*今年も中学入試の季節が・・・。

関東地方は夕方から冷たい雨。
今日から東京と神奈川の私立中学の入試が始まっている。
明日の朝、雪にならなければいいけど。

今から8年前、長男が中学受験した時。
受験の一週間前くらいだったか、知り合いのお母様から電話があった。

「お宅、坂の上にある中学校受験するでしょ。週間天気予報だと当日雪らしいわよ。雪が積もっちゃうと長靴じゃ駄目よ、スノーブーツじゃなきゃ、坂道登れないわよ。よかったら、ウチにあるけど、お貸ししましょうjか?」

親切、というのか、不安を煽っているのか、まあ前者と解釈して。
「あ、でも大丈夫だと思うので。ご親切にどうも。」と言ってその時はお断りして電話を切った私だったが、翌日の朝になって天気予報を調べまくって段々気になってきて、スノーブーツを買いに走りましたよ、息子の分と私の分。
結果、天気予報は微妙に外れて、第一志望の日は厳寒の快晴、翌日の第二志望(ここも坂の上、だったけど)の受験日がみぞれまじりの冷たい凍える雨、だった。肝腎の息子は、スノーブーツどころか長靴でさえ、「格好悪いから、いやだ。」と言ってフツーの運動靴で行ったっけ。

受験って、「受かる時は受かる、落ちる時は落ちる」
ましてや、12歳の子供の受験は本当に水物だと思う。どこの塾も一生懸命「合格可能性○○%」とか出しているけれども、何と言っても当事者はコドモ、お子ちゃま、である。当日のコンディションは、大人が想像もできない要素が絡んでくるものだ。
小六の時点での(その後は必ずしもそうとは限らないが)秀才が集まってくる、かの開成中学でも合格不合格は紙一重、らしい。もし同じ受験生の集団で2回入試をやったら合格者の半分は入れ替わってしまう、そうだ。

我が家の息子の場合は、親切なお母様がおっしゃった通り「坂の上」の中学校が第一志望だった。
そこの学校は、定員の約8割を第一次募集でとり、残りの2割を第二次募集でとる学校だった。入試のセオリー通り、勿論第一次募集の方が偏差値は2から3、低かった。息子の成績だと、第一次募集だと何とか合格できそうな偏差値、第二次募集だとまあ冷静に考えれば無理、というものだった。それに第二次募集の方は、毎年もの凄い倍率だった(実際は既に合格を決めた生徒が抜けるので、倍率はもう少し下がるのだが)。無理、と偏差値様が言ってはいるけれども、そこの学校の校風に魅かれて決めた第一志望でもあるし、一次募集と二次募集と両方に願書は出してあった。
結果は、息子は第一次募集は見事(?)不合格だった。
(不)合格発表の夜は暗かった。親も子も、根拠もなく「その日で全てが終わる、合格して全てが目出たし目出たし!」と信じていたから、まだその先受験しなければならないことを考えると、本当に「お先真っ暗」。3歳年下の娘が、「お兄ちゃんが合格するように、豆まきしよう!」と大声で豆を撒いてくれた姿に、涙が出そうだったほど。

第一次募集が不合格だった時、親としては、「同じ学校に二度も『不合格』を貰うのは可哀想だし、大体第二次募集の方が偏差値高いわけだし、2回の不合格が今後トラウマになるといけないから、同じ日に願書を出してある別の学校を受けさせよう」と考えていた。ところが意外なことに、息子本人が「もう一度受けたい」と強く主張した。幼さが残っている息子が珍しく頑固に固執するので、滑り止めの学校には合格を頂いていたことだし、息子の意志を尊重して、もう一度例の「坂の上」の学校を受験しに行った。・・・そして大方の予想(それまでに受験した模試の偏差値)を裏切って、息子はそこの学校の第二次募集の狭き門に合格した。
親としては、全く予想をしていなかった中学入試の終わり方だった。

後日、息子が語った話から、塾も先生も親もわからなかった、12歳の受験生の心理が見えてくる(以下青字は息子談)。

第一次募集の入試日の時、受験生控え室で同じ塾で成績がいつでもずっと一番の○○くんに会った。○○くんは、第一志望が勿論開成で、第二志望は△△中学だと聞いていたから、「坂の上」の学校を受験しに来ているのでびっくりした。塾で一度も△△くんに成績で勝ったことがなかったから、すごいびびって弱気になった。
それから、受験する教室に入るために校庭に整列した時は、もっとびっくりした。自分の通った小学校はクラスの数がとても少なくて、全校生徒が集合しても300人にもならないのに、その時の校庭はそれの何倍も何倍も受験生が並んでいて、あんなにたくさんの生徒がいるところは生まれて初めてだった。
自分は背が低いのに、前も後ろもすごく背の高い人ばかりで、もっと緊張した。校舎に入る時、付き添いのお母さんたちが「○○ちゃん、頑張って〜」と声をかけているので、またびっくりした。

ピアノの発表会や学芸会でも「緊張したことがない」という、神経の太い息子ですら、こういう状態だったらしい(ということを、親は後から知るのだが)。親だって予測不可能な事態だし、子供の動揺は高校受験や大学受験より遥かに大きいのだろう。

でも、第二次募集の入試の時は、学校に着いた順に、受験番号は関係なしに教室に入れてもらえて、だから「倍率がすごい」と聞いていたけれど、どれくらいの人数が受けたのかわからなかった。休憩時間にトイレで、塾や同じ小学校の友だちに会って、皆頑張ってるんだ、と思った。

それと、第一次募集の時には、お腹が空いた時用に定番「キットカット」を持たせたのだが、それでもテスト中(それも彼の得点源である、算数の時間)にお腹が鳴ってそれが気になって仕方なかった、というので、第二次募集の時には、小さなお握りを持たせたのだが、それがやたらお気に召したらしくて、後々まで「あのお握りが美味しかった(フツーの鮭おにぎり、だったのに)」と言っていた。

事程左様に

中学受験は水物!

明日の朝が雪になって「坂の上」の学校を受験する生徒や付き添いの親御さんが大変な目に遭わないことを願いつつ、それでも「受かる時は受かる、落ちる時は落ちる」なのだから、一喜一憂することのないように、と願う。
受験準備の間、塾の送り迎え、お弁当作り、過去問のコピー、等々、親として色々頑張ったつもりでも、受験日当日、塾の秀才に予想外に会ってしまって動揺されたり、お握りが気に入って調子が出る、といった具合なのだから、相手(受験生である我が子)は。

それと。
3日以降、御三家など偏差値が高い学校から合格発表が行われる。
第一志望に合格した生徒さんが、塾の「合格者数」を上げるために他の学校を受験することはやめてほしい。
第一志望が合格した時点で、他の学校に電話を入れて「辞退」してほしいし、親も「合格」に浮かれてそれを忘れないでほしい。
我が子さえよければよい、という姿勢は子供に対しても決してよくはないし、我が子だって何かの巡り合わせで不合格を貰っていたかもしれないのだから、他の受験生の親御さんの気持ちを考えれば、事前に「辞退」は当然だと思うのだけれど・・・。
塾の先生には「記念に受験すれば」とか言われちゃうんですよね。「○冠王を目指してください」とか。

とこんなことを長々と書いていて、今更だが、

中学受験、って本当に良いことなのだろうか?