永遠の問い「持ち家か?賃貸か?」 60歳から90歳までの30年間だけでなく  ド素人の雑感


一生賃貸で暮らすにはどのくらい蓄えが必要か 「まさか」に備えるための全課題 PRESIDENT Online


筆者の方のプロフィールを見ると、数々の国家資格を取得していらっしゃり、著書も数多く出されている方のようなので、私のようなド素人が楯突くのも気が引けますが、ド素人はド素人なりに書いてみたいと思います。


上記の記事の内容で、何が問題かと言って、
「一生賃貸で暮らすにはどのくらい蓄えが必要か」
というタイトルであるのに、この記事を読むと、この「一生」というのは、
「60歳から90歳までの30年間」
ということらしい、という点です。
このエントリーは、よくネット上で議論されている、本当の意味での「一生」つまり若い頃から生涯にわたっての「持ち家か?賃貸か?」という論争とは別物です。
タイトルに釣られて読み始めて「あれ?」と思った若い方もいるかもしれませんね。
この記事で書かれていることは、「60歳以上90歳までの30年間」という期間限定でのお話になります。
文中に

年金収入だけで、これだけの負担に耐えることができるかどうかです。


とあるように、定年退職して年金生活に入ってからの「持ち家か?賃貸か?」ということになんですね。
しかも、タイトル「一生賃貸で暮らすためにはどのくらい蓄えが必要か」とは相反して、賃貸で暮らすための蓄えの目安やアドバイスといったことは余り書かれていなくて、寧ろ筆者は、賃貸よりも持ち家を勧めているようにしか思えない書きぶりです。

いずれにせよ、維持費しかかからなくなった持ち家派と比べれば、賃貸派の月々の出費はどうしても多くなってしまいます。もちろん、ニーズに応じて自由に引っ越せるというメリットもありますが……。


読者が一番知りたい情報が書かれていないどころか、根拠も示さずに「持ち家」がよいと誘導しているような記事です、何ですか、この文末の「が.....。」は?
とても専門家の方が用いるべき修辞とは思えません、私のような市井のオバサンが書くのならばともかく(はい、私はこれを多用してます)・・・。
最近では、年金生活に入ったシニアの中でも、子育て時期に購入した郊外のマイホームを売却して、都心に移り住む方が増えているとも聞きますが、その場合、都心の新しい住居は「持ち家」がいいのか「賃貸」がいいのか、それぞれのメリット・デメリットさえ示されていません。
筆者は、30年間にかかる賃貸の場合の住居費として、賃貸の家賃と更新料、敷金・礼金・手数料の合計を3,870万円としています。
この数字だけを見るとドキッとしてしまいますが、大体、定年まで賃貸派だった人たちには、マイホームという巨額な買い物をしていない分だけそれまでの貯蓄というものもあるでしょうし、60歳までは持ち家派であっても、定年後賃貸生活に入るために持ち家・所有マンションを売却した人たちには、売却したお金もあるであろうに、それには全く触れられてはいないのです。
おまけに、「では持ち家の場合の住居費はいくらかかるか?」ということについては、「維持費しかかからない」としか筆者は書いていません。
「維持費」として想定しておくべきことは、算出されていないのです。
後で述べますが、持ち家の場合の維持費、それはそれでかかります。
ということで、ド素人の私ですが、専門家の筆者が書いていないことを書いてみます。
そして、「持ち家か?賃貸か?」は、別に年金生活者のシニアに特化した問題ではないので、もっと広い視点で考えてみたいと思います。
尚、当方は、ローンを組んで通勤時間1時間の郊外に建てた一軒家を繰り上げ返済、その自宅を賃貸で他人に貸し、自分たちは都心のマンションに賃貸で住んでいます(3軒目)。あっ、それからまだまだ年金受給年齢には遠い(←少し見栄はってます)世代です。


-維持費について
筆者は「維持費しかかからなくなった持ち家」と書いていますが、持ち家が一軒家の場合この「維持費」が結構かかることが問題なのです。
内装は徐々に古びていきますが、それは「慣れ」と「見て見ぬ振り」で何とかなりますが、何とかならないのが、外壁や屋根、そして水回りです。
定年前だろうが定年後だろうが、或る日突然、高額の修理が避けられない事案が起こります。
ガス給湯器が壊れた!とか、エアコンが死んだ!とか、壁に雨水のシミを発見!とか。
床下点検でシロアリ発見!ということもあるでしょう。
また新築当時に「ガーデニングやバーベキュー」をするために作ったものの、子供達が大きくなった後は殆ど放置されていたウッドデッキが経年劣化で朽ちてきて作り替えるか解体か、ということもあるでしょう。
カーテンやブラインドも、何十年も同じものというわけにはいきません。
30年間の間に、外壁を何度塗り替えることになるのか?
屋根やフェンス、内装の壁紙や建具、カーテンやブラインド、そして大きなところでは水回りのお風呂やトイレやキッチンのリフォーム。
「維持費しかかからなくなった持ち家」と筆者は言いますが、どうしてどうして、30年住むのならば、かなりの額になりそうです。
「持ち家」が分譲マンションならばどうでしょう?
マンションは入居時から「管理費」が徴収されます。そして「修繕積立金」なるものも。駐車場を借りていれば、駐車場料金も。
持ち家のマンションにかかる「管理費」「修繕積立金」「駐車場料金」って、「維持費」じゃないんでしょうか?
そして当然のことですが、自宅マンションに住み続ける場合、年金生活に入っても永遠にそれらを払い続けなくてはなりません。
サービスの質が高いマンションは当然ながら管理費も高くなりますが、仮に現在の管理費が月に15,000円として*1、それが今後30年値上がりしなくても(←それはありえませんが)30年だと540万円です。
修繕積み立て金というのは、とにかくマンションを売りたいデベロッパーが、実際に修繕にかかるであろう金額よりもかなり低く設定しているらしいですから、実際の修繕時に更にまとまった修繕費を各戸が負担するであろうことをこの際無視しても、修繕費が月に7,000円として、それが値上がりしなくても(←これもありえませんが)30年で252万円です。
もし駐車場を借りていたら、(疲れたのでもう計算しませんが)駐車場料金も30年分かかります。
立体式の駐車場ならば、30年の間に数回、機械のメンテ、交換費用もかかってくるでしょう。
何やかんやで、マンションを賃貸でなく「所有」していれば、リフォームなど全くしなくても、そのまま住んでいるだけで30年間で1,000万円くらいは必要になるのではないでしょうか。
全面的にリフォームしたりすると、上記の「管理費+修繕積立金」を加えると30年間分の賃貸の家賃くらいの額がかかってしまうかもしれませんね。
「持ち家」である一軒家やマンションの「維持費」、これは「ほとんどかからない」というレベルでは決してないのでは?


-家族の状況の変化
自宅を建てたり、マンションを買ったりする時、誰しも、その時の家族の状況に合わせて、間取りを考えたり選んだりしますよね。我が家もご多分に漏れず、子供部屋を二つ作り、子供の友達が大勢遊びに来ることを想像して多目的ルームなんてものも作りました。
もし今も自宅に住んでいたとしたら、大学生になって家を出て行った息子の部屋は不要になっていたでしょうし、多目的ルームなんて物置になっていたことでしょう。
また、今の高校生や大学生は、自宅で勉強しなくなっていることをご存知でしょうか?
自宅の自室のような、漫画やゲーム機や携帯電話といった誘惑物がいっぱいの場所ではなく、今の高校生や大学生は、マクドナルドやスタバのような「他人の目がある」場所で勉強したり、塾や予備校の自習室(携帯電話を預かってくれるところもあるそうです)で勉強するのです。
自室は「寝る場所」になっていますから、日当りの良い南向きの子供部屋なんて小さい頃だけのものですよ、大体、日が高い間に家になんか帰ってきませんから。
一方、通勤する親の方は、若い頃は郊外から電車に一時間乗っての通勤も何てことなかったのが、段々負担になってきます。朝もツラいが、夜もツラい。体調がすぐれない時も、気軽にタクシーに乗って帰ることができる距離ではありませんし。
親の介護問題も今や避けては通れません。少しでも介護に便利な場所に転居したり、自宅をダウンサイズして住み替えて親が住んでいる近くにもう一軒アパートを借りるという選択肢も、賃貸ならば可能です。
また筆者が示す「60歳から90歳」の間にだって、状況の変化というものはあります。
夫婦のどちらかが車椅子の生活になったら、郊外の無駄に広い二階建て一軒家よりも、都心のコンパクトでフラットなマンションの方が余程暮らしやすい、ということになるかもしれません。
高齢で一人暮らしになったら、尚更、不便な郊外の一軒家の持ち家では住み辛いでしょう。
家族の状況のそういう変化に、固定化した「持ち家」は対応できません。
素人の私達が本当に知りたいのは、その時にどういう選択肢があって、どのようにすれば限られた資金を有効に使えるのか?ということなんですけどね。



-気楽さ
これもマイホームを購入する時には予想不可能なのですが、何の因果か、モンスター隣人に悩まされることになるかもしれません。
そういう場合、身動きが取りにくい「持ち家」の場合、負のコストは家族が長い年月負わなければなりません。
マンションの上階に騒音を出す住民がいて何度苦情を申し入れても変化がなくノイローゼになりそうな場合、ちょっとした行き違いから隣家の主婦に事ある毎に嫌がらせを受けるようになって神経が参りそうな場合、引っ越しすることは「負け」なんでしょうか?
さっさと引っ越して、心安らかに生活を始める方がどれほど建設的か。
ただ、それは「持ち家」だと、心理的にも経済的にも高いハードルがありますけど、「賃貸」ならばまだ簡単です。
そして、「この隣人と死ぬまで隣同士」と思うからストレスが増幅するので、「いつでも引っ越せる」と思うだけでストレスも変わってくるのではないでしょうか?
特にシニアの方にとっては、折角の人生の円熟期に、隣人とのトラブルで貴重な日々をストレスフルなものにはしたくないはずです。
また、町内会や自治という問題があります。
一軒家なら町内会、マンションならば管理組合とか自治会の役職という仕事が回ってきます。
仕事や子育てで忙しい時期、持ち回りでそういう役職が回ってきたら、そこは若さでこなさなければなりませんが、それでも大変です。
シニアとなって、時間はたっぷりあるかもしれませんが、今度は体力的になかなか大変です。
私は一軒家に住んでいる時、順番で町内会長の役職が回ってきましたが、ゴミの集積所の問題、その集積所の清掃の問題、町内会費だけでなく年に何度もある◯◯募金の徴収、等々、大きくない町内だったのがまだ救いでしたが、本当に疲れました。
その時に知ったのですが、町内の住民でも例えば賃貸のテラスハウスに住んでいる方には、町内会長の役職は回ってこないのです(場所によって違うでしょうが)。
中には町内会費さえ、「それは大家さんから貰ってください、そういうことになってるんで。」と払わない人もいましたね。
そして時は流れ、今度は賃貸でマンションに住むことになって、全く逆の立場になりました。
賃貸で住む住民には、マンションの自治会の役職は回ってこないのです、管理組合の会合に出席する義務もありません。
全ての賃貸物件に当てはまるのかどうかわかりませんが、マンションの管理費や修繕積立金も、大家さんが払うことになっており、借主の我が家が払うのは家賃のみ。
管理組合で話し合われていることは多岐にわたります。
ゴミ出しのマナーとか、ペットや楽器についての取り決めとか、共用部分の修理とか、駐車場・駐輪場の管理とか、マンションの資産価値を下げるようなものが近隣に出来そうな時には反対運動の取りまとめとか・・・。
自治会長の役職が回ってこないことは勿論、そういう話し合いに出る義務もないのです、賃貸居住者は。
義務がないということは、意見も言えないということですけど。
けれども考えようによっては、マンションの規約に納得が出来なければ転居すればよいことです。
上下左右に騒音を出し続ける住民がいればこちらが引っ越すこともできますし、マンションの玄関の正面に駐車場付きの24時間営業大型カラオケボックスができようが「資産価値が下がる」と騒ぐ必要はありません。
また、上述の「維持費」のところと関係しますが、賃貸マンションに住んでいて何か修理が必要なことが起こった場合、借り主である私がすることは、不動産管理会社に電話するだけです。不動産会社が大家さんに連絡し、修理の手配が行われます。
自分の家だと、先ず複数の業者さんに見積もりをとり、そこから選んで依頼し、勿論修理代も払わなければなりませんが、賃貸だとそういう手間や費用は一切ありません。
マンションや大家さんによると思うのですが、エアコンが最初から設置されていることも多いです。場合によっては、一部の部屋のカーテンやブラインドも。
家賃と管理費を別に納める場合もあるでしょうが、我が家の場合は今のところ、家賃だけを払っています。
マンションの住民の自治が大事だということは事実ですが、例えば子育て中の若い共働きの夫婦の場合であっても、ただでさえ生活が忙しくキャパシティいっぱいの生活の中、「気楽さ」というものは、その時その時に事情を抱えた生活をこなしていく上でもとても大事な要素だと思いますし、ましてやシニアになって、一軒家にしろマンションにしろ、修理や手入れそのものだけでなくそれに関わる手続きさえも億劫になってきたり、容赦なく回ってくる自治会や管理組合の仕事をこなせなくなってきたりすると、そういう煩わしさとは無縁の「賃貸」というのは、魅力的な選択肢ではないか、この「気楽さ」はお金に換算出来ないプライスレスな価値があると考えると、「持ち家」と比べて金銭的にそんなに損ではないのでは?と、私は実感として思います。




-「マイホーム」の呪縛」
以前からサラリーマンのジンクスやら都市伝説みたいに言われていますが、「マイホームを建てたら/買ったら、転勤になる」というのがあります。
知人の中にも、
「ローン組んでマイホーム建てたら、半年後に九州の支店に転勤になり、子供にもう一度転校させるのが可哀想で、おとーさんは単身赴任」
という人がいたり、
「マンションの抽選に落ち続けてやっと買ったマンション。そこに惚れて買った角部屋のコーナーウィンドゥに合わせてオーダーしたソファーが家具屋さんから届いて設置しているまさにその時に、夫から『転勤の内示が出た』とメールがきた」
という人がいたり。
戦国時代の人質ではありませんが、マイホーム(を買うために会社で組んだローン)が人質になっているのです。
また、首都圏では、受験をして中学から電車通学で都心の学校に通う子供も大勢います、どころか、私立小学校に通う子供も珍しくありません。郊外の駅では、朝6時台の電車にランドセルを背負った小学生が、大人と同じく満員の通勤電車で通学する姿が見られます。
その学校を選んだのはそれぞれご家庭の事情があるのだと思いますが、数年後に起こると言われている地震や、犯罪に巻き込まれることを考えたら、せめて小学生や中学生の間だけでも、また、せめて一駅でも二駅でも学校に近いところに転居する選択肢というのはないのでしょうか?
きっともう郊外にローンを組んで買った「マイホーム」があるから、子供はずっと電車通学を強いられることになるのでしょう。
シニアになってもこの「呪縛」は続きます、ある70代後半の方から聞いた話。
「子育て時代(即ち高度成長期)に郊外に建てた『庭付き一戸建て』に住み続けているのだけれど、子供達も家を出て行って、年をとった今は広すぎて、住み辛い。掃除も大変、2階に上がるのも大変、庭の手入れも大変、駅までバスに乗っていかないと病院通いも買い物もできないのも大変。10年前に思い切って自宅を売って、マンションに移ろうと思ったら、独立して年に数回しか帰ってこない子供達が『自分たちが育った家を売るなんて!』と大反対したので、思いとどまった。今はそれを後悔している。夫が何度も入院するたびに、病院に通うことさえ大変で、家に帰っても、冬なんか特に寒々とした部屋で何をする気力も起きない。」
上記の様々な例をみるに、知らず知らずのうちに、「マイホーム」というものに呪縛され、「家族にとって自分にとって最適な場所に転居する」という選択肢があるということさえ、思いが至らなくなっているのではないでしょうか。
本来「家」というのは、生活を楽しみ、家族で暮らし、人生を豊かに彩るはずの場所です。
それが反対に、「マイホーム」に縛られて、家族が別々に暮らす破目になったり、人生の大事な毎日が苦痛になってしまうものになっているとしたら、本末転倒です。




-自己防衛
冒頭のリンク記事には、東日本大震災のことも、福島の原発事故のことも、全く書かれていないことに驚いてしまうのですが、私たちは、あの体験を、無かったことの如きに忘れていいのでしょうか。
勿論、被災地は、先祖代々でその土地に住んでいる住民が殆どだったり、持ち家率が都会よりも高い地域であったのですが、だからこそ、津波で家が流されて更地になった土地であってもそこを売って他の場所へ動くことが心情的に難しく、また新たに都市計画を立てようとしても、土地にはそれぞれ先祖代々からの持ち主がいてそれぞれの事情から立ち退きに反対だったり、という被災地の状況が、そのまま首都圏には当てはまらないことはわかっています。
しかし、首都圏の場合、地震が起こって自宅に長期間住むことができなくなった時、個人としてどうするのか?と考えておくことは、3.11を経験したのであるならば、避けては通れないでしょう。
「持ち家」の一軒家が地震で倒壊してしまったとしたら、建物の価値がゼロになるだけでなく、再建しなければ住めません。「維持費がほとんどかからない持ち家」じゃなくなります。倒壊しなくても大規模な修理が必要になるかもしれません。家が無事でも、ガスや電気、水道などのインフラが復旧するまでは自宅には住めませんが、その場合でも防犯や火災が心配で、遠くの地域に仮住まいもできないでしょう。
「持ち家」がマンションでも同様です。インフラが復旧するまでは高層階でなくても住めないですし、一軒家同様、地震を境に、資産価値は激減してしまうかもしれません。
19年前に起こった阪神大震災の時も、マンションの補修・建て替えは大変であったようです。
神戸の知人の住むマンションは、倒壊は免れたものの、大規模補修ではなく建て替えを住民が選んだそうなのですが、先ず、それを決めるまでが大変だったそうです。数週間の避難所暮らしの後、大阪北部にアパートを借りて仮住まい。各戸が負担する建て替えの費用の割当やら、建て替えたマンションでどれだけの専有面積を所有することになるのか、一般住民である知人でさえ、大阪から神戸まで毎回の話し合いに出向くだけでも一苦労、毎回夜遅くまでの話し合いに疲労困憊したそうです。震災当時にマンションの自治会長だった方は、市や区や建設会社との話し合いだけでなく、住民それぞれの要望を聞いて合意に持っていくという気が遠くなる過程の中で、倒れてしまわれたそうです。
これって、今首都圏で続々と売り出されているタワーマンションだとどうなるのでしょう?
人口が密集する首都圏のような地域では、個人が資産の殆どと注ぎ込んで購入する「持ち家」ではなく、個人としても身動きがとりやすく、また災害があった場合に事後の対応がとりやすく、よりよい都市計画の素早い実施が可能になるように、「賃貸」の方が適しているのではないでしょうか?
特にシニア世代であれば、もう一度ローンを組んで自宅を再建したり、何十回もの話し合いに出て莫大な建て替え費用を負担し長い仮住まい生活を経て自宅マンションの建て替えに臨んだり、ということが可能でしょうか。貴重な時間と体力を費やせるでしょうか。
また、原発事故の後、子供への放射能の影響を怖れて、福島から離れた母や親子が沢山いました。
首都圏でも、外資系に夫/父親が勤める家族は、関西に避難した人が多かったといいます。大阪や神戸、京都のホテルに滞在していたそうです。
ネット上で、「放射脳」とか揶揄されていますが、実際、東京でも乳児にミネラルウォーターのボトルを自治体が配っていた時期があったわけですし、あの年の3月20〜21日には首都圏でも放射性物質を多く含んだ雨が降ったりしたわけです。
あの時期には、「これから東京は、日本はどうなるんだろう?」と誰しもが感じたことを、「無かったこと」にしてもよいのか?
今回は今のところ原発事故が一応は収まった(ように見える)から、「放射脳」とか言えるんじゃないかと思いますが、奇跡的に爆発しなかった2号機の格納容器が爆発していたり、本震に匹敵する余震が起こって4号機のプールが倒壊したり、という事態になっていたら、民族大移動の如く、首都圏から人々は逃げ出していたでしょう、今「放射脳」とか言っている人たちも含めて。
そうなった時に、国や自治体が頼りにならないことは今の被災地の現状を見れば明らかですが、その時、自分は、家族はどうなるのか、どうするのか、をほんの少しでも頭の中でシミュレーションしておくべきです。
持ち家である自宅やマンションにとどまってそこで踏ん張る、という考え方も勿論あると思います。
一方、とにかく安全な場所へ家族と移動する、という考え方もあるでしょう。
じゃあ、その時に「持ち家」と「賃貸」とどちらがメリットがあるのか?
そういう「3.11以前なら考えなくてもよかったこと」も十分加味して、「持ち家か?賃貸か?」という永遠(?)の問いを考えなくてはいけないのではないか、と思いますし、FP(ファイナンシャル・プランナー)というプロならば尚更、専門家としての見識を情報として提示して頂きたいものです。




-保証人と更新の問題
一つだけ、筆者が記事の最後の最後に書いている問題で、「賃貸派」が考えておかなくてはならない重要な点があります。
それは、保証人、です。
借りる本人が若くて収入があっても、不動産を借りるには、保証人が必要です。
一昔前ならば、親、兄弟、または親戚のおじさん、知人に頼んだのだと思います、「保証人になって」と。
今は、例え兄弟、親戚、知人がちゃんと職業を持ち収入があったとしても、「頼む」ことが難しくなっています。
収入証明書(それで年収がわかってしまう)やら印鑑証明やらを必要とする保証人を、親には頼めても、もう兄弟や親戚やましてや知人には頼めない、人と人との距離感になっているんだと思います、世の中が。
実際、我が家もマンションを借りる時、私と夫の兄弟がそれぞれ首都圏に住み、関係も良好なのですが、だからこそ、兄弟といえども年収がわかってしまう保証人は頼めませんでした。
一番遠慮なく頼めるのは親なのかもしれませんが、その親だって、ある年齢を越えれば収入がなくなって、保証人にはなれなくなります。
そこで、今は保証会社という、言わば保証人の代行してくれる業者を利用する方法があります。
勿論その場合、保証料が、家賃、敷金、礼金に加えて必要になります。
年金生活のシニアの場合、子供に保証人になってもらうこともできますが、この時代、子供が正社員で定収があって保証人になれるかどうか、ということは見通せません。
その場合、どうするのか?という問題ですが、これはこの先、人口は減っていくのに、子供がいないシニアの夫婦、単身者の数が爆発的に増えていく現状の中で、保証会社が高齢者の保証を引き受けるサービスができるのではないか?とド素人の私は楽観的に考えています。
一方では保証人になってくれるような身内がいないシニアが増え、一方では空き家が増えていくのならば。
また、筆者が賃貸の場合のデメリットとして書いている、賃貸の場合の「更新」ですが、一つには定期借家で借りるという手もあるでしょうし、更新を前向きに捉えることもできるのではないでしょうか?
賃貸で住んでいる住居で、定期的にくる更新時期に、気持ちも新たに「今の場所、今の住み方で良いのか?他の選択肢はないのか?」と考えるきっかけにする、という捉え方もあるでしょう。
持ち家に住んでいると、そうやって立ち止まって考えるきっかけはありません。押し入れに「とりあえず」突っ込んだものが、引っ越しがないので未来永劫そのままになっているのと同様に。
シニアの場合ならば、次の更新まで今までと同様自立して暮らせるのかどうか、を数年毎に自らに問うことは、その後の日々を後悔せずに暮らすためには、寧ろ大事なことではないでしょうか。




先祖代々が住んで来た土地で生まれ、育ち、暮らす。
父方母方共に、祖父母の代からサラリーマンというか勤め人として、転勤&都会にマイホーム、という暮らしをしてきた私にとっては、そうやって「故郷」と言える土地がある生き方は羨ましいですし、憧れでもありました。
だからでしょうか、思えば私も、ささやかながらもマイホームを建てた頃は、当然のように、ずっとそこに住むのだと思っていました。
ところが、事情もあって、ここ数年間賃貸に住んでいる間に、東日本大震災が起こりましたし、家族の状況も変わりました。
「老後」という遠い?先のことは、まだ実感として考えられませんが、例えばもうすぐ就職を考えなくてはならないムスメに、「私が結婚して子供ができたら、近くに住んでね。イクジイとイクバアやってくれるんでしょ?」と言われたり、それどころか自分たちの「老後」より夫婦それぞれの親の「介護」が秒読みになっている今、どこに「定住の地」を求めたらよいのかなんて、実際のところ考えられません。
人生のそれぞれの時期に、どこにどのように住むのか?
それは、少子高齢化、女性の社会進出、などの影響もモロ蒙る問題です。
今こそが、従来の「賃貸と持ち家、どちらが経済的か?」という狭い発想ではなく、新しい考え方が求められているのだと思いました、冒頭のリンクの記事を反面教師にして。

*1:参考:http://suumo.jp/edit/mansion/m_sonsuru/090819/ ファミリータイプだと実際はこれよりも高くなるようです