックして東進のページに入ると、もうそこは新興宗教よりもマルチ商法よりもキャッチーな言葉が並ぶめくるめく世界である。とにかくこれを見てほしい。
http://www.toshin.com/jhs/image/2010shinnendo/messege.jpg
難関中に合格した「勝ち組」の子(の親)には、「中学三年間の学習を一年間で修了し二年生からは高校の学習へ」とエリート意識をくすぐり(実際は無理だけど)、中学受験に失敗(とは書いてないが)した「負け組」の子(の親)には、「大学受験で大逆転」と、親の見栄と願望を読み取ったような煽りでたたみかけてくる。これは残酷、これは酷い。それまで頑張ってきた子供たちは、一息つくことも許されないのだろうか?二度と来ない青春を味わい尽くすこともできないのだろうか?


・それから日能研は、何故か一途に「中学受験塾」をいまでも頑に守っているようだ。そうであってほしい。今でも覚えているけど、私が昔行った日能研の入塾説明会では、「公立中に進んだら、中一から塾通いですよぉ。面倒見のいい私立にいけば、そんな必要はないんですっ!」と日能研の先生がマイクに向かって絶叫していたっけ。でももし、日能研がどこかとくっつくとしたら、駿台河合塾河合塾は微妙にZ会と提携しているから、駿台と?「社風」としては四谷大塚こそ駿台、という感じなのだけど。


中学受験を子供と一緒に走ってきた親御さん方、これを見ても中学受験塾を礼賛しますか?まあ中には親でありながら、

それから、元同僚諸君! ビジネスチャンスは、まだまだふんだんにある。中学受験を経験した子供たちへのサービスには、まだ誰も気づいていない秘境があるに違いない。今なら、一財産築く自信があるんだが、残念だ。(今は、学問のほうが楽しいのさ) 。とにかく、一貫校の親の話をよく聞いて、一山あててくれたまえ。
中学受験を終えて hiroyukikojimaの日記

と、ご子息の合格の嬉しさの余り、と解釈したいが、更に塾のお商売を助長するようなことをのたまう方もいらっしゃるのだが。


ついでに、今や、SAPIX早稲田アカデミー四谷大塚日能研も「小学校1年生」からの塾通いを勧めている(早稲アカに至っては、「年長さん」向けの冬期講習まで開いているほど)。ということは、

義務教育と平行して塾通い、高校生になってもずっと塾通い

ということになるのである。あな、恐ろしや。
この国には、公教育というものがないのだろうか?
極論すれば、「塾」や「予備校」というものは本来は裏街道というか、学校教育を補完するためにひっそりと在るものだった。それが、今や「何様?」と言いたくなるほどの専横ぶりである。いくら「フィンランドの教育を目指す」と言っても、彼の地には「塾」やそもそも「私立」校というものが殆どないのだから、全く無理というものなのである。