* 追加 日本人学校に行かないデメリット 高校入試で帰国受験する場合  

日本人学校に行かない場合のデメリット、に追加

実際的な問題として、高校の帰国入試の場合、受験資格として、「海外滞在・就学年数」(これは学校によって違う)と共に、以下のような条件を課す学校がある。
例えば、今年の帰国受験であるならば、


2009年4月以降、2010年3月末までに、学校教育における9年の課程を修了または修了見込みの者。


という資格を求められる。海外の日本人学校に通っている場合は、何の問題もない。大抵の日本人学校は日本に帰国しての高校受験を見越して、1月早々に卒業式をするところあり、また3月に卒業式があるところであっても、とにかく「日本の9年の義務教育課程を」「修了または修了見込み」することは確かで、問題はない。

問題が出てくるのは次のようなケース(ウチの娘もそうだったのだが)である。
例えば今日本人学校で(ということは日本の中学においても)「中学2年」の生徒がいるとしよう。ところが、この生徒がインターナショナルスクールかアメリカンスクールにいたとしたら、在籍学年には2つの可能性がある。8年生にいる場合もあれば、9年生にいる場合もある。
こういうことがどうして起こるか、というと欧米の学校は8月もしくは9月から始まることが大もとの理由だけど、更に学校によって学年を区切る月がまちまちであることが原因である。そして、また海外の学校の場合、どちらの学年に入れるか、は親の判断に任されている場合も多いので、子供によって変わってくるのである。

今欧米のシステムの学校で「9年生」にいる生徒は問題ない。何故ならば、今年の6月には現地の学校で「卒業」するので、十分受験の資格を満たすから。
問題は、運命の巡り合わせで今現在「8年生」にいる生徒である。この場合、来年の3月末までに「9年の課程」を修了できない、「卒業」は来年の6月だから。
これは不公平な話である。子供本人のせいでなく、たまたま生まれた月、たまたま現地の学校が決めた学年を区切る月、のせいで、受験資格を得られないことになるのだから。

これを回避するには、幾つかの方法がある。
①ぎりぎりのところで、日本人学校に転校する。但し日本人学校の中には、「中三の9月以降の転入は認めない」としているところもある。
②ぎりぎりのところで、日本に帰国してどこでもいいから住民票を入れて、義務教育であるところの公立中学校に編入する。これは絶対確実だけれども、祖父母の家であれどこであれ足場が必要。しかも編入しただけで「幽霊生徒」でいるわけにもいかず、短期間であっても制服を揃え、実際に学校に行かねばならなくなる。これは当事者の子供には結構なストレスである。
③そもそも海外の学校に入れる時に、たとえ学年を区切る月では該当しなくても「親の意志」を強く学校側に訴えて予め学年を上げておく。

実際のところ、どれも親が考える「机上の空論」なのである。難しい年頃、しかも受験を控えた中学3年生の時期に、現地の日本人学校であれ、日本の公立中学校であれ、落下傘のように(それも受験が目的で)編入する、ということは、子供にとっては、「愛と誠」*1の花園高校、もしくは、「クローズ」*2の鈴蘭高校、に放り込まれたくらいの、キョーフではないかと思う。
また、「最初から学年を上げる」、もしくはそれのバリエーションとして、「途中で飛び級する」(海外の学校では可能)、という方法も色々と問題がある。何せ英語で授業が行われているわけだから、学年が一つ違うとかなり英語のレベルが上がる。それに追いつくまでには更に時間がかかる。しかも英語で行われる様々な授業で良い成績をとるには更に時間がかかる。帰国入試では「現地の学校での成績」も大事なので、闇雲に「学年を上げる」ことは得策ではない。


私は娘の帰国受験を考えるようになってようやくこの問題に突き当たり、ネットで調べて大慌てになった。この「資格」のせいで、娘が受験したいと思っている学校が受験できないことになれば、親として申し訳ないのを通り越して、海外にまで連れて行った責任がとれないと思った。そこで受験しようと思っている学校数校にメールを出して、この理不尽に思われる「資格」についてお尋ねをした。
「生徒自身にはどうにもならない現地校のシステムによって、現在の学年が違うだけである。当人は親の仕事で海外に行くことになってその慣れない環境の中で一生懸命頑張ってきたことは、たまたま学年が一つ上になってしまった、日本においては同級生である他の受験生と同じである。どうか変更をご検討頂けないか」
という内容で。
実はそれによってかどうかは知らないが(このテーマはずっと「帰国受験界」においてホットだったらしいので)、或る学校は娘が受験する年からその縛りを外してくださった。また、或る学校は、
「これが正式なお答えとは思わないで頂きたいのですが、我が校に帰国入試で合格なさってから、日本の中学に「9年の課程を修了」の資格を得るために編入される方もそこそこいらっしゃいますから。」
裏技(?)を教えてくださった。はっきり言って、これもどうかと思うけど。


以上のことは、日本人学校に行かなかった場合のデメリット、というよりも寧ろ、帰国受験は行き当たりばったりでは駄目である、ということかもしれない。日本にいて受験するフツーの高校受験と違って、これは海外赴任に子供を帯同した親の責任として、常に情報収集を怠らないことが大事である。

*1:

*2: