*「高校授業料無償化」で腐っていく、私と日本 ①

娘の通う高校は国公立であるからして、平成22 年度予算が国会を通過すれば自動的に「授業料無償化」となることになった。
ざっと年間12万円
我が家は下宿している国立大学生の息子、しかも昨今の就職戦線の厳しさを見て今年に入ってから資格をとるためのダブルスクールに通っているので、その学費も親のやせ細った脛で負担している。
娘は国公立の高校生であるけれども、塾を4つ掛け持ちしているので(何故4つもか、ということはまた改めて)、塾代は莫大。
であるから、本当はこの民主党さまから頂く12万円は有り難い。

しかし。
よ〜く考えたら、この12万円はどこから来るのだろうか?私たちが納める税金からであり、その税収ではとてもとても足りないので、国債を発行して賄うということなのだから、回り回って、結局は娘たちに10年後、20年後にツケが回る、ということなのだ。
これって限りなく詐欺に近くはないだろうか?

勿論、この12万円はあればあったで有り難い。でも我が家は、それでもこの時代に運良く何とか持ち家があり、専業主婦の私は投資回収率ゼロの「茶道」という酔狂を続けることができているわけで、こんな世帯の授業料を無償化していいものだろうか?娘の学友の中には、「国公立で授業料が私立よりも安いから」という理由で私立の名門高を蹴って来ている子もいるが、逆に医者の子弟もいれば、中央官庁の官僚の子弟もいる。そういう世帯にもバラまきをしていいものだろうか?

私の友人が昨夏の選挙に自民党から出馬して落選した。彼女は街頭演説でずっと訴えていた
民主党が主張する『どれもこれも国が負担します』という社会は活力が失われる。自分の力で立てる人も立てなくしてしまう。」
というのは本当かもしれない。我が家でも過去2年間、息子に仕送りをしつつ、娘の高校授業料12万円を何とか払ってきたのだけれど、これを国が無償化してくれるのならば、「息子と娘の学費がマックスになるこの数年間、頑張ろう!」という気持ちが急速に萎えてしまうし、それどころか、
「今年から高校生になる子供がいる家庭は、これで卒業までの3年間授業料が無償なんて、すごくいいじゃない?」
とまで思ってしまうという、堕落するのはかくも簡単である。

一方、例えば授業料だけ(ですよ、念のため)で見ると*1
玉川学園高等部  828,000円
学習院高等科   658,000円
成城学園高等部  650,000円
以上が、都内の高校普通科のベストスリー。以下参考までに
慶應塾高     74,0000円
早稲田高等学院  570,000円
開成高校     462,000円

上記はほんの一例であり、勿論これに加えて入学金、施設費、等々、莫大にかかる。例えば玉川学園だと、初年度納入費は1258,000円。こういう高校に通っている生徒の授業料も、税金もしくは子供達の将来に借金してまで、授業料を国が軽減しなくてはならないのだろうか?

民主党の主張はこうである*2
【政策目的】家庭の状況にかかわらず、全ての意志のある高校生・大学生が安心して 勉学に打ち込める社会をつくる。
けれども実際「高校実質無償化」が実施されると、上記のような高額の授業料がかかる私立高校に現在子供を苦労無く通わせている富裕層の家庭も年間12~24万円の恩恵を蒙ることになるのである。
有り体に言えば、
お金持ちの家庭にまで税金=子供達にツケが回る借金、がバラまかれる
わけである。

どうして「所得制限」をつけないのか?

一つには、「子供は社会で育てる」という社会民主的観点(友愛なのか、これが?)から、らしい。
もう一つは、「高校の授業料無償化」が世界標準となっている*3という主張、らしい。
そして最後の理由が多分一番重要なのだろうけど、所得制限をつけると、このバラまきの恩恵に預かる世帯が減り、そして高校生がいる家庭というのは、働き盛りの年齢の父母がいる家庭であるのだから、自ずとバラまいた餌に食いついて選挙の票や人気に結びつく人数が減る、ということだから、ではないか?そしてそもそも所得制限をつける場合、きっと例によって優柔不断&八方美人の民主党は確固とした所得の線引きを決定することが出来ないだろうし。

アンチ民主の私でも、来年度は12万円高校に払わなくてもいい、とわかって、
「嬉しくないと言ったら嘘になる」、
という気持ちだった。
私はとても麻生元首相のように
「さもしいから、辞退する」
という心境にはなれない、麻生閣下のようにお金持ちではないが、アンチ民主でも!
人間、それこそ「無償で」お金を貰うと堕落する、ということを身を以て実感。

けれども。バラまきを辞退するでもなく甘受するクセに考える。
この政策の実現に4500億円かかるという財源はどうするのだろう?

確実にこのツケは授業料を無償化される当の子供の将来に回される、皮肉なことに!

また朝鮮学校の処遇が注目されているが、もしかしてインターナショナルスクールにも適用されるのだろうか?
ちなみに東京にある西町インターナショナルスクールの年間授業料は*4,2052,000円(桁を読み間違えないでほしいけど)。
更にこれに入学金やら施設維持費やら教育拡充費やらが、ほんの900,000円ほどかかる。
ここに通う高校生の親にも、ありがたい12万円が支給されるのだろうか?

インターナショナルスクールだけでなく、カナディアンアカデミーリセ・フランコ・ジャポネ東京横浜独逸学園は対象になるのだろうか?朝鮮学校は無償化の対象にしてそれらの学校は対象として認めないわけにはいかないだろうし。言うまでもないけれども、それらの学校には日本人芸能人の子弟をはじめ、駐日企業・機関に勤める親を持つ子弟が多いのである。彼らの授業料までも、日本の子供達に将来の借金のツケ、にして負担しなくてはならないのだろうか?
朝鮮学校を対象に含めないのは憲法違反」と主張している方々は、この点についても等しく平等に賛成するのだろうか?

そもそも、民主党マニフェストにこれを書いた時点で、果たしてどこまでこの制度を適用するかリアルに考えていたか、全くもって怪しい。例えば、

朝鮮学校やらインターナショナルスクールについてどうするか、
・何かの理由で高校を留年した場合、4年目5年目の授業料についても「無償化」されるのか?
・定年退職したオジサンが、「もう一度高校生に戻って勉強したい」と、全日制や通信制の高校に入学した場合も適用されるのだろうか?
・授業料が無償化、または軽減(私立の場合)されたので、逆に施設費や入学金を値上げする動きが出てくることは十分予想されるがそれに対してはどう対処するのか?

野党時代は「言いっぱなし」でよかったから、まさか実際に施策として実行されることなんてイメージしていなかったとしか思えない。

一見「数多ある法案の中の一つ」かもしれないこの法案だけれども、もしかしてここから日本が腐っていくかもしれないと思う。
富裕層も含めて一度無償化されたら、一度「年間12万円」お金が浮くことを味わってしまったら、人間それがフツー、という感覚になると思う。それを元に戻す、つまり義務教育でない高校の授業料は各自で支払う、という現状に戻すか、所得制限を途中からかけたとしたら、不満は必ず沸き起こるであろうし、そうなれば民主党政権にとって致命的だからして、ずるずると借金をして人気取りを続けるだろう。そして、国民も「国にしてもらう」ことに慣れっこになって、身を削っての改革などをやる気にならなくなるだろう、私とて「授業料無償化」の麻薬に麻痺しつつある。

となると、個人的には好きでなかったけれども、痛みを伴う改革を唱え、米百俵の精神」を持ち出してこの日本国民を「その気」にさせた
小泉元首相は政治家として偉かった、
のかもしれない。

実は今こそ、鳩山総理や小沢幹事長は「痛みを伴う改革」「米百俵の精神」と言わなければならないのだが、国民は誰が「その気」になるだろうか?しかも、お金をバラまくだけで、後には何も形として残らない、哀しい政策である。