最強のブランド「ルイ・ヴィトン」CEO イヴ・カルセル氏 @ 朝日新聞土曜版「be」


長年購読していながら、日頃はその偏向ぶりに辟易している朝日新聞なのですが、夕刊でしかも他の出版社とのコラボ広告という記事でありながら、私が鬱々と憂えていたテーマ(「中学受験の是非」「日本の英語教育」)について続けて取り上げてくれていたのは、単なる偶然かと思っていたら、またしても今日の朝日新聞の朝刊土曜版「be」の「フロントランナー」のページ第一面に、ヴィトンのCEOである、イヴ・カルセル氏が出ていて、びっくり、というかこの偶然に気持ち悪くもあります、というのは、ここのところ「高級ブランド」、就中「ルイ・ヴィトン」について続けて書いていたからなのですが。

※拙ブログ記事(お茶の宗匠とルイ・ヴィトン日本女性が起こしたブランド意識革命


さて、件の「be」に出ていた、
天下のヴィトンのCEO、イヴ・カルセル氏の言葉:

高級ブランドとは「何らかの感情や感性を生み出すもの」。そのためには、伝統を守ると同時に、常に革新していくことが必要です。


その通りです!
伝統を守るだけでは駄目なのです。伝統を守りつつ常に革新していかなくては、結局は生き残れないということであり、このイヴ・カルセル氏は1989年にヴィトンが属するフランスのLVMHグループに入社、とありますから、バブル期に日本人女性がヴィトンを買いまくった事実から多くを学んだに違いありません。だってそれまでは、彼自身が述べているように、

(高級ブランドであるルイ・ヴィトンは)20世紀前半までは欧州のほんの一部の富裕層のものでしかなかった。


のですから。もし、伝統を守ることだけに終始して、ヴィトン製品を「欧州のほんの一部の富裕層」だけを対象にしたもののままにしておいたなら、今のヴィトン、LVMHグループの経営的成功はなかったでしょうし、ヴィトン製品それ自体がここまで世界中の人から愛されるものになってはいなかったでしょう。ヴィトンの新しい販路、そして未来図を示したのは、
誰あろう、日本のOLさんと女子大生!
80年代に、それまでのヨーロッパの常識(と日本の評論家のおじさまおばさまの非難)を無視して、彼女たちが、ヴィトンを買いまくったからこそ、ヴィトンに新しい地平が生まれたのです!

この「be」の記事を書いた朝日新聞の高橋牧子記者は、

土地が狭くて値も高く、大きな住宅を手にできない日本では、高級ブランドに可処分所得を振り向ける傾向があったのだろう。

などと、訳わからない事を書いているのですけれども、これはこじつけもいいところですね。そもそもあの当時、OLさんも女子大生も別に「家が買えないからヴィトン」だったわけではなく、大群をなして飛ぶ鳥やまるで一匹の巨大な魚のように回遊する魚群のように、一人一人は「ヴィトンをこんなにも求める理由」というのが自覚できないまま「友達が持っているから」「流行っているから」という理由だったかもしれないのですけれども、とにかくもあの時代、何かのエネルギーに突き動かされるようにヴィトンに殺到したのです。その日本女性の行動が、高級ブランドのヴィトンを動かし、今やヴィトンは、「一部の富裕層」しか持つことができないものではなく、共産国である中華人民共和国民にも、旧ソ連邦を形成していたウクライナベラルーシの人々にも、日本女性が起こした意識革命に続く人々にはそれが誰であっても「お客様」として門戸を開いています。平壌にもブティックが出来る日がくることでしょう、それはきっととてもよいことなのだと思います。80年代、パリの本店でヴィトンのバッグに群がる日本人女性に、フランス人店員が「バッグを投げてよこした」という黒歴史は既になく、それどころか、ヴィトンは今立派な「環境に配慮する企業」なのです。

参照:http://environment.louisvuitton.com/main_jp.html

贅の限りを尽くす富裕層相手の商売からのこの見事な転身ぶり。これは伝統の持つ底力というところでしょう。そして、それが最初は利益を上げるための企業戦略であったとしても、また、ブランドイメージを高めるための建前であったとしても、「環境に配慮する先端的企業であるところの世界に開かれた高級ブランド」という建前がいつしか本音に生まれ変わった時、この「ルイ・ヴィトン」というブランドは最強になったのではないでしょうか。