塾や予備校が日本を駄目にしている、と思うこと

先日、新聞にはさまっていた某塾*1冬期講習のチラシを見ていて、仰天した。

冬期講習のところに、

年長〜中三

とあったのだ。
念のため、もう一度、

年長

ですよ。これって(くどいけど)

幼稚園児

のことですよ。
義務教育であるところの小学校入学前から塾通い、なんて!

塾の傲慢&専横もここに極まれり。

はるか昔は「塾」とは学校の勉強を補うところ、だったはずなのに、今や学校教育の先回りをし、学校教育を駄目いしている元凶。
教育だけでなく、社会をここまで変えた(勿論悪い方向に)「塾」「予備校」の責任をどうして誰も口にしないのだろう?

ヨーロッパで、夜の9時半に、小学生が親の付き添いなしに電車に乗ったり、繁華街や駅を歩いていることは絶対にない、否、親がついていようがいまいがその時間に外を歩いていない。
ところが日本国の首都圏では極めてフツーのことである。
有名な「N」のバッグ(「日能研」のバッグです、念のため)を担いだ小学生が群れをなしているし、警備員や先生に駅まで引率されてたくさんの塾帰りの小学生が夜の繁華街を歩いている。彼らは、学校が終わって遊ぶまもなく塾に来て勉強し、塾から帰宅してオヤジのような時間に夕食を食べ、寝るかまだ勉強するのだろう。
我が家の息子が中学受験の時、最後の4ヶ月、週に一回だけこのような時間に塾に通ったことがある。「あと4ヶ月だけ」という期間限定でさえ、親も本人も疲れてしまった。今の小学生はこれを何年生からやるのだろうか?そうなってくると、こういう生活がフツーのことになってしまうのだろうか?

夜の10時を過ぎると、今度は制服姿の中学生、高校生がターミナル駅には溢れている。塾や予備校が10時前に終わるからだ。残業帰りのオジサンや一杯ひっかけたオジサンと同じ電車に乗って彼らは帰宅する、多分家に着くのは11時前?これってどこかおかしくないですか?高校生でも未成年なんですけど。
小学生と違って中高生になると、親も「塾で勉強している」と安心してはいけない。
今度は我が家の娘がドイツから帰国して高校受験する時、やはり秋から冬にかけて授業が9時半に終わる塾に行っていて、「外国ボケ」していた私は(日本の事情に疎く「中学生の女の子が一人でその時間に電車に乗って帰るなんてとんでもない」と思い込んでいたので)、毎週塾のある駅まで電車に乗って迎えに行っていたのだが、ある時電車の中で聞いた某超お嬢様学校の制服女子高生二人の会話:
「どうしよう、こんな時間になっちゃった、母親からのメールに返信してないしマジ怒られる!」「『携帯の電源切って塾の自習室で勉強していた』って言えばいいじゃん!」
ですよ、おじょーさま!
まあ小学生だって、帰りの電車の中で思い詰めた顔で狂ったようにゲームやっているしね。知らぬは、或は、知らぬ振りをしているのは親ばかり。


「もし、この世に塾がなかったら?」
「塾を法律で禁止したら?」
そうしたら世の中どうなるか、考えてみるのはどうだろうか。
今、「塾で教えてもらえるから、学校の授業が多少問題があっても目をつぶる、学校や教育委員会に文句なんか言ったら面倒くさいことになるから事なかれ主義」というスタンスが多いと思うのだが、もし塾がなければ、親はもっとガチで学校と向き合うのではないだろうか?
学校を、(公)教育を再生させる一番の方法だと思うのだが。
小学生は言わずもがな、中学生も高校生もフツーに家族で食卓を囲める時間に家にいることになる。
勿論、携帯もパソコンもなかった昔のホームドラマには戻る筈もないし、戻る必要もないが。
それでも、「塾」という怪物に、学校も家庭も乗っ取られるよりはマシかもしれない。


ところで、「年長」から「冬期講習」に通わす親って?
もしかして、「お受験不合格組」?
小学校入学前から、中学受験でのリベンジを狙って?
ならばやめておいた方がいい、小さな子供が(それもお受験不合格で十分傷ついているだろうに)中学受験までの6年間、常に緊張して「受験」を意識して勉強なんてできないから。
それで失敗した例もたくさん知っている。
(お受験でお嬢様学校に不合格で、中学受験で桜蔭狙い、とか。親の節操を疑うけど)
無理にそんなことをさせていたら、どこかで心か身体が壊れちゃうから。
次のターゲットは「高校受験」くらいに思って、「小学校お受験」の時とは全く発想を変えて子供を見守った方がいい。


塾や予備校を、「教育産業」なんていうけれども、「教育」は「産業」なんかであってはならないはず。
けれども、今の日本を見ていると、完全に「公」教育は「産業」の波に呑み込まれてしまっている。
これを解決するのは、決して「こども手当」でも「高校無償化」でもないことは明らかなのだが。

*1:早稲田アカデミー http://www.waseda-ac.co.jp/elementary/index.html ウェブ上にも冬期講習のところに「年長」とある