TOEFL平均点では北朝鮮に抜かれた日本の英語力

『日本の中高の英語教育がマイナスにしかなっていない件について』を読んでみた 」を読んでみました。
中高の英語教育がマイナスにしかならない件についてーMy Life in MIT Sloan」のLilacさん(ブログ時々拝読しています)には、「『最初に住んだ外国がアメリカ 』の人だなあ。」(参照 拙ブログ「英語」はそんなにエラい言語か? ①)という感想です。彼女が批判している日本の英語教育についても異論があります、だって、ネイティブどころか外国に行ったこともない英語教師が教えている日本の英語教育で他にどんな選択肢があるというのでしょうか?
しかし、アジアの中で、否、世界の中で見ても、
日本人が特別英語が下手くそ、
というのはLilacさんがおっしゃる通り事実です。
よく引き合いに出される
TOEFLのスコアで日本はアジアの中で北朝鮮に次いで下から2番目」
というのは、実は2005年の資料だと思われ、ETSのサイトに出ている直近の資料*1によると、日本はアジアでは、

ラオスカンボジアに次いで下から3位!
北朝鮮に抜かれちゃっています。
これに対して、「『日本の中高の英語教育がマイナスにしかなっていない件について』を読んでみた」さんは、英語教師の基礎知識さんの論理を援用しているのですが、それは違うと思います。

日本でTOEFLを受験する人はかなり英語力があるはず、なのに、この結果(下から3位)なのですから、本当に日本人は英語が下手、なのだと思います。では、何故TOEFLを受験する人はかなり英語力があるはず、という根拠は・・・。

そもそも日本には「英検」という日本独特の英語の能力を判定する資格があります。これは日本を一歩出れば何の役にも立ちませんが、一方日本国内では圧倒的絶対的知名度を誇る、という「ガラパコス」資格です。
中学校や高校では、学校で生徒が揃って英検を受験したりしますし、公文でも「小学校1年生で英検3級合格」などと宣伝し、英検受験を推奨しています。このように日本では英検は英語能力を判定するのにわかりやすいものとなっています。しかも英検は一度合格したら、履歴書の「資格」のところに一生書ける資格です。

一方やはり「ガラパコス資格」のTOEICはどうでしょうか。これは日本で大学生が就活用に受験、また企業が社員の英語能力を測るために使われることが多いようです。が、仮に満点990点をとったとしても、やはり日本を一歩出ると通用しないようです。元々TOEICは日本発のテスト*2なので、はっきり言って、海外ではTOEICなんて誰も知りませんし、何の役にもたちません。しかし、それにも拘らず、日本では前述のように、就職やら企業の研修などでは圧倒的なシェア(?)を誇っているのですが、それは偏にIIBC*3の営業力だったのでしょう。


という、日本の英語資格の現状からして、「日本でTOEFLを受験する人」というのは、実は限られているのではないでしょうか?
アメリカの大学に留学を考えている人
MBAを目指してアメリカの経営大学院に留学を考えている人
③大学院(法科大学院を含む)を受験する人
④日本の高校・大学を帰国受験する人
つまり、日本人の英語学習者の中ではかなり英語力が高い層がTOEFLを受験していると思われます。大体TOEFLの受験料は、$200です、20,000円強。英検の検定料は一番高い1級でも7,500円、TOEICは何と5,985円。
この金額の差をものともせず更にTOEFLの有効期限はたったの2年間!しかないのに、わざわざTOEFLを受験する人は、実はそれなりに英語に対してヤル気がある人とみていいのではないかと思います。
大体①〜④の人は、何か目的のためにTOEFLのスコア(それもある一定以上)が必要だから$200も払って受験しているわけです。

それなのに、アジアで下から数えて3位、

なのです。

一方、アジアの国々でTOEFLを受験する人も、別に酔狂で受験しているわけでなく、アメリカへの留学、アメリカ企業への就職、を目的に$200も払って受験していることでしょう。北朝鮮などでは、そもそも受験料自体一般人が払える金額とも思えないので、将軍様が払っている、つまり「国(将軍様、ではない)を背負って」文字通り命がけで受験しているのでしょう。

ですから、それぞれ「何かを背負って受験している」ということでは、他の国々も日本も同じというわけで、ETSが出している資料はそのまま受け取っていいと考えられます。付け加えて言えば、この2008年の資料で日本より下の、ラオスカンボジアは旧フランス植民地ですから、英語よりはフランス語の素地がある国だと思われます。それらの国よりも平均点が僅か数点しか上回らないのが、強力メンバーが受けているはずの日本の英語力なのです。

そして「日本人が英語下手」の理由は何か?ということに関しては、勿論中学校・高校での英語教育にも原因があるのでしょうが(但し私の考えは、「My Life in MIT Sloan」さんとはかなり違いますが)、それよりももっと大きな理由、明治以降、また第二次世界大戦以降、ずっと日本人を覆っている「英語に対する過大評価」というメンタルな部分が一番の理由ではないかと思いますが。


英語は喋れないけれど中国語(ロシア語/アラビア語/韓国語)なら喋れる、


と堂々と胸を張れる日本人が増えることが、逆に英語を「ツール」としてのびのびと話せる日本人が増えることに繋がるのではないでしょうか。
(参照 拙ブログ記事一覧「英語」はそんなにエラい言語か? ②〜⑤)