そろそろIKEAも下層ブランドだと言っておこうか。

「そろそろ○○と言っておこうか」の係り結び第二弾!

去年の夏の暑い盛りのこと。
用事があって、東急東横線田園調布駅で下車しバス乗り場に向かったら・・・。
天下の田園調布のバス乗り場に、ハイソなイメージにそぐわない長蛇の列!
炎天下バスを待ってる???と思ったらそこに現れたのは、青地に黄色でロゴが染め抜かれた幼稚園バス、じゃなくて

IKEAバス!

だった。
何故?田園調布にIKEAバス?何故?と思って帰宅して調べたら、IKEA港北には、新横浜と田園調布から無料シャトルバスが出ているからであった。


日本人は「IKEA」を、「イケア」と発音するけれども、辺境語にして世界便宜語の英語圏だと

「アイケア」

と呼ぶ。本当に英語には困ったもんだ。
ちなみに全然関係ないのだが、「H&M」は日本では英語読みで「エイチアンドエム」というけれども、ドイツだと「ハーエム」(&のウントは抜けている)フランスだと「アッシュエム」(これまた&のエは抜けている)なんだが、いつか気になって本国(H&MIKEAと同じく、スウェーデン発の企業だということは周知のことだが)調べたら、スウェーデン語では「M」は「エム」だが、

「H」は「ホー」と発音するらしい、

とすると、「H&M」は「ホーエム」というのだろうか。原語に忠実に、ということならば、日本でも是非「ホーエム」にしてほしい。私のイメージ的にはその語感がぴったりなんだけど。


さて。
ドイツでまともな家具(ということは勿論IKEAではないということだが)を買おうとすると、きちんとオーダーしてから配達してもらうまでに約8週間つまり2ヶ月かかる。
「その間どうやって暮らす!」と騒ぐようなクラス(階級)の人はIKEAに行け!

(駄洒落ってるわけではないが)ということなのだ。はい、だから「下層」である日本人駐在員はこぞってIKEAに行きます!
我が家にもドイツ滞在中にIKEAで買ったものが未だにそこかしこにいっぱい♡で場所をとっている。
デュッセルドルフIKEAは市の南部にあって、そこの一帯は化学工場があったりする工業地帯。市の中心部から行く場合、アウトバーンに乗っても一般道で行ってもやたら殺風景な道を行くことになるのだが、そこに電車で行くともっとリアルに「下層」を感じることができる。ドイツに上陸してごく初期に「電車・バスを乗り継いでIKEAに行った」極めてレアな日本人であるところの私は、身を以て実感した経験がある。
市の中心部から「HOLDHAUSEN行き」という市電に乗るのだが、乗っているうちにみるみる風景が変わってくる。観光客にお馴染みの市の中心部アルトシュタットやライン川沿いの、いわゆるイメージとしての「ドイツの町」(「中世の香りの残る」とか「おとぎの国の積み木のような建物」とか「大樹の緑の並木」とか)とは全く違う街並がすぐに現れる。変に新しくて薄っぺらい建物とすすけた汚い古い建物が混在し、電車内から見ても舗道が汚いのがわかる、というか。そして地の果て終着駅「HOLDHAUSEN 」に着くと、

「ここは本当にドイツですか?もしかしてどこかアラブの国にワープしてしまったですか?」

という感じで、駅前のカフェでは中近東のように男ばかりが平日の昼間店先のテーブルに所在なげに座り、歩いている女性は頭をスカーフでくるんだ人が殆どで、足元にはゴミが舞い、ふと目をやると角には物乞いの老人まで立っている・・・。しかもここから路線バス(シャトルとかじゃなくて)に乗ってIKEAまで行った私なのだが(たまたま地図と路線図で調べられてしまったのが原因)、その道中がまたひどかった。バスの客層が何と言ったらいいのか、服装といい姿形といいぎゃーぎゃー騒ぐ子供といい剣呑な顔の老人といい臭いといい「異物」である私を見る眼差しといい、

理屈抜きに、「THE 下層」なのである。

バスから見える家並みも、ドイツにしてはかなり小さい家がごちゃごちゃ建ち並び、また普通は見られないことだが、洗濯物が通りからも見えるところに干してある。

※ちなみに、「干してある洗濯物が丸見え」というのは、欧米では「下層」とされている、ナポリの下町とか、東欧の農家とか。最近ニュースで読んだのだが、あのエネルギー浪費大国アメリカのニューハンプシャーで「エコのために、乾燥機で乾かさずに洗濯物はロープに干して乾かそう」という運動を始めた人物がいるそうだが、町の不動産屋や富裕層は、「洗濯物が翻っている街並は資産価値が減る」と反対しているそう。確かに見栄えはよくないけれど、こういう欧米的価値に東洋人の私は、カチンとくることも確か。

つまり。
IKEAってそういう場所にあるらしい。LONDONでもそうだとイギリスの友人が言っていた。勿論車で遠くから来る人もいるのだろうが、決してお金持ちは来ない場所である。IKEAに来るのは、以下のような人々:

家族でぞろぞろレジャーランド代わりに店内を歩いて、安いクッションとかグラスを買って、食堂であのスウェーデン風肉団子にソースがかかった激安のプレートを食べるか、1階レジ外のピクルス&オニオン詰め放題のホットドッグを立ち食べ、外のミニ遊園地でタダで子供を遊ばせて帰る、

みたいな層である。そういう層が家具を買う必要に迫られた時、IKEAはお手軽に(8週間待たなくても)極めて安価に家具を提供してくれる、但し

すぐにガタがくるのも有名

だが。

だから、日本で雑誌やブログで「ハイソな若マダム(全て自称だが)」IKEAはお洒落な北欧家具」とかIKEAで家具を統一したお洒落な部屋」とか書いているのを見ると、

滑稽でちゃんちゃらおかしい!

どうぞドイツはデュッセルドルフ中央駅から「HOLDHAUSEN行き」の電車に乗ってIKEA行ってみてください。ロンドンもお勧めです。ドイツ人、好きでIKEAの家具買っている人はいません、立派な家具を買いたくてもお金がなくて買えない人だけです。大体北欧はヨーロッパ文明の本流ではないですからね。北欧家具を有り難がって揃える本流欧州人はいないと思いますよ。

「ちゃんちゃらおかしい!」と嗤っているのを通り越すと、やがて「北欧家具だから」と飛びついている同朋日本人のことが哀しくなってくる。無知で無恥なのは、半分は彼女達「ハイソな若マダム」のせいではない。日本では、「住まい」に関する教育が全くされていないのだから。今を遡ること15年前、家を建てようと思った時に私は、自分が建築に関して、例えば和室に限らず(というか和室が一番難度高い)洋室にしても全く用語を知らないことに気がつき愕然とした。家具にしたってそうだ。洋家具の様式(○○様式とか年代とか背景とか)だってちんぷんかんぷんだし、和家具に至ってはそもそもどういう種類があるかもわからないし、インテリア的な約束事があるにしてもそれを全く知らないし人生において誰も教えてくれなかったし学ぶ機会もなかったしそもそも親の世代も無知であると思うし。だから結果として、頓珍漢なインテリアになってしまうのだろう、日本の家はどこの家も。インテリア的見地から見ると、日本人て私も含めて「下層」そのもの。教育が貧しいということはこういうことかも。

・・・ん?わかった!

だから日本ではIKEAがウケるんだ!

何も私が「IKEAはお洒落でもなんでもなくて、下層向きなんですよ。」と世に警鐘を鳴らすこともなかったか。



蛇足
私も港北イケアに行ったことがあるが、店舗の作りが「日本向けにカスタマイズ」されずにドイツで行っていたイケアとそっくり同じで感動した。けれども、行ったことがある人ならわかると思うけど、あの巨大な商品棚(家具の部材が倉庫のような中に膨大な量陳列されていて、客はセルフサービスで買いたい家具の部材を取り出す仕組み)をドイツのイケアで見た時、「これは地震がない国だからできること。日本なら絶対にムリよね。」と思ったのだが、名うての地震国日本のイケアでも全く同じように、天井まで重たい部材が積まれていた。あそこにいる時に地震が起こったら、間違いなく死ぬだろう。ああ、

IKEAで安物の家具の下敷きになって死ぬ

のだけは避けたいもんだ。