なでしこジャパンがエコノミークラスでオリンピックに向かったことについて書いたエントリーに追記

前に書いたエントリー
なでしこジャパンがエコノミークラスでオリンピックに向かったのは良かったのかもしれないと思うことなど
に追記


上記のエントリーを読んで頂ければわかるように、サッカーに限らずオリンピック出場選手には、
人気競技であるか否か、メダルの可能性がるか否か、には全く関係なく、皆等しく「エコノミークラス」のチケット
が支給されるそうです。
またJFAは1996年に「男子はビジネスクラス、女子はエコノミークラス」と「規則」で決めているそうです。
ですから、なでしこたちがJFAのアップグレードによって「プレミアムエコノミー」で旅立ったことは、「規則」に順当に則っており、他の競技のオリンピック選手と比べれば、「プレミアムエコノミー」であるだけ寧ろ「恵まれた」ことだったのだと思います。

しかし。
ここからは、JFAの不手際」の一言に尽きますが、その一つ目。

・何故、同じ飛行機で行かせるようなセンスの無さだったのか?
男子はJFAの「規則」で「ビジネスクラス」と決まっているのですから、違う飛行機で行けば、ここまで言われることはなかったと思います。「規則」なんですから、大手を振って違う飛行機の「ビジネスクラス」で行けばよかったんです。
「規則」通りに「ビジネスクラス」で旅立ったU23の男子チームをも、この騒動に巻き込んでしまった責任はJFAにあります、前掲のエントリーでも書きましたが、U23の選手たちに欧米メディア相手の追及を「大人の対応」でかわす、ということは要求できませんよ、まだまだ人生の経験不足でできないでしょうからね。「男子はビジネスクラス、女子はエコノミークラス」という「規則」をあくまでも守るというのなら、JFAが「違う飛行機を手配する」くらいの配慮しても当然ではないでしょうか?
しかも行き先は海千山千の欧米メディアが待ち構えている地です、JFAのマネジメントが甘かったとしか言えません。「日本は男尊女卑」とか欧米メディアに言わせる隙を与えてはいけなかったのです。「なでしこ嫌いの、男子サッカーファン」は、今回の問題でもそれこそ欧米メディアが喜んで取り上げそうな酷い性差別的な書き込みをネットでしていますが(日本語がマイナーな言語で本当に良かったです)、本当に男子サッカーを応援しているのなら、マンUに行った香川や、アーセナルの宮市を応援しているのなら、彼らのためにもそのような言動は慎んでほしいものです。何故なら今回の「日本の男性は男尊女卑」と突っ込まれた不手際によって、一番被害を蒙るのは香川をはじめ欧米でプレーしている日本人選手になるのではないですか?同じく、仕事で欧米に駐在していたり留学しているニッポン男児もまた同じレッテルを貼られてしまうのですから、「なでしこ嫌いの、男子サッカーファン」もそこのところをよ〜く考えてほしいものです。



そして、JFAの二つ目の不手際。


・1996年当時の女子の成績とは違い、昨年優勝したばかりのなでしこチームに配慮を何故しなかったのか?
1996年に「男子はビジネスクラス、女子はエコノミークラス」とJFAが「規則」を決めた時は、「男尊女卑」という話題には全くならなかった訳です。フェミニストもそうでない人も「女子サッカー」に関心がなかったからです。それは女子チームが弱かったからで、去年の女子W杯準々決勝のドイツ戦からなでしこファンになった私なども同様です。ですから、もし今回も女子の実力が、1996年当時と同様(アトランタオリンピック、グループリーグ敗退)であったのなら、これだけの議論が巻き起こっていたかどうか?全ては昨年のW杯ドイツ大会でなでしこジャパンが優勝したから、なんですよ。実は私とて、去年までは女子サッカーには何の関心もなく、それどころか「何故女子がサッカー?」と思っていたくらいです。そんな私でさえも、昨年のなでしこジャパンの振る舞いには、涙が出るほど感動してしまったのです。特に決勝のアメリカ戦。アメリカが二度までも先制して、応援すべき側である私の方が、「もうだめだ。」「もうここで点を入れらちゃったからこれで終わり。」「残り時間が少ないのに逆転できるわけがない」と諦めかけているのを、なでしこチームは全て見事に裏切って、「最後まで諦めない」ことの稀有な見本を見せてくれたのです。私と同じくサッカーのルールなど知らない、女子サッカーなど関心がない、多くの人が、私と同じ感動を味わったのではないでしょうか、しかもそれは震災後僅か数ヶ月だったのですから。
日本の様々な人が感動し思いを託した「W杯チャンピオン」の彼女たちに、何故JFAは早々に「規則」を変えて、男子と同じ「ビジネスクラス」を提供しなかったのか?
そこですね、問題は。サッカーに関わる人間としてJFAは、「W杯チャンピオン」に対する尊敬の気持ちがないのでしょうか?いえ、「W杯チャンピオン」は勿論尊敬の念どころか喉から手が出るほど望んでいるタイトル(ヨーロッパ大陸南アメリカ大陸が地球上にある限りそれは限りなく無理だと思いますが)の筈ですが、「女子W杯」には尊敬の念がないのでは?・・・と思われても仕方ありませんね。
欧米の報道(CNN、BBCNBC)も見てみましたが、私が読んだ限りでは、同じく槍玉に挙げられているオーストラリアのバスケットチームと同様、「男女同じくらいの成績を上げているのに、飛行機の座席差別はおかしい」という論調であり、日本に関しては必ず「昨年のW杯チャンピオンの」という枕詞が付いている「日本女子チーム」が「U23の男子がビジネスクラスに乗っている同じ飛行機で、エコノミークラスの待遇だった」と書いていることから、彼らが批判しているのは単純な男女差別ではなく、「W杯チャンピオン」であるチームに対する尊敬がない、ということなのではないかと思います。
「女子はエコノミークラス」というのが、女子の成績がぱっとしなかった1996年に決まった「規則」だったのならば、昨年女子W杯の後にでもすぐにその「規則」自体を変えておくべきだったのでした、もう今更ですけど。
(でも、今調べてみたら中田や前園が出ていて「ブラジルを破った」1996年のアトランタ・オリンピックは、U23男子チームも女子チームと同様グループリーグ敗退、だったんですよね。それなのに「男子はビジネスクラス、女子はエコノミークラス」と決めた規則こそが「男女差別」・・・と欧米のメディアに叩かれないように、JFA事務局は早急に手を打たねば!)


繰り返しますが、全てはJFAの不手際によって、
U23の男子チームには何の落ち度もないのに「SAWAをはじめ、W杯チャンピオンであり、自分たちよりもseniorの女子チームがエコノミークラスに乗っているを尻目にビジネスに乗ってきた、ナイーブ(英語では良い意味では使われません)な奴ら」と看做され、
欧米で活躍する日本人サッカー選手及び他の競技の日本人アスリートにも、「あの男女差別の日本人」という無用のレッテルを許し、
欧米駐在の日本人男性は、「君はビジネスクラスで、奥さんはエコノミー?」とジョークに見せかけて絶対に現地人から絡まれそうですし、
捕鯨と同様、彼ら欧米人の固定観念を無駄に増長させてしまった、ということです。
彼らに「いやいや、今の日本では、若い男性は草食系と言われていて、女性の方が肉食なんですよ。」と言っても、それは彼らが欲しい「イメージ」ではないので、一度貼られてしまった「日本人は男尊女卑」とレッテルを払拭するには、何倍もの時間と努力が必要になるんですが。


更に、今回の一件をもっと簡単な一言で言うと、

JFAが、ケチだった

これに尽きますね。
W杯チャンピオンである女子チームを「規則」の「エコノミークラス」から「プレミアムエコノミークラス」にアップグレードするくらいだったら、さっさと男子と一緒の「ビジネスクラス」にアップグレードしていればよかったんですよ。
男女別の飛行機を手配する気も利かず、報道陣が殺到する往路の飛行機くらい素早く男女一緒にアップグレードする才覚もなく、
ところで、火消しのコメント(これは文面に細心の注意を払ってほしいものです)は出したのでしょうか、JFAは。

それから、
「女子の強化費は、今までもずっと男子のスポンサー料から出ていた。だから、日本女子チームは有り難いと思うべきである。男子がビジネスクラスで、女子がプレミアム・エコノミークラスで当然。」
という指摘もありますが、JFAに入るお金はスポンサー料だけではないので、お金に色が付いていない以上、男子のスポンサー料から女子サッカーに強化費が払われたとは言えませんし、JFA(これは男子サッカーのみの協会ではありませんよね)女子サッカーに資金を投入したのは、女子サッカーのためだけでもなく、男子から女子への有り難いお恵みでもなかったんじゃないでしょうか?
日本における野球の人気が衰退傾向で、「大きくなったら何になりたい」という問いに対する子供達の答が、「野球選手」ではなく「サッカー選手」になったのは、サッカーの裾野が広がったからでしょう。去年のなでしこブーム以来、女の子でも「サッカー選手」と答える子が出てくる一方、女の子で「野球選手」とは答える子はいないでしょう。昔は、サッカーも野球と同じく女の子には無縁のスポーツでした。自分たちがプレイしないと、ルールもよくわかりません(私は野球ファンですが、例えば我が娘は野球のルールはてんでわかっていません。今普通の女の子はそんなものです。)。ですから、JFA女子サッカーに投資したのは、興行的な観点(女子サッカーがメジャーになれば、収入源になる)と、将来にわたってのサッカー全体を考えてのことだったのでは? とすると、この点に関しては、JFAの投資は大成功を収めているのです。過去優勝経験がある日本で「女子W杯」を開くのも夢ではないでしょう。そのことによって得られる莫大な収益で、JFAはサッカーの裾野を更に広げることもできるでしょう、その時なでしこファンは、「女子が稼いだお金だから女子サッカー育成のみに使うべき」なんて狭い了見は持たないと思いますよ。



ネットを見ていると、「なでしこ同情派」とそれに反発する「男子サッカーファン」が、大昔の小学校の反省会(「終わりの会」とか)を彷彿させてしまう如く「男子が悪いと思いますっ」「女子の方がズルいと思いますっ」と言い合っているようですが、今回の問題は、日本のサムライ「男子」が、JFAの不手際によって不当に且つ無駄に「男女差別」のレッテルを貼られた訳で、ですから真の「サムライブルー」のファンならば、お門違いに「女子」を罵っている場合ではなく、抗議すべき相手はJFAであり、そうして抗議する時には「女子」と一緒に抗議すべきではないか、それならば欧米メディアも文句はつけられまい、と思ったので追記を書かせて頂きました。