「イケメン」という言葉について私感

「イケメン」という言葉は嫌いです。
自分の言葉としてこの「イケメン」という言葉を使うことは決してありません。誰かがこの言葉を喋ったことの「引用」とか、直接話法で第三者に説明する時以外は、私の口から「イケメン」という言葉は発せられません。
それは何故?ということを考えてみました。

「イケメン」という言葉とそれを使う女性には「品格」がないから
何だか、女性が男性を「とことん顔だけで品定め」しているような感じが拭えないのですね。しかもその「顔」とは、「性格や人格も雰囲気も総合した顔」という意味では全然なく、「単に表層としての顔」ですから。
数年前に260万部を超す大ベストセラーになったらしいですが、私は買ってもいないし読んでもいない「女性の品格」という書名とは何の関係もなく、「品格」を失わずに「イケメン」という言葉を使える女性なんているでしょうか?
言い換えれば、私は、
「イケメン」という言葉を使って男性を品定めする女性
にはなりたくない、ということでしょうか?私は別に上品ぶっている訳ではありません。
あなたがもし男性として、あなたの家族の女性、例えば、妻でもいい母でも娘でもいい、姉や妹でも、男性のことを
「◯◯はイケメンだから。」「△△はイケメンじゃないよね。」
と言っている図は愉快でしょうか?
「イケメン」という言葉で男性を品定めしている女性は、その「イケメン」同様、ぺらぺらに薄く見えてしまう気が私にはするのですが、その証拠に、あなたが女性ならば、あなたが「こうなりたい」と憧れる女性、誰でもいいですが、その女性が「イケメン」という言葉を使って話をしている場面を想像してみて、それでもその女性の魅力は一ミリたりとも減じませんか?どう捻っても「イケメン」という言葉を使って「素敵」には見えないのではないかと思います。

例えば「将来ああいう風に歳を重ねていきたい」と私が思える数少ないロールモデルである、

①我がお茶の先生とか(お歳が信じられないくらいお綺麗です)

(しかし、御歳90超の師匠のボキャブラリーにこの言葉があるかどうか・・・)

若尾文子さんとか


草笛光子さんとか



カトリーヌ・ドヌーブ(是非日本語吹き替えで)、

これらの方々に、私の脳内スクリーンでで「イケメン」という台詞を喋らせようとしてもどうしてもその台詞が入りません!
それにしても「イケメン」という言葉ができる前には、どんな言葉を使っていたのだったか・・・

ハンサム、美男子?

フツウの婦女子のボキャブラリーだとこのあたりだったかと記憶しています。
まるで「イケメン」を和訳(?)したような、

いい男?

というのは、フツウの婦女子は用いることのない言葉であり、玄人筋の年増の「姐(あね)さん」あたりが使いそうな言葉であったのではないかと思います。
それが今は、猫も杓子も「イケメン」ですよ!
75歳になろうという実母も、17歳JKの愛娘も
この
「イケメン」という言葉を「臆面」もなく使う
ので、辟易している私です。
「イケメン」という言葉がいかに下品か、ということをよく表しているのが、某テレビ局の高校生クイズ大会が放送されたことから最近ネットで話題になっている有名進学校の生徒に関する言説です。彼は高校生クイズ選手権でチームを組んで優勝したのですが、放映中からネット上では「あのイケメン高校生」という形容詞抜きで語られることはなく、2chだけではなく(2chの中でも『ガチホモ板』!でも言及されているそうですが)受験関係の掲示板でも「開成のT君はイケメン」の大合唱。家族もいて一般人で未成年で高校生なのですよ、彼は、しかも高三の受験生。匿名のネット上とはいえ、淑女の皆様の(紳士も?)「イケメン」の連呼があまりに品格がなくて、辟易してしまいます。数々の難問を解いた彼ですが、彼がもし「イケメン」でなかったら、ここまでカメラと視聴者に弄ばれることはなかったのではないでしょうか?純粋にその「クイズ脳」を称賛されたことでしょうに!JKから熟女までの大和撫子プラス「ガチ◯モ」の方々が連呼されている「イケメン」という枕言葉は、「ハンサム」という言葉とは違って、そこにあけすけな「品定め」的なニュアンスが入ってくるような気がするのです、何故でしょう?
「いい男」というのは、「いい女」と同じく、顔だけではなく性的魅力を含めてのその人の総合力を表していると思うのですが、「イケメン」という言葉が「品格」がないとしたら、本当に「顔」だけを暴力的に品定めする言葉だからのような気がします。「顔」の価値だけを取り出すということは、背後の人柄、とか色々な能力とかを無きが如くに無視してみせることであり、これに私は引っかかってしまっているのかもしれません。

しかし。
しかし。
実は同時に一方で、女性が「イケメン」という言葉とそれの対義語である「ブサメン」という言葉で、ばったばったと男性を暴力的に分類しているのを痛快な気分で眺めていてる私もまたいることも事実なのです。或る種の感慨を持ってしまいます。「或る種の感慨」というのは、率直に言ってしまえば、

ざまぁ!

などという「品格」完全破壊用語は使いませんけれども、控えめに言っても、

いい気味!

くらいの気持は十分にありますね。
思えば長らく本邦では、あの光源氏でさえ末摘花のことを「美人(美女)」と「ブス(醜女)」の後者側にとっとと仕分けして、女性のごくごく表面的な「顔」についてさんざん言いたい放題言ってくれちゃってたのでしたが、21世紀になってやっと大和撫子である女性側からの反撃(?)が始まった、ということなのですね。1000年以上の間、女性を「美人」と「ブス」に勝手に仕分けしてきた男性諸君!「自分は仕分けをする側であり、される側ではない」という大間違いの甘い認識の下、「彼女は美人だ。」「あいつはブスだよね。」とさんざん女性に精神的圧迫を加えて頂きましたが、やっとこの度目出たく「彼ってイケメン。」「あの人ブサメン。」と仕分けされる側になられたわけで、それは私にとっては「或る種の感慨」ともいえるのです。
ブサメンの皆様、「女性はオトコの顔しか見ない。」と嘆かないでください。今まで男性も女性の「顔」の美醜だけで、情け容赦なく女性を峻別してきたのですからね。
女性でどんなに学問やスポーツや仕事で業績を積もうと、結局は「美人orブス」という物差しでしか男性は見てこなかったと思うのですが、今度は男性も、同じく学問やスポーツや仕事がどんなにできても、結局は「イケメンorブサメン」で評価されてしまう世の中が来たということなのかもしれません。もうその兆しはあちこちに見られますから。

さて。
私は娘(JK高三)が小さい頃(小学校くらい)から、ずっと大事なことを言い聞かせてきました。

男の子は「イケメン」即ち「顔」がカッコいい、とか、サッカー上手いからカッコいい、とかで好きになったらダメよ。本当にカッコいい男の子の見分け方を教えてあげる。

男の子同士の中で男の子に人気のある男の子が本当にカッコいいのよ。友達思いで、信頼されてる子、それこそが本当に「カッコいい」男の子なのよ!


どうですか?あながち間違ってはいないと思うのですね。同性の目から見て「いいヤツ」であり「頼れるヤツ」というのが本当に「カッコいい」というのは当たっているでしょう?「顔」だけ良くて思いっきり性格悪い男子を数限りなく見て来た母としては、娘にこのように教え諭して来たわけですが。
しかし。
最近になって少しばかり不安が芽生えてきたのも事実です。「男の子の中で人気のある男の子」っていうのは、あれですね、きょうび実はアブナいかもしれませんね、前述の開成のT君もそうですが、本人が知らないところで2chの「ガチホモ板」などで人気があるということは、娘の交際相手としてはどうなのか???それこそ「絶対に叶わぬ恋」になってしまうかもしれない相手を推奨するわけにはいかないですから。じゃ、「男の子を見る目」をどう娘に教えればいいのでしょうか、今の世の中・・・。

「イケメン」という言葉を使わずにどこまで生きていけるかわかりませんが、もう暫く私のボキャブラリーからこの言葉は外しておくことにします。