「共学」がいいのか「男子校/女子校」がいいのか?試行錯誤の果て、結果オーライの体験談 ①男子校 息子の場合

息子は、中学受験して中高一貫の男子校に通った。

・・・というと、一見日頃の私の主張と異なるように映るかもしれませんが、辛抱強く最後まで読んで頂きたい(長文注意!)ところです。実際に通わせたから解ることもありますから。しかし、子育てはやり直しはききません、せめて我が家の「試行錯誤」という名の、出たとこ勝負、結果オーライの経験を参考にしてくださる人が一人でもいればいい、と思って書きます。
生まれた時から「超」がつくほど個性的だった息子は、拙ブログ(夏休みに考える、「中学受験」させるべきか、否か?)でいうと、間違いなく「公立中学が辛い子」になりそうなフラグが既に小学校中学年から以下のように立ちまくっていました。


・理屈っぽい癖して、精神的には幼いので、女子のからかいの種になる
・3歳からのプラレールに始まった鉄道趣味、ゲーム命、歴史特に三国志オタク、パソコンの前に座ると俗世に帰ってくるのに時間がかかる、というオタク路線まっしぐら
・運動という運動は、からっきしダメ
・要領が悪く、彼の良いところを先生に理解して貰うのには時間がかかるし、そもそも理解してはくれない先生もいる

しかも住んでいる神奈川県は、悪名高い神奈川方式の名残で高校入試は「内申重視」。仮に中学受験しなくても、要理が悪くて何事も「満遍なく」ということが苦手な彼にとっては、高校受験の方がハードルが高いかもしれない、ということもあり、そして色々、本当に色々あって(この間の苦労話は省きますが)、何とか、中高一貫の男子校に息子は入学したのでした。ちなみに彼が最終的に行きたいと決めた学校選びの決め手は、「鉄道研究部」。確かに、公立中学ではこんなオタク部活はありませんから、私立に行った意味もあるかと思います。

さて。
実際に息子を中高一貫の男子校に通わせて保護者として感じたのは・・・。
確かに息子と同じような趣味、傾向を持つ子が沢山いました。何とその学校では、文化系の部活の中で例の「鉄道研究部」というのは、人気の部活なのでした。共学では考えられないと思います。それは何故でしょうか?僅か10年くらい前のことですが、当時でもまだ「鉄道趣味」というのは、「てっちゃん」と呼ばれて「オタク」として揶揄の対象でした。よく「共学では女子が男子の目を意識して萎縮する」と言う人がいますが、共学では男子も女子の目を意識して「オタク趣味」をおおっぴらには出せないのではないでしょうか?それが男子校ならできるのです。つまり
女子の目を気にすることなくのびのびと行動できる
というのが、男子校のメリットということもあるのですよ。普通言われるのは、女子が「男子の目を気にせずのびのびと行動できる」ということなのですが、逆もまた真なり。そして女子の目がないからこそ、例えばクラスで休み時間、サッカー部や野球部などにいながら実は「鉄道も大好き」という生徒とも、鉄道知識で盛り上がる時には一緒に話ができる、というのですね。体育会系であってもそうでなくても、それぞれの話題や趣味によってまた別の友達関係が男子校にはあるようです。文化祭の準備などでも、男子校には男子校にしかない爆発力があります、もっとも当日は校内至るところで文化祭に訪れた他校の女子を「ナンパ」する光景が見られるのですけど。そして「6年」という中高の期間を一緒に過ごすというのは、公立中→公立高校では得られない一体感が経験できるということも事実だとは思います。軍隊や、野球やサッカーなどチームで行うスポーツだけでなく、男だけの職場などで醸し出される、「男の集団だけの一体感」というのでしょうか。
一方で、先生方も全て男性で、校内で「若い女性」と言えば事務室の事務員さんだけ、という環境は如何なものか?と私は思いましたが、先生方も大方の保護者の方も寧ろそれを良しとされていましたね。
小学校の時の経験から「女子なんていない方がいい」と言っていた「オタク」寄りの息子には又とない快適な環境で、のびのびと楽しい学園生活を送っていたと思います(除く、勉強。←これは別の話)。ただ、その男子校には、スポーツも万能で、人柄もよく、人望もあって、(最後になってしまいましたが)イケメン(この言葉はキライです)、という男子も沢山いました。小学校の時も児童会長していて同時にスポーツでも県大会で入賞するレベルの実力がある子とか、絵に描いたようなデキスギくんもかなりいました。そしてその中には6年後に現役で東大だの国立医学部だのに合格して行く子もいたのですが、彼らを前にしてその時も私の頭をよぎったのは、
「この中高一貫男子校に来なくても彼らは公立中学でもどこでもやっていけたんじゃないのか?公立高校に行っていたら生徒会長で運動部キャプテンで女子にモテまくり、というキラキラした青春で彼にとっては男子校生活よりずっと楽しかったのでは?」
という余計なお世話的考えでした。しかし、振り返って我が息子に関しては、迷いもなく、
「ああ、やっぱり息子には男子校を選んで正解だった。」
と思っていました、中三でドイツに転勤になってインターナショナルスクール(勿論共学!)に行かせるまでは。


一足先にドイツに赴任してインターナショナルスクールへの入学手続きに行った夫は、すぐに電話してきて、
「インターの校長室の入り口のソファで待たされている時に、大勢の生徒が目の前を通って行ったんだけど、ガイジンの女子生徒なんて、タンクトップで肌もあらわでスゴい迫力なんだけど、◯◯(息子)は大丈夫かね。」
と言うのです、何が「大丈夫」なんでしょう、大丈夫じゃないのは夫の方じゃないかと思いましたけどね。
実際に私も渡独してインターに行ってみてびっくりしましたよ。ガイジンのティーンエイジャーの中でも、多分ハイスクール生と見られる女の子たちって、まさに「ビバヒル*1。いや、テレビドラマの小綺麗な女の子たちと違って、ドイツ仕様(?)の迫力ある女子高生たちを見てびっくり。先ず、タンクトップであれTシャツであれ、胸は強調。まあ、胸のあたりの骨格が日本人と違うので不思議にいやらしい感じはしなくて感じるのは「迫力」だけですけど。おまけに「臍だし」というか皆そろいも揃ってTシャツの丈が短めなので、お臍は見えます。


そして2004年頃流行っていたのが「セレブパンツ」という、ローライズのスエットパンツ。椅子に腰掛けたら明らかにお尻が見える、というヤツ。


履いている女の子の数は少なかったですけど、私でもびっくりどきどきしました、モロにお尻が見えるのですから。
それだけではありません。さすがにミドルスクール生ではなくハイスクール生だと思いますが、女の子と男の子がハグしているのなんて至るところに分布しており、食堂(先生も父兄も出入りする)でかなり熱心なキスをなさっているカップも散見される、という、多分カトリックの男子校に通っていた息子にとっては「ソドムとゴモラのような光景ではなかったでしょうか。閉ざされた花園のような日本の男子校からいきなりそんな環境のところに入れられた息子はどうなったか・・・。
最初の頃は、ずっと「女子ウザイ!」と毎日言いまくっていました。丁度同じ時期にインターナショナルスクールに入った日本人の女の子に授業中にからかわれて、お互いに筆箱で殴り合う(!!お恥ずかしい)喧嘩をして、ガイジンの先生に呼び出されたこともありました。ところが「女子ウザイ!」の息子が環境に順応するのは意外にも早く、私が密かにインターに放った隠密こと3歳年下の娘によると、
「おにいちゃん、最近いつも女の子と歩いているよ。」
という報告も入ってくるようになり、時折学校に私が行った時に偶然に食堂で垣間みることがあったりすると、息子はタンクトップでセレブパンツ姿のガイジンの女の子とと同じテーブルでランチを食べていたり(注:たまたま相席になっただけのこと、なのですが)、という嘗ての日本の男子校のクラスメートが見たら鼻血を出しそうな環境なのです。またボランティアのグループでアフリカに行って帰って来た時、一緒に行った生徒たちは空港で男女関係なくお互いにハグして別れを惜しんでいたのですが、息子はどうするのだろうと思いきや、ちゃんと一人残らず女の子たちともハグしていましたね。夫が言いました、
「◯◯(息子)は、少なくとも日本に帰っても少々の刺激では痴漢もセクハラもしないと思う。」
何なんですか!心配なのは夫です。

思春期の男女をお互いに隔離してそれぞれが別に育つ「別学」よりも、一緒に育つ「共学」の方が自然でいいものなのではないか、とその時初めて思いました。
息子が「ウザイ」女子がいる環境で楽しく過ごせたのは、一つにはインターナショナルスクールが日本の公立中学と違って、体育や音楽や美術などの科目がゆる〜く設定されていたからだと思います。体育は、各自Tシャツを短パンなど運動ができる格好でフィールドなりジムなりに出て行けば「出席」。内容は殆ど球技。整列することもなく、晒しもののように一人一人何かやらされることもない。音楽と美術は選択。同じく一人一人が皆の前で行うリコーダーテストもなければ、歌のテストもない。そりゃそういうことは、運動も万能、音楽や美術の才もある子どもにとっては、何でもないことでしょうが、そうでない子にとっては特にこの年頃、「恥をかく」ことがどんなにストレスになるか、またその結果学校が楽しくない、辛い場所になるか、ということは、そういうタイプのお子さんを持っている親ならばわかるでしょうけど。息子を中学受験させようか迷っていた時に、地元校区の公立中学校に行ってみた時のことを思い出します。公立中学校にありがちな殺風景な校舎に殺風景な白っぽい運動場。隠れる場所もないその運動場で体育の授業が行われていて、囚人の昼休みのように皆同じく揃いの体操服(公立の学校なのに、ユニクロで580円でTシャツ買えるこの時代、何ゆえ卒業したり転校したら潰しがきかない上にダサイくて値段だけが高いジャージを買わされるのか?)を着た生徒たちが一応男女に別れて走り幅跳び走り高跳びをやっていたのですけれども、誰が超絶に上手くて誰が無様か、一目瞭然。我が息子に似た男子が息子と同じくすごく不器用に走っていたのを見て、息子の「私立受験」の意志が最終的に固まったともいえる私だったのですけれども、そういうことがなければ、公立中学校も十分選択肢に入ったかもしれないと、インターナショナルスクールに入ってから逆に思わされました。また女の子でもその年頃の子は色々気にすることも多いと思いますが、少し太めの子にとって、揃いの体操服を着せられての保護者もいる衆人環視の運動会、など拷問以外の何者でもないと思いますね。外人の女の子は、外見を気にしていることにかけては日本人以上だと思いますけど、彼女たちは揃いの体操服を着せられることもなく、晒しものになることもなく、中高時代を過ごしていけるのだと思いました。楽しい中高時代って人生において大事なことだと思います。


そして、「共学」という字の如く男子と女子が「共に学ぶ」ことは、「別学だと勉強に集中できて成績が上がる」という語るもさもしいことよりも、長い目で見ても大事なことなのではないでしょうか?
今頃の子どもたちは、小学校4年生頃から男子と女子がお互いを意識するようになって、それで逆にクラスの中でも男女の対立という構図が生まれ、お互い意識したり照れくさいこともあって喧嘩腰に話をする雰囲気のまま大体小学校が終わると思うのですね。中学受験をして中高一貫の男子校へ行ってしまえば次に女子と机を並べるのは大学(除く塾や予備校)です。公立の共学に行けば、小学校以来続いていた男女の対立も中学3年生くらいには落ち着いてきて、高校では意外に男女で普通に話が出来たりするのですが、それは中高一貫の男子校では勿論望めません。その間の異性(この場合は女子ですが)が、何を考えどう振る舞うのか、全く知らないまま過ごす、というのは如何なものなのでしょうか?男子と女子がお互いの力を認め合える最適の場所は「合コン」ではなく「学校」です。昔のように社会全体が男性主体で動いており、社会人になった時の職場も男性だけ、上司も部下も男性だけ、という時代ならば、男子校でも問題なかったかもしれません。けれども、今や部下のみならず女性の上司に仕える場合も多々ある時代に、男子校で中高を送ることが、たとえ我が家の息子のように、「男子校がパラダイス」のような男子にとっても、果たしていいことなのかどうか?
保護者の皆様、ご子息が難関の中高一貫男子校に通って見事難関大学に入ったものの、女の子と付き合う、というか友達として関わった事すらなくて、いきなり「合コン」でビッチ女子大生に絡めとられちゃったらどうしますか?また、ご子息が将来女性の上司の元で働くことも多々あると思いますが、女性にリーダーシップを委ね尚且つ自分よりも能力的に高い女性と共に作業することを実際に経験してこなかった男子校出身の男性は、その環境に即座に適応できると思いますか?
花園のように快適な男子校から、インターナショナルスクールという共学のジャングルに放り込まれた息子ですが、「学力」という点でも、自分が自信を持っていた唯一の学科Mathで、ルーマニア人の女の子に徹底的に負かされたり、語学の天才(中国人とスェーデン人のハーフで、中、英、瑞、独、仏語が堪能)が女の子だったり、とそういう才女たちをリアルで知っている息子は、女子の学力・能力・リーダーシップに関して、全くジェンダー・バイアスがかかっていません。それは母としてとても嬉しいことです。教育って偉大です。「男子校に入れておけば、お勉強が大事な時期に変な虫がつかないわ。」と安心していてはいけない時代なのですよ(これは女子校についても言えますが)。それについては更に付け加えさせて頂ければ・・・。

中高一貫の男子校は当然のことながら6年です。一昔前ならばいざ知らずこれは今の時代、少々長過ぎる気がするのです、今となって見ると。
中学生の間はまだ男子校でいいと思います。男子校の良い所をエンジョイする期間です。でも高校生になって、忘れていた(?)女の子への関心がふと芽生えて来た時、リアルに女子がいない環境が更に3年間続く、というのはどうなのでしょう?異性が身近にいないという何となくの欲求不満が今はネットや二次元の世界に向かうことになります、ネットがない時代はエロ本の数冊で終わっていたのでしょうけど。今Googleの画像検索で「涼宮ハルヒ フィギュア」か「らき♡スタ フィギュア」をぐぐってみてください。私自身は、日本の職人芸でしかできない「匠の技」の一端をスゴいと思いますが。ご覧になればおわかりのように、これはリカちゃん人形とは訳が違いますよね。買っているのは勿論ほぼ100%男の子です。共学に通う男の子が、例え「非モテで学校では彼女いなくてフィギュア集める」のと、男子校に通う男の子が、「リアルで女子と接する機会がないまま二次元の世界で女子高生のフィギュアを集める」のとでは、全然違うと思うのですね。共学でずっと彼女いなくて片思いばかりのままの高校生活は、ほろ苦くても少なくともリアルな味はありそれが「青春」と言えると思いますが、男子校で実際リアルの世界には周りに女子がいなくて実在の女子を知らないまま二次元の女の子にのめり込む高校生活はそもそも無味なのでは?、と思います。しかも今ネットの世界では高校生ならばいくらでもどんなサイトにでもアクセス可能であり、アニメ文化も市民権を得ている日本では、男子校の難関進学校の生徒だって、いえ、頭の良いとされる彼らだからこそ興味を持ち人一倍のめり込んでしまうのではないでしょうか。男子校に通って6年間全く女の子に興味を抱かないまま過ごすというのはあり得ませんし、あり得た場合は他の意味で心配ですが(「男の娘」《←「おとこのこ」って読む》って知ってますか?)、一昔前と違って、「女子がいない環境」が逆に趣味のレベル以上に二次元の女の子にのめりこませることになるかもしれないのは、これから男子校にご子息を通わせる保護者の方は覚悟しておいてもいいのではないかと思います。中学受験の時に小学生のご子息に「ゲームは1日30分までよ。」と規制できても、携帯とPCで武装した高校生のご子息がネット上で何をどれだけ見るかなどは止めることはできなくなるのです。大学生は勿論、社会人になって30歳、40歳の年齢になっても女子高生のフィギュアを集めている男性は少なからずいるんですよ。当然、リアルでは彼女もいなければ結婚も難しいのでしょうけど。でも「失われた青春」を追い求めているのだと思えば、大いに同情もできますけどね。twitter上を見ていても、東大を受けようという有名進学男子校の生徒たちがこの夏休み、夏期講習や模試の会場で、「半年ぶりに女の子と話した」(勿論、お母さんとか学校の事務員さんは「女の子」じゃありませんからね。)とか呟いているのを見るにつけ(はい、私はtwitterはROMです)、中高6年間男子校に通うのはもう時代的に無理がきているのではと感じますし、男の子に中学受験をさせるかさせないか、を考える時には、ここまで考えても考え過ぎではないと思います。10年前、息子の中学受験の時にはまだ無かった世界が、今はネット上そこかしこにあるのですから。

さて、中高一貫の男子校からドイツのインターナショナルスクールにワープしていきなり共学&インターナショナルな環境に入った息子はその後日本国内の国立大学の、男女比5:1の学部に入学し、女子が一人もいないサークルに入り、女子が希少価値であるバイト先、という環境にいます。そして元来の「オタク気質」が大学生になって全開しています。けれども、インターナショナルスクールでの共学の3年間の経験がありますから、女子、否、女性をバイアスなく見る目はあるのではないかと親としては思っています。息子曰く、「入学早々、『合コン』しまくって『彼女』作ろうと焦っているのは私立男子高から来たやつ。公立高校出身者は非リア充でも、のんびりしてる。」だそうですが。
私自身、息子に中高一貫の男子校を中学受験させたことを今振り返ってどう考えたらよいのか、まだはっきりと考えが纏まりません。確かに、我が家の超個性的な息子にとって、小学校高学年から中学校にかけては男子校の方が居心地がよかったことは確かだと思います。公立中学から高校受験、というコースは考えられませんでした。でも、中高6年間ずっと男子だけの環境が息子にとってよかったかどうか、と考えると私は自信がありません。全くの偶然ではあったのですが夫の転勤で図らずも息子が共学の環境(インターナショナルスクールという特殊な環境ですが)に入ってわかったのですが、男女が思春期に共に学ぶことはとても大事なことなのです。
また、自分の息子には「どういう教育を受けさせたいか」、ということと同時に親としては、「どういう青春をおくってほしいか」、ということも考えるべきなのでしょう。高校からも生徒を募集する「中高一貫」の男子校ならば、逆に中学はそこで過ごして高校は都立なり国立なりの共学校を受験する、ということもこれからはありかもしれませんね。

女子校についてはまた別項で。