反日デモの長い夏が終わって ② そもそもこんな展開になったのは


反日デモの長い夏が終わって ① 鬱々としてしまうのは




まあ、そんな中ではっきりしているのは、ここまでの騒動になった原因は、ひとえに

石原都知事のスタンドプレー

野田首相の外交音痴

のようですね。石原氏が募った14億円はどうなるのでしょう?今回の騒動のきっかけは、今年4月に石原都知事アメリカで尖閣諸島を地権者から買い取る方針を発表したのが、そもそもでした。素人の後知恵を承知で言うと、ここまで問題が大きくなって、反日デモはもとより、中国でビジネスをしている大勢の日本人の生命や財産にまで危険が及ぶ事態になるのならば、「莫大な金額を提示して買いにきた中国人に、日本の法律に則って尖閣諸島を売却する。」という方がまだマシだった気がします。実際に中国人が経済力に物を言わせて、札束を積んで買うとしても、日本の法律に則らなければ契約は成立しないわけで、それはとりも直さず「日本の法律が及ぶ日本の領土として認める」ことになるのであり、沖縄県石垣市は固定資産税を徴収すればよかったのでは?いや、中国人がそれを認めたくなくてそこまでいかずに膠着状態であったとしても、現状(中国本土で反日デモが吹き荒れ、対中ビジネスはリスク増大、中国から日本各地への観光客が激減)よりも遥かにマシだったのでは?今月になって、民主党の鷲尾農水政務官の発言、

尖閣諸島は日本の領土。誰が所有しようと関係ないはずだ。中国政府が所有したっていい。語弊があるが、日本の登記簿に『中国政府』と欠いてもらったらいいだけの話だ。


が報道されていますが、「中国政府」でなくても中国の民間人が買ったってよいのです、日本の法律に則って。どうせまたこの発言に噛み付く「日本は毅然とした態度で」一点張りの方々がいるとは思いますが、少なくとも、
今回の中国の怒りを引き起こしたそもそもの張本人である都知事の「募金を募って買い取る」案よりも、
胡錦濤主席の外交メッセージも読めない上にわざわざ柳条湖事件勃発の日直前に国有化を発表した外交音痴の総理大臣の「税金を使って買い取って国有化する」案よりも、
これまた外交音痴の大阪市長がぶち上げた突拍子もない「日中で共同管理すればよい」案よりも、
マシな気がします。




私が神奈川県民から東京都民になって約1年ですが、今回都庁のウェブサイトで公開されている「石原知事記者会見」というのを見て、正直仰天しました。仮にも日本の首都の長が、公式の会見で、暴言の限りを尽くしていることに驚いてしまったのです。会見動画と、それを忠実に書き起こしたテキストが公開されているのですが、よくありがちな「動画での過激な言い回し、失言を修正してテキストに起こしてある」ということは全くありません。お役所仕事で生真面目に一語一句石原氏の発言そのままです。うがった見方をすると、このテキストを書き起してウェブに公開した職員の方は、秘かに「石原氏がこれほど酷い暴言を吐いている事実を知ってほしい」と願っているかのようです。


石原氏の暴言や行動に辟易しながらも、2020年のオリンピック招致のために仕方なく石原氏を担いでいる方々がいるとしたら、早々に方向転換した方がよいのではないでしょうか?今月開かれたIMF・世銀総会に、中国は主要銀行の代表のみならず、財務大臣までもが欠席しました。3都市に絞られた2020年オリンピック開催地候補のうち、マドリッドが財政危機で失速し、東京に有利に傾いているとしても、東京が開催地に決まることを中国が黙って許すでしょうか?「東京が開催地になるのならば中国はボイコットする」というくらいの脅しは十分予想できるではありませんか。誘致のために今まで注ぎ込んだ莫大な都民及び国民の税金、それがオリンピック誘致に異常な(と言っていいほどの)執着を示してきた都知事本人自身のの暴言・暴挙によって、水の泡になるかもしれないのですから、本気でオリンピックを東京に持ってきたいのならば、今が考えどころですよ。

唯一の救いは、長男の伸晃氏が野党第一党自民党の総裁にならなかったことです。伸晃氏がいくら「私は父とは政治信条も違う」(見た限りどうも同じようですが)と言っても、世界中の誰がそれを信じるのか。彼が仮に、嘗て父が属していた自民党ではなく、民主党で政治家としてのキャリアを築いていたのならば、まだ見所はありますが、どうやら事実はそれの正反対、今回の自民党の総裁選で、幹事長であったのにも拘らず厚顔無恥にも「すごい好き(伸晃氏言)」な総裁の谷垣氏を押しのけて出馬したことに関して以下の記事を見た時には、市井のオバサンである私でさえ、呆れるのを通り越して、悲しくなってしまいました。

森喜朗元総理大臣のインタビュー

僕は初めから石原さんをやらなきゃならない約束があったんだよ。
 去年3月に石原さんのお父さん(慎太郎東京都知事)と約束をした。だからどうしても石原さんの応援をせざるを得なかった。
 都知事選告示直前に慎太郎さんが出馬しないという。自民党としては引き続きやってほしいが意志が固い。このままでは党執行部の責任問題にもなりかねない。当時の谷垣禎一総裁が大島理森副総裁に交渉をさせたが全く相手にされず、両氏から依頼を受けた私が息子の伸晃氏と2人で慎太郎さんに思いとどまるように説得した。
 「ここで都知事を降りたら党幹事長でもある伸晃君のためにならない。彼の首相の芽はなくなるよ」と僕は言ったんだ。夜中までかかったが、結果として引き続きやるということになった。そのときに都知事は「必ず息子を頼むよ」と。これは党としての約束なんだ。だから総裁選で私には石原さん以外の選択はなかった。本当は谷垣、大島両氏も石原君を応援する先頭に立つべきだったんだよ。
産經ニュース 2012年10月01日

都知事が石原氏、総選挙後の総理大臣が息子の伸晃氏、という、政治上外交上最悪のコンボにならなくて良かった!
とこんなことで喜ばなくてはならない、情けない今の日本なのです。



野田総理大臣に関しては、今となってみると、

1.ウラジオストックAPECにて立ち話ながら胡錦濤中国国家主席から「国有化には断固として反対」と言われていたのに、その2日後に国有化を閣議決定した。
2.しかもその日は、柳条湖事件が勃発した日であり中国の愛国教育の中でも「国辱の日」とされている9月18日の一週間前のことだった。

ということをを見ると、外交音痴というほかありません。
まあそもそも外交音痴というよりも、それ以前にコミュ障というしかないかも、とも思うわけです。
竹島をヘリコプターで電撃訪問した李明博韓国大統領について、竹島が歴史的にも国際法上も我が国固有の領土であるという我が国の立場と相いれず、到底受け入れられない。大統領とは互いに未来志向の日韓関係をつくろうと努力してきたつもりだが、極めて遺憾だ。」*1と非難した野田総理ですが、中国から見ればそっくり同じことを野田総理がやったとしか映らないのではないでしょうか。
更に、中国とのビジネスが盛んになってもう久しいのですから、日本人ビジネスマンならば9月から年末にかけての「注意すべき日」、今回の9月18日だけでなく、9月3日の「抗日戦争勝利記念日」、11月11日の「上海陥落」、12月13日の「南京陥落」などの日を、「五・四運動」が起こった5月4日と共に頭に入れている人も多いと思うのですが、そんな民間人の常識は野田総理にはなかったのでしょうか?
もし原爆を投下したアメリカが8月の初めに核実験をすると発表したとしたら日本人が感じる感情(しかし日本は敗戦国)を想像してみてください。中国の人々がそれ以上の憤りを日本に対して感じることは簡単に想像できたはずなのに。

9月のウラジオストックでのエイペックでの例の立ち話の映像

http://tw.news.yahoo.com/video/野田.胡錦濤短暫交談-新華社抽稿內容成謎-132500002.html

を見ると、胡錦濤主席の表情には、まだ「怒り」の要素はないように見えます。映像は或る意味正直ですが、テレビニュースの画面で見てさえ、十年前の就任以来親日派と目されてきた胡錦濤主席の様子から感じとれるのは、「怒り」というよりも、背後に13億人の人民を背負った迫力と、中国という超大国のトップとしての溢れんばかりの責任感だと思うのですが、それを感じとれない日本国総理大臣とは、最早「外交力」以前の「コミュニケーション力」の欠如そのもののような気がします。

1年前、民主党代表選での野田総理大臣の「どじょう演説」、私も聞きました。多分、野田総理大臣にとって人生最高の出来の演説だったと思います。さすが24年間毎朝「駅立ち」をして演説をなさっただけのことはあって、何が人の心を惹き付けるか、ということを巧みに理解した演説だと思いました。

この計算し尽くされた演説には、民主党代表イコール日本の総理を選ぶ選挙であるのに、政策や政治理念は極僅かで、その代わりに聴衆である民主党の国会議員のおじさま達の耳に自然と入ってくる極めて「わかりやすい」キーワードが次々と繰り出されます。いわく、

両親は農家の末っ子同士、「三丁目の夕日」、「親父はプロレス好き」、司馬遼太郎藤沢周平山本周五郎の時代小説で政治の素養を積んだ、柔道をやっていたが今も昔も寝技は苦手、「下町のロケット」、メタボ、落選中は子供の靴や服を買うのも苦しかった、官僚を「シロアリ退治」、そして極めつけが、相田みつをの「どじょうが金魚の真似してもしようがねえじゃないか」という言葉、

になる訳ですが、これはコミュニケーション力などではなく、どうやったら「ウケるか」「つかむことができるか」という一方通行の技巧であり、駅前の演説では極めて有効だったのでしょう(ちなみに、この演説の最後に「ルックスはこの通りです、だから私が仮に総理になっても支持率はすぐには上がらないと思います。だから『解散』はしません。」と断言した箇所で、聴衆である民主党国会議員から一番の笑いをとっているところが、何とも・・・。)

野田総理大臣は、大学卒業後、直接松下政経塾に入り、卒塾した後わずか2年後に県議当選、その6年後に国会議員となってからの主な役職は、国会対策委員長と、財務副大臣・大臣。順調ではあるけれども、まるで今の若者の如く「内向き」の経歴です。「内向き」結構、海の向こうの遠い国との関係よりも、先ず明日の暮らし、老後の年金の方が優先課題、という人物を総理に選ぶのも1年前の日本の状態を考えると致し方ありません。また一人の人間である総理大臣に、財政も外交も震災対応も、全ての政策において英知を発揮するスーパーマンを求めるのは、無理というものでしょう。

総理大臣に何を求めているかというと、外国の首脳と颯爽と格好よくサシで会話する語学力を求めているわけでは決してなく、相手の本気度を五感で感じる力、それだけなんですけどね。普通の社会人ならば、普通に身につく力だと思いますが、政治家二世ではなく「両親は農家の末っ子同士」の家庭から政治家になった、一見苦労人に見える野田総理でさえこのコミュニケーション力がないとしたら、松下政経塾とは、如何なる政治家を育てているのでしょうか?

「面子を立てることが一番大事な国柄」とか、「率直な物言いが求められる国柄」とか、「先ず建前それから本音、というプロセスが求められる国柄」とか、その程度の国際常識は総理大臣でなくても、国際会議に出席する閣僚は勿論、はたまた民間企業で海外と交渉するビジネスマンでも今日び当然心得ていることではないかと思いますし、「地球の歩き方」にも出ていそうなレベルのことです。総理大臣たるに相応しい広い見識以前の、「一般常識」として。私も藤沢周平嫌いじゃないですけど、時代小説が総理大臣の「政治の素養」ではね・・・。将来政治家を志す若者たちのためにも、はったりでもいいから、古今東西の名著を挙げて頂きたかったと思います。

そしてそういったことは当然とした上で、国の行く末を左右する最終的判断を下すのは総理大臣ですが、最後の決断をする立場にいるからこそ、自らに深い見識がない分野では、多くの専門家の意見に虚心坦懐に耳を傾けるのが、真の指導者なのではないでしょうか、英語なんか出来なくてもいいですから。

野田総理大臣に無かったものは、外交力以前の、コミュニケーション力、ビジネスマンでも心得ている常識、そして、国の命運を左右する決断をする指導者が持つべき謙虚さ、でしょうか?


辺野古への普天間移設がまとまりそうだった時に鳩山元総理、
原発事故の時に菅元総理、
そして日中関係が最悪の事態に陥る時に野田総理


呪われているかのように最悪の天の配剤です、日本列島。
しかし、「胡錦濤主席の要請を無視して、柳条湖事件の直前に尖閣諸島国有化を決定し、結果中国全土に過去最悪の反日デモを引き起こした」総理大臣の重大な外交責任には頓着せず、ひたすら「近いうちに」という表現だけを政局の最大の焦点にしている野党が次の選挙で政権をとったらどうなるのか?と考えると、そちらもお先真っ暗、という暗澹たる気持ちになる今日この頃。

反日デモの長い夏が終わって ③ 次の世代には隣国の言語を学ぶ選択肢を