海外での子供の学校選び

先ず最初の関門は、以下の3つのどれを選ぶか、ということになる。年齢に関係なく(高校生は日本人学校ないけれど)一般的に、

日本人学校

②インターナショナルスクール(又はアメリカンスクール、ブリティッシュスクール)

③現地校

のどこかに通わすことになる。
少し説明を加えると、①については、http://ja.wikipedia.org/wiki/日本人学校を見てもらうとして、 ②については「英語圏以外にあって英語で教育をする学校」ということで、だからアメリカやイギリス、オーストラリアなどだと、③も「英語で教育をする学校」であり、非英語圏だと③はドイツならドイツの公立の学校、フランスならばフランスの公立の学校、ということになる。

そりゃ色々ご事情はおありでしょう、会社から出る補助も様々ですからインターに行かすには満額ではない、とかそもそも親が英語できないよ、とか等々。でも、一昔前ならばいざ知らず、この21世紀を生きて行くあなたの子供の教育です。海外赴任になったのを天の啓示と思い、転んでもタダでは起きない、ピンチをチャンスに変える(?)心づもりで、是非インターナショナルスクール、もしくは英語の現地校にお子様を入れてほしいと思います。

日本に帰った時のことが心配ですか?一昔前ならいざ知らず、今は帰国子女を受け入れる門戸は非常に広くなっています。東大にも帰国生枠があるのを知っていますか(但し、これはかなり優秀でないとムリですが)?
それより何より、「英語で教育を受ける」ということは計り知れないくらいの貴重な体験、財産となることは間違いないです。日本では仮に毎日英会話スクールに通ったとしても、1時間レッスンをして外に出ればそこは日本語の世界ですから。
朝から夕方まで先生の指示も友だちとのダベリも食堂のおばちゃんとの会話も全て英語、という経験をさせてください、未来を担うお子様に。親の勝手で海外に連れていくのですから。それと「色んな人種の友だちと机を並べて勉強する」という経験は、身体に染み付きます、どこでどこの国の人と出会っても平気、みたいな。

海外の日本人学校に通うって、日本でフツーの公立校に通うより奇妙です。というのは、親は全員「駐在企業のサラリーマン」。日本だと公立でも私立でも、サラリーマンの子供もいれば自営業の子供もいる、という感じなのに、不自然な均質で、おまけに学校の外も、日本人向けの塾でも習い事でもどこでも同じメンバー、ていう閉ざされた不自然な世界で数年暮らすくらいだったら、寧ろ海外に行かないで日本にいた方が色々有益な経験ができるかも。

アメリカやイギリスだと現地校、というエコノミーで尚かつ有益な選択肢もあるのだけれど、非英語圏でインターナショナルスクールに行かそうと思ったら勿論費用が一つの問題になると思います。でも、以下の理由を噛み締めて是非お子様のために決断してほしいと思います、私見ですが。

・数年間英語で教育を受けることは、子供にとって一生の財産になる
・今はネットがあるので、インターで友だちになった外人の子とずっとその先も繋がっていくことができて、それも財産になる
・駐在は限られた年数であり、学費負担も永遠ではない

費用捻出という点でいうと、海外に駐在するとここぞとばかりに日本人は休みごとに旅行に行きます、それも結構ゴージャスな。それは「二度と来られないかもしれないから海外にいる今のうちに行かねば。」という気持ちからなんでしょうが、その旅行を仕分けしてはどうでしょう?
例えば、中学生や高校生の場合、日本国内でも親と一緒の旅行なんて子供にとっては「ウザイ」以外の何ものでもないと思いますが、海外でもそれは同じ。中学生ともなれば飛行機もホテルも大人料金。それでいて「ウザイ」と思っているヤツらを旅行に連れていくことなんてありません。子供が学校のキャンプとかで不在の時い大人だけで行きましょう。

そういう我が家も苦い思い出が山ほど。
最初は「折角ヨーロッパに来たのだから、世界史の舞台を子供たちに見せてやろう」という大きな勘違いのもと、旅行の計画を立てて連れて行きました。でも、所詮「連れて行ってもらった」ところなんて、子供の記憶には残らないんですよ。自分で「是非行きたい」と思って、バイト代溜めて行った旅行と違って。
ハイデルベルグに連れて行って、夫は子供達に神聖ローマ帝国やらヨーロッパで3番目に古い大学だとかについて熱弁を奮っていたけれど、今子供達が「ハイデルベルグ」というと必ず思い出すのは、拷問道具がこれでもかと並べられていた「中世犯罪博物館」のみ!
イタリアに連れて行った時は、親は嘗て行ったことがあるのにも拘らず(学生時代)フィレンツェはウフィッツィ美術館に子供を連れて行き、ボッティチェリの「春」やらの「ホンモノ」を見せて夫はイタリアルネッサンスについてまたもや熱弁を奮っていたのですが、家に帰ってある時息子に何気なしに、「あの時、ウフィッツィで見た『春』ともう一枚の絵の題名覚えてる?」と聞いたところ、少し考えて彼は「『マリアの誕生』だっけ?」!!!日本でカトリック中高一貫校に通っていたというのに、マリア様があんな格好で海の泡からお生まれになったのではないことくらい理解してほしいし、今度は傍らにいた娘に、「じゃあ、『春』と『ヴィーナスの誕生』を書いた画家の名前覚えてる?」と聞いたところ答えは「ボルネオ」(注:スマトラ島沖地震の直後だったので)。
同じ大金を投じるのなら、旅行でなくて、教育そのものに投じるべきだとシミジミ思いました。

でも、これもその「親の勘違い旅行」の最後の一つでわかったことですが、インターに子供達が入って1年と2ヶ月経った頃、旅行先のザルツブルグで英語のツアーガイドがつく観光バスに乗ったわけです。お客さんは私たちだけがアジア人、後はアメリカ人の中高年観光客だったのですが、そのガイドが博学な上にジョークをしょっちゅう飛ばす(らしい)のです。「らしい」と書いたのは、私も夫も最初は集中して聞いていてもそのうちに疲れてきて彼の英語についていけなくなるし、勿論ジョークに至っては、通路の向こうのアメリカ人のおばちゃんが身体を折り曲げて笑い転げているのに全然わからん!という状態だった時、気がついたらアジア人の子供2名(息子と娘)も同じように笑っているのです!私は元々「英語はサバイバル・オンリー」でドイツ語に捧げている身だったので何とも思いませんでしたが、ドイツに行ってからビジネスは英語という訳で子供達の何倍何倍も努力して常にポッドキャストしたものを聞き英語を読み、と英語を勉強していた夫はかなり落ち込んでいました。事程左様に、子供も英語能力の進歩は素晴らしいのです。

英語圏の現地校ならば、「英語の教育」という点ではインターナショナルスクールと同じだと思いますが、非英語圏の現地校、というのは今度は親の語学力が必要になってくることは確かだと思います。逆で考えてみてください。日本の公立中学校に、日本語が全くできない生徒とその親が入学してきたら、それは大変だと思います(今後日本も多国籍社会になるとそれが普通になっていくとしても)。ただ、例がないわけではありません。ドイツのギムナジウムに行っていて高校の途中で帰国し、センター試験をドイツ語で受けて国立大学の工学部に受かったお子様もいますし、ドイツのギムナジウムを卒業して日本の私立大学の帰国生入試で受験して入学するお子様もいます。ただ、忌々しいかは別にして、英語が世界便宜語のデファクトになっている今、やはり第一外国語としては英語を学んでおいた方が道が広がることは確かだと思います。

 
というのがあくまでも私見ですが(事情は千差万別でしょうから)、勿論日本人学校での日本の教育ではなくインターや現地校を選んだ場合のデメリットについても書いておきましょう。