*ドイツ人はデカい ② ドイツのお巡りさん

デカいドイツ人、
と言えば思い浮かぶのがドイツのお巡りさん。
全員がデカいわけではなく、小柄のくせして容赦ない酷薄な婦人警官とか、腹回りだけが日本人のメタボ感覚を見事に打ち破るサイズのおじさん警官も勿論いるが、白バイに乗っているお巡りさんはカラダ全体がデカい!

しかもドイツの白バイお巡りさんの制服は、緑のつなぎ。そう、殆ど仮面ライダー、但しデカい仮面ライダー
こういうデカい白バイ警官がデモ隊を規制するために横一列に並んでいたりするとそりゃ迫力がある。


私はデュッセルドルフ市内で、「ウォーターフロント*1と呼ばれている地域

を初めて運転中に、後ろからまさかのサイレン。
サイドミラーを見るとそこには巨大な殿様バッタ!

じゃなくてドイツのお巡りさんであった。左端と右端にそれぞれ1車線の左折右折車線がある合計5車線のど真ん中の車線で私はお巡りさんに停車を命じられた。バックミラーで後ろをコワいもの見たさに見てみると、私の車線ぷらす両隣の車線の車が全部停車していて、殆ど卒倒しそうだ。
心当たりはあった、すぐ前の分岐点で、右折のウィンカーを出して右折車線にいながら、直前に間違えたことに気がついて直進したのだ、でも誰にも迷惑かけていないと思われ・・・。
運転席の窓を下ろすと、巨大な殿様バッタくんこと緑の皮のツナギを着たお巡りさんが、もの凄い早口でまくしたてる。勿論ドイツ語だけれども、この早口だと私のヒアリング力では基本単語が拾えるのみ、ていうかヒアリングはハナから放棄して聞きとるよりも、無駄とはわかっていても言い訳の文章を頭の中で組み立てる方に必死で、とにかく
「黙っていると馬鹿と思われるので何でもいいから相手に負けずに喋る」
というドイツにおける鉄則を守るべく、「私は常に安全に運転する。何故ならそれはとても重要だからだ。私はBilk地区に行きたい。私にとってここを運転するのは初めてである。だから私はとても用心して運転する。usw」
 (※「etc=エトセトラ」はフランス語、ドイツ語では「usw=ウントゾーヴァイター」という。)
と、大和撫子の私的にはかなり虚勢を張って喋っていたら・・・
「あなたは日本人か?」と私の素敵なドイツ語を遮って殿様バッタくんが質問。「Ja! Natuich! 」(「Ja」だけじゃ淋しいし)と答えると、いきなり明るい声で、
「Richtig Fahren!」
と言って、私の車を先に発進させるべく、この間ずっと辛抱強く停車して待っている後続の車(それも3車線分!)を押しとどめているのだ!
「Richtig Fahren」とは、「正しい運転」≒「安全運転」と言う意味だと思うけれども、あれは何だったんだろう?


そして「デカいドイツ人」繋がりとこの「Richtig Fahren」繋がりで思い出すことがもう一つある。
或る日の夕方、今度は一車線で両側が並木になった道、毎日のように走る道を運転していた。途中、別に無くてもいいようなところに信号があり、赤だったのでトーゼン「Richtig Fahren」する私は停車していた。すると左ハンドルの左ドアミラーに怪しい影!後ろの車から、オジサン、それも巨大なオジサンが運転席から降りて、前に停まっている私の車の方に歩いてくるではないか!ハリーポッターハグリッドの実物版

っていう感じの、大きな塊が近づいてくる。「まさか、私の方に向かってきているはずがない!私の車に来ませんように!」と必死でお祈りしたのにも拘らず、そのハグリッドは私の運転席側の窓から覗きこみ、窓を下ろすように手真似するのだ!すわっ!もしかして強盗!?絶体絶命の危機!そのまま走り出してしまおうか!?とも考えたが、一応赤信号だし、ハグリッドから逃げ切れるはずもないので、一瞬にして諦念の境地に至った私が観念して窓を下ろすと、窓ガラスが下がるのと同時にその太い幹のような腕が車に入ってきて、車のライト点灯のボタンを押したのだった!つまりこのハグリッドは、わざわざ車から降りて私の車のライトを点けに来たのだ!そして満足そうに立ち去る時に残した台詞が、
「Richtig Fahren!」
もうとっくに青信号になっていたが、彼の車の後ろには又しても何台もの車がクラクションも鳴らさずに*2辛抱強く待っているのが見えたのだった。まだそんなに暗くはなってなかったと思うのだけれども、ハグリットは看過できなかったんであろうか。後で思い返してみるに、あのお節介ぶりと、捨て台詞と、カラダの巨大さを思うと、もしかして、「非番中のお巡りさん」か「巨大になりすぎて仮面ライダーの制服が着られなくなった元お巡りさん」のどちらか、否、絶対に後者だと思うのだけれども、真相は今もって謎である。


渡独してまだ日が浅い頃に偶然でくわした、婦人警官もまたスゴかった。或る日フツーに舗道を歩いていたら、けたたましいサイレンの音と共にいきなり目の前に緑のパトカーが止まり、中から走り出て来たのが、ピストルを両手に構えた婦人警官!キャー!目の前数メートルのところを彼女は、まるで映画のシーンのように(としか感じられない平和ボケの国から来た私)辺りを鋭く警戒しながら、もう一人の年配のおじさん警官と建物のドアに張り付いていて中を窺っている。その婦人警官と言ったら、「アマゾネス」と振り仮名を振りたい「女戦士」で、その迫力といったらそれはスゴい。

身長は180cm近くありそうで、こんな婦人警官に追いかけられたら、すぐに降参!しかない。さすがに犯人追跡中(?)の彼女からは「Richtig Fahren!」の一言はなかったけれど。


デカいドイツ人、お巡りさんシリーズでした!

*1:「ウォーター」と言っても海、ではなくて、ライン川なのだが。

*2:ドイツ人は車にクラクションが付いていないのかと思うくらい殆どクラクションを鳴らさない